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何故これが!?

ツバキ達はその日の内に帰ろうかと思ったが、意外と戦闘が長引きツバキの負担が重かったので、一度この辺りの宿に泊まることにした。

フードは被ったまま、ランジュベルドの街を観光する。


「ここら辺の宿って何があるかなぁ……。こんな時スバーホがあったらなぁ…。」


ツバキは里奈達と遊んだときの格好で放り出された為、何も持っていなかった。友達と遊ぶのに何か持って行く人ははないだろう。いや、遊ぶものだけか。


「スバーホとは?」


「あれ、レン知らない?」


ツバキはレンが知らないことに驚いた。てっきり知っているかと思っていたのだ。


「スバーホって言うのはね、簡単にいえば鑑定をアイテム化したものだよ。」


「へぇ面白いものもあるモンだな。………あ、此処なんか良いんじゃないか?」


レンが良いなと言ったものは、この街で一番大きいらしい宿だった。見た目も良く、壁からしてこまめに手入れをしていることが分かる。

賛成して入ってみると、内装も私好みで、床はピカピカ壁は汚れひとつない宿だった。

だが、部屋が空いていないと意味がない。空いていることを願おう。


「部屋って余っていますか?」


受付嬢は空いている部屋を確認すると、顔を赤らめた。


「2人部屋なら空いていますが……。」


わぁお。2人部屋か…。受付嬢はそれで変な妄想をしたのですね。分かりました。だが私は構わないが、レンはどうだろう。チラッとレンを見ると、レンもこちらを見ていた。


「私は構わないよ。」


「じゃあ2人部屋を頼む。」


「ふ、2人部屋ですね。………ふわぁ大人だぁ。」


(変な勘違いしないでね?最後小声で言っていたけど、聞こえているからね?)


ツバキはまだ赤面している受付嬢を横目で見ながら、鍵を預かったレンを先頭に部屋へ向かう。

部屋に入ると、ダブルベットが一つと風呂トイレが備えられていた。

流石に風呂とトイレは見えないよう壁で区切られていたが、少し恥ずかしいと思う。

一通り見て、ベットへ向かいダイブする。とってもふかふかだった。


「ふわぁぁ。ふかふかだぁ。」


ベットを堪能していると、レンも横に寝転ぶ。ダブルベットなので余裕だった。ここで2人寝るのだが、横にレンがいると思うとツバキは緊張した。


(愛する人と添い寝するって……寝れないかもしれない)


「ツバキー?」


「ひゃい!?」


動揺したツバキは噛んでしまう。

恥ずかしくて枕に顔を埋めていると、この反応が予想外だったレンが状況をようやく理解した。

2人黙りこくってしまい、なんとも言えない空気が流れる。


「あ、あの私お風呂入ってくるね!」


「おう。いってら〜」


着替えを持っていないので、レンのマジックボックスから、服だけ出してもらう。服を持ち、私は風呂の部屋へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はあぁぁぁぁぁ。」


レンはツバキが風呂へ向かったのを見送り、深い溜息をついた。

ぶっちゃけ風呂とか変な想像しそうだからあまり良い機転とは言えないけれど、あの空気は不味いと感じていた。不味かったというのは、レンの理性だ。状況が理解できた途端、ツバキをマジマジと見てしまい、改めて可愛いなと思ったら理性が崩壊しかけた。ギリギリのところでツバキが動いたが………。次は分からない。

もしもツバキが同じ気持ちならば、レンは間違いなく襲ってしまう自信があった。


「ああああ………どうしよ」


今ツバキはいない。この時間でどうにか理性を立て直さないと……。

俺は取り敢えず瞑想をした。心を鎮めて、追い払おうと思ったのだ。

と此処でツバキが戻ってきた。

ドアが開く音でツバキが出たと悟り、そちらへ向いた。が、見たことを後悔した。

俺が貸した服はぶかぶかで、だけどそれが可愛く、更に風呂上がりということで頰が赤くなっている。立て直したはずの理性が本当にヤバイと感じ、取り敢えず風呂に入ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ツバキは次にレンが入るのを確認し、自分の格好を見る。


「やっぱぶかぶかだなぁ。ズボンも長すぎて足が完全に隠れちゃったし。」


レンから借りた服は、かなり大きかった。袖から手は出ず、まくらなければいけないレベルだ。裾も普通の長袖の服なのに太腿まであり、ツバキは着ぐるみを思い出した。ズボンに至っては論外だったので、着替えなかった。レンの足が長いのが悪い。


「レンが戻ってくるまで何しよう?」


暇だったので、魔法の練習をする事にした。杖を使わずに効率よく魔法を打つのが中々難しく、普通のMPより多い魔力を使用してしまうのだ。

室内で攻撃系の魔法を使うのは危険なので、バフにした。当分はレンが前線で戦うと思うので、丁度いい。


「『パワーソウル』」


ツバキは手を突き出し唱えた。だが、魔力を多く使ってしまう。杖を使っていない時と何が違うのか。違いが分からないので、改善する余地がない。

考えが足りないのか、根本から違うのか。

ツバキは初心に戻ることにした。


「杖を使わなければ魔法を出せないのは…杖に魔力を流し、杖の先から撃つイメージをしているから?」


王国にいる時、イメージが大事と習った。だが、そこからの繋げ方が分からない。


「うぅーん」


首を捻っているとレンが出てきた。

唸っているツバキをみて、不思議そうな顔をする。


「何やってるんだ?」


「魔法の練習。MPの消費を軽減したいんだけど……あ」


話しているところでツバキは気がついた。ここに長生きして、魔法の使い手がいるではないか。

レンは長い間魔法を使ってきたからきっと知っていると踏み、ツバキは相談してみた。


「レン、効率の良い魔法の展開のしかた知ってる?」


「突然だな。俺はいつのまにか出来たという感じだが……コツぐらいなら知ってるぞ。」


「ほんと!?」


いきなりだったが、レンは真剣に考えてくれ、コツを教えてくれることとなった。完全には教えられないのは実践を沢山積み、経験がほとんどらしい。

レンはツバキの後ろに立ち、手を支える。

ツバキは少し頬が赤くなったのが自分で分かったが、レンが居たのが後ろで良かった。


「魔法はイメージが大切というのは知っているか?」


「それは知っているんだけど…。そこから先に動けないんだよね。」


「そうか。ならきっとできるな。」


(………え?)


ツバキ、まさかの出来る宣言頂く。


「多分出来ていないのは魔力感知じゃないか?なら自分の中に巡っている魔力が分かれば出来ると思う。」


「は、はぁ」


ツバキは魔力が流れているのかは突っ込まない。日本人だからどうなのとは考えない。だって異世界だから。

レンは魔力を流すから感覚を掴んでと言い、流し始めた。

その瞬間、何か身体の中で動くものが感じた。


「ナニコレ!?なんか気持ち悪い!」


「お!直ぐに感知できたか。自分で動かせるか?」


ツバキが思わず声を上げるとレンは魔力を流すのを止め、難題を提示した。

いきなりなので、ツバキは出来るかどうか不安を持つ。

ツバキあの気持ち悪い感覚を思い出しながら、血液みたいに巡る魔力を動かそうとしてみる。


(こう、心臓から出てきてなんかウニャウニャするような…………あ。 何か感じた。これをこう!動かすような感じで!)


「ほっ!そいっ!やーっ!」


「なんだその掛け声。」


「ごめん、今集中してるから!」


「そんな奇声発している奴が集中していると言うのか!?いや、異世界ではそれが普通なのか!?」


いつの間にか声に出してしまい、レンがツッコミを入れてくる。残念ながら、日本でも奇声を言う人はそうそういない。


(まぁ…誤解はそのままでもいいか!もしも私たちの世界に帰った時に苦労するだろうけど。

…………………もしもだしね。)


意識が逸れてしまったが、再び魔力を感知する特訓に戻った。


「そぉい!ほいやーー!」


「その掛け声がどうにかなんねぇのかなぁ……。」


レンがぼやいていたが、ツバキは華麗にスルーした。


***


10分後、ツバキはスキル『魔力感知』を取得することに成功した。


「ふぅー長かったー…。」


「俺は奇声をずっと言い続けていた事に驚いたけどな。」


睨むとレンは視線を逸らした。

ツバキは余計な一言だよとせめてでも言う。


「…意外と時間が経っちゃったね。」


「そういえば。もう宿の夕飯の時間だな。行くか。」


ツバキ達は階段を降り、一階の端にあるという食堂へ向かった。

食堂にはこの宿に泊まっているであろう冒険者の格好をした者が多く集まっており、席はあまり空いていなかった。

残りの席に座ると、テレビに出てきそうな程の営業スマイルを浮かべたウェイターさんが料理を持ってやって来る。


(はっや!)


「こちらが今日の料理でございます。メニューの内容はこちらとなりますので、ご確認を。では。」


(退場もお早かったです。)


状況が流れるのが早すぎてついていけなかったなかったが、食べる事に集中ことにした。思考放棄とも言う。

ツバキは料理を見て驚いた。運ばれてきた料理は宿で出るものとは思わなかったのだ。

メインのお皿には10センチほどの七面鳥らしきものとサラダが盛り付けられ、異世界の料理だろうか?サイコロステーキの様なものにアスパラガスみたいな物が混ざってある。そして、見覚えのある白米と味噌汁が…………


(は?)


「ゲホっ!!ヴエッ!」


「大丈夫か!?」


思わず飲んでいた水を吹きそうになったが、ツバキは気合いで押しとどめた。

だが、それ程日本人にとって衝撃的だった。


「何で白米と味噌汁があるの!?」


「何で無い前提なんだ。あと注目されてるぞ。」


慌てて周りを見ると、確かに視線がこちらに向いていた。ペコペコ謝ると、再び日本の料理達をガン見する。


「レン、これって本当に白米と味噌汁?」


「だからそうだって。疑うんだったらメニューでも見ろ。」


疑いすぎたのか、レンが苛ついた様子だ。言われた通りメニューを見たら確かに白米と味噌汁が書いてある。そして、七面鳥らしき物は七面鳥で、サイコロステーキもサイコロステーキだった。アスパラガスはマンドラゴラと書いてある。つまりこの食材を調達するのに犠牲が出た可能性が…いや、考えないようにしよう。ツバキのスルースキルは確実に上がっている!

そして何であるのかとツバキは再び聞くが、知らんと返された。

そうだよな。日本に居てなんでこの料理があるのと聞かれても知らんというだろうし。


(……もうなんでもいいや)


「わーい!白米食べれて嬉しいな!もう自分に都合よければ何でもいいや!」


「わぁー。考えること諦めたな。」


「はいはーい。なーんにも聞こえませーん!」


ツバキは余計なことは考えず、この食事を楽しむとした。

料理は意外と美味しく、日本にも劣らないレベルだった。すごーいと半ば諦め気味にツバキは感激した。

しかし、全ては食べきることができなかった。七面鳥ボリュームが凄かったのだ。


「レン、何で完食できるの……」


「んー?普段が普段だからなぁ。こんなまともな食事久しぶりだから浮かれて沢山食べれたって感じか?」


なんとレンは全て食べ、更には普段の食事情が悲しくなるようなことを言った。


「レン…。レンの料理は私がしっかり作ります。だから聞いてるこっちが悲しくなるようなこと言わないでぇ。」


「おう。いつかツバキの手作り料理が食べれるの、楽しみにしてるぞ。」


一瞬でピンクの空間の出来上がり!3分もかからない、なんてお得な料理でしょう!


(ではなく)


「……ばか!……御馳走様!」


照れ臭くて恥ずかしさを誤魔化すように強い言葉で返してしまうが、それすらも見透かしたようなレンがニヤニヤする。そんな顔も良いと思ってしまう自分を心の中で殴り、恥ずかしいので先に部屋に戻る。


「待ってくれよ!揶揄って悪かったって!」


待ってをかけるレンを置いてき、階段を登る。後ろからレンが追いかけてきている音が聞こえるので、何の心配もないだろう。


「なーツバキ〜。」


ツバキは笑いたくなった。

正直なところあまり怒っていないが、レンの反応が面白いので揶揄っているだけだ。

少し意地の悪い笑みを浮かべて、部屋に入る。レンが入ったのを感じたら、振り返る。

予想通りレンが情けない顔をしながら立っている。

思わず噴き出してしまう。あまりにもその表情が面白かったのだ。多分これからレンのこの表情が出ることはないだろう。好きな人に笑われた顔をもう一度出すことなんて、彼のプライドを傷つけているのだから。


「…ふっ…ふふっ!」


「………おい。俺のこと舐めてるのか?」


レンが青筋を浮かべる。

だがそれすらも面白くてさらに笑ってしまう。


「ふふ!ふふふっ!」


「分かった。俺の事をナメているのは分かった。なら俺が年上という事を教えてやる。」


「ふふっ!………え?」


ツバキは笑いのツボを押してしまったらしく、なかなか笑いが止まらない。なのでレンの言葉を聞き逃す。それがツバキの運命を分けた。

ツバキはレンを見て、一瞬で笑いが止まる。何故か。それはレンの目が獲物を狙う野獣の目だったかだ。何故か逃げたいという気持ちにツバキがなっていると、いつのまにか目の前にいたレンが熱烈なキスをする。初めてだとか、ツバキはレンの色気にやられ、そんなことも考えられないぐらい頭がクラクラする。


「え、ええ?どうしたのレン?」


「…ちょっとこっちにおいで。」


レンはベットに座ると手招きをする。頭がやられているツバキは、何の疑問も持たず、そちらに向かう。レンの隣に座ると、ツバキは押し倒された。


「あのー?レンさん?」


「ん?何かな?」


レンはそう笑うとツバキに手を伸ばした。


その後は誰もが予想できる展開になったとさ。

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