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13、末っ子の暴走は恐ろしい(ラーバル視点/エーデル視点)


 私は一体、何の地獄を見ているのだろうか。

 そう思いながら目の前で行われている惨状というか、八つ当たりを目の当たりにし乾いた笑いしかでてこない。



「吸血鬼という種族に生まれた事を誇りに思って良いよ。だって簡単には死なないし、心臓やられようが腕や足が取られても再生するもの。……何度でも潰せるってもんだよ!!」



 レファール・アトワイル。君、可愛らしい笑顔でそんなセリフを言うんじゃない。そういうのは、アレスがにあ……じゃなくて私が言うべき事だよ? 良いのかな、全然仕事してないけども。


 相手の動きを鎖で封じ、壁にめり込むほどの力で叩きつけている。

 壁紙と化しているのは、今回の首謀者であり裏切者のアーカイル家が抱える暗部。まぁ、吸血鬼しかいないから彼等も密かに裏切者を狩っていたんだろう。

 そんでもって、アレスは証拠になりそうなものを漁ってる。暴走を促す薬と改造された魔物のサンプルを持ってるし、部下達に預けて城で調べるように指示を出していく。


 え、居る意味あるかな?



「で? レオグルを殺しかけただけでも、僕は怒るのに姉さんの事を攫うんだもの。じゃあ、死んだ方がマシだって思う程の絶望をあげればいいね♪ 別に良いよね、兄さん」

「おう、やれ。後悔させてズタボロにしろ」

「やっていいですよね。ラーバル様」



 変わらない笑顔で私に許可を聞いてくる。

 あ、あははは。その笑顔が怖い。なにその、今から半殺しにするから見なかった事にしろっていう脅し……。


 さっと目を逸らした事で、レファールは了承と受け取った。すぐに自分の血に魔力を通わせる。

 アレスから聞いていたけど、私達以外にもこのコントロールに優れた者がいるとは。まだ15歳だなんて嘘でしょ?


 そう思っていると彼の体は成長していた。母親の遺伝で受け取った変化の力。設定した年齢に自分の体を成長させる特殊な力だそうだ。

 その分、実際の成長スピードがかなり遅い。魔力も多少使うし、多用は控えているのだという。確か17歳の設定でいるからアレスよりも少し低い位かな。



「後悔しろ!!!」



 その後、何が起きたはいうまい。

 怖くて隅でガタガタと震えていたとか、壁を普通に破壊すると絶叫が聞こえているとか……。

 そんな中で普通に仕事しているアレスが恐ろしいし、色々と手続きをしている。君、これに慣れてるね?



「どうもすみませんでした。兄さん、さっさと城に向かったんですけど……これ、どうします?」

「へ……」



 気分が晴れた様子のレファールは、元の姿になっていて顔や服にちょっとだけ返り血を浴びていた。


 思わず持っていたハンカチでそれらを拭うと、不思議そうに首を傾げていた。うぅ、こんなに素直なのに家族の事になると手が付けられないんだね。流石、アレスと同じ血が流れているだけあって恐ろしい逸材と言うべきか。


 そして、チラッと現状を見て相手にご愁傷様と心の中で言った。色々と血生臭いが、既に屋敷を半壊したし……。控えていた部下達には、城の地下牢に閉じ込めるよう指示をだして辺りを警戒するようにとも伝えた。



「お姉さんの無事を確認できたよ。上の階だってさ」

「本当ですか!? 良かったぁ」



 ほっとした様子で胸を撫で下ろし、迎えに行くと走っていく。……うん、あの子の逆鱗に触れでもしたらマズいな。レナリはよくあの子を使うだなんて言えるよね。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ご無事で何よりです、エーデル」

「レナリ、様……」



 レオグルに抱きしめられたまま、レナリ様を見る。

 彼女は一瞬で魔物を蹴散らしただけでなく、攫ったディラスの事を吹き飛ばしたのだ。レオグルも動こうとしたけど、ギュッと彼の服を掴む私を見てすぐに止まる。安心させるように、優しい手つきで撫でられるとほっとする。


 思わず顔が緩んでいると、レナリ様が戻って来て既に城へと連行した後だと告げて来た。



「渡したあの腕輪が役に立って良かった。何かあったら私の気が狂うもの」



 念の為、私に渡した腕輪には仕掛けがしてあったとか。

 常に私の魔力が探知できるようしただけでなく、付けた腕輪の所有者の所へと飛んでいく。レナリ様の力が付与されたこの腕輪は、レオグルと共にここに飛んだ時に既に力を終えていた。

 そう説明をされ、もしかして既に分かっていたのかと聞いてみた所……半々だったそうだ。



「言ったでしょ? 子犬君はある程度掴んでいたって。執事である貴方が死にかけて、エーデルだけ攫ったのを聞いて確証したの。多分、お兄様が既に動いているからアーカイル家は終わりね」

「そう、でしたか……」



 あの枷から少なからず魔力を取られていたのだろう。レオグルの無事を確認してほっとしたのもあって、私はすぐに気を失った。



「っ、お嬢様!!!」



 焦る彼の声を聞きながら、大丈夫だとも言えない自分が情けなくない。だから、繋いだ手を離さないでいて……。



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