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ねぇ、世界だよ!?

「私はその子の言う通り、ロボ…AIよ。名前は(コア)。創造主は分からないけど、人間の形をした何かだったわ。追われてる理由は、私が機械の心臓部位だから。」


「…機械というのは?」


「あれ?分かるわよね?操作をして動かす…」


「そういうことを聞いてるんじゃない。何のって聞いているの。」


「…仕方ないわね。全て話してあげる。」


***


そうね…話は結構昔のこと。え?どれぐらい前かって?さあね。生まれたばかりの頃だから覚えてないわよ。

とりあえず、進めるわよ。

私はある方に作られた。誰かはわからない。何十、何百も前のことだから。…AIだからってなんでも覚えているわけじゃないのよ。


そ、それで!最初はただの球体だったのよ。信じられないだろうけど。不自然じゃないわよ?だって、私はある機械の…ロボットの脳、または心臓とも言える部位。機械に埋め込まれて、操縦者のサポートをするの。

その機械は『ユートピア』と言ってね、私を作った人が理想の世界のために生み出した兵器。世界最強の兵器よ。自慢じゃないけど、百戦錬磨だったわ。こう…バッタンバッタン敵を倒してね!


…そんな事はどうでもいい?いいじゃん、武勇伝は聞いてもらいたいものでしょ?…え?私が自慢じゃないけどって言ったよね?…ごめんなさい。

まあ、操縦者がいなくても動かせるんだけどね。だけど、かなり大変だから、操縦者はいた方がいいわ。


そしてその年、世界最強の騎士が暴れまわった。私は止めるために、ロボットに埋め込まれたの。操縦者は…レイドといったかしら?かなり強かったわ。


その騎士は無事に討伐されて、世界は守られたわ。

だけど、野心の芽生えた創造者は、私を使って世界を支配しようとした。まあでも、一週間後に私の創造者も暗殺されたんだけどね。

そんな強力な兵器の鍵の役割をしている私は、主人を失ってしばらくは眠っていたわ。だけど、呼び起こした人がいた。さっきの人たちの組織よ。どこから入手したのかは知らないけど、私は追われる身となり、使ってしまうと世界の崩壊が訪れてしまう。だから今もこうして必死に逃げているの。


***


ツバキたちは話を聞き終わると、顔を見合わせた。

げんなりした表情で、コアに向かい合う。


「そんな状態で、私たちに匿ってもらおうとしているの?そんな面倒なの一緒にいたら、私たちまで終われるじゃん。嫌だよ。てことでさいなら。」


「そういう事だ。じゃな。」


一瞬呆気にとられたように動きが止まるコア。

理解すると、あわあわとしだす。


「え、ちょ、待ってちょうだい!私このままじゃ本当に捕まっちゃうんだけど!」


「つ、ツバキさん、せめて助けてあげるのは…?」


あまりにも哀れに思ったギアが提案を持ち掛けるが、振り向いたレンに呆れた目で見返される。既にツバキは飛び立っていた。


「あのなぁ、俺たちは早く地球に行きたいんだ。そんな奴に構ってる時間なんかない。」


「で、でも…。」


食い下がるギアに、コアが便乗する。

チカチカと黄色の目の奥が点滅しているように見えるのは、ツバキの気のせいではないだろう。


「そうよ!世界がどうなってもいいの!?」


「いいが。」


「…え、嘘だよね?世界の危機よ?貴方達も死んじゃうわよ?」


「いや、俺たちこの世界出て行くつもりだし。」


「はあぁぁぁぁぁ!?」


絶叫するコア。本当に感情豊かなAIである。

声にツバキはウザそうな視線を向けた。


「……ねぇ、世界の危機だから何なの?私たちはとっくにこの世界なんてどうでもいいんだけど。」


「世界だよ!?ねぇ、世界だよ!?頼むから助けて!」


必死な姿に、ツバキは困ったような顔をする。

レンに助けを求める視線を向けると、同じような微妙な表情を返される。軽く絶望した。


「……捕まったとして、どれぐらいで世界は終わりそう?」


「そうね…大体二ヶ月ってところかしら?」


「…結構早い。僕たちの旅に支障が出そうだね。」


サリエルドが意味ありげな視線をツバキたちへ向けた。それでも断るか、と言うことだ。

レンが溜息をつくと、しゃーないと呟く。ツバキも天を仰いだ。


「……分かった。守ってあげるから、絶対バレないようにして。」


「本当!?ありがとう!さっすが、私の見込んだ魔人!」


わーいと喜ぶコア。姿は蛇なので、とってもシュールである。

何故分かったのかとツバキは疑問にも思ったが、どうせさっき見えたのだろうと予想した。


「…その姿どうにかならない?見ていて変。せめて人型になってくれない?」


「うーん、そうするなら誰かの身体が必要よ。死んでいても構わないわ。」


さらっと生贄を差し出せと言うが、ツバキはうなずいた。


「いいよ。だけど、準備が出来次第。流石に持っていないからね。」


「別にこの姿でも良いんだけどね。形を変えるのも楽だし。」


「…そうだ、他のが衝撃的すぎて聞き損ねたけど、なんで大きさが変わるの?」


「さあ?魔法じゃないかしら?」


本人も知らないらしい。ツバキはジト目を向けた。すぐに逸らされたが。

ギアがほっと息を吐く。一番不安だったのは彼だろう。危うく見捨てられるところだったのだから。


「…ほんと、良かったです。家族が死ぬなんて嫌ですから。」


「…あ、そういえばネコの家族たちがいたね。」


「え、忘れられてた!?」


愕然としたギア。ツバキは、明後日の方向を見た。

レンがコアに口を寄せる。


「……なあ、あの話には一つだけ嘘があるな?」


「え?な、何の事?」


「操縦者がいなくなったから眠った。あれ、本当は違うだろ?それに、話の殆どが嘘だ。」


蛇の目がチカチカする。紅眼が、全てを知っているかのように見返した。


「……主人が居なくなったから。違うだろ?それに、百戦錬磨でもない。」


「……何故そう思ったのかしら?」


「だってーー」


次、真っ赤な口から言われた言葉に、コアは頭が真っ白になった。


「ーー俺がその操縦者だったからな。」

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