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天空都市

私達は今、天空都市を目指して空を昇っている。

私はいつも通りレンに抱えられ、エリック達は隣で飛んでいる。

エリック達はレンの速さに驚いている。


「俺達と同等のスピードを出せる魔人がいるとはな.……。」


因みにレンが元総隊長というのはバレていました。デスヨネ。冒険者が知っているのだから竜人が知らないはずないですよね。しかしエリックに何か理由があるからここにいるんだろと言われた時に、王の器はしっかり備わっているのだと感じた。眼が王の眼をしていたのだ。

最初にレンを攻撃したのは、こちらを攻撃する意思があるかという打算込みで攻撃したらしい。ムカついたのは本気だけどと睨んでいたが。

そしてエリック達が翼を使わず地面に激突したのは、使わなかったのではなく、使えなかったのだと。

何故かと聞くと、貴族に麻痺系統の毒を盛られ痺れて動けなくなってしまったかららしい。えっ怖っ!

私は話を逸らすために、気になっていたことを聞く。


「天空都市ってどのようなところですか?」


実を言うと、天空都市に行ってみたいのも本音なのだ。天空都市と言われるとワクワクする気持ちが止められない。きっと素敵なところなのだろう。商も栄えて活気溢れて天空ならではの食べ物娯楽とか……!

しかし私の期待は裏切られる事となった。



「……ドロドロした所ですよ。誰もが他人を疑い警戒し、私達のように誰かと居る方が珍しいのです。」


レイナさんは吐き捨てる様にそう言った。エリックも苦々しい顔をしていた。

私は驚いて声が出なかった。それ程衝撃的だったのだ。私を抱えているレンも驚いた顔をしている。


「どうして警戒しているのですか?」


「裏切られるという事が常日頃あるのです。取引先の相手、恋人、親友。あまりにも続き過ぎたので、誰も他人を信用しなくなったのです。私達は異端の血筋なので信用するということが出来るのですが……」


異端の血筋…。果たしてそれは異端と言うのだろうか。

私はそうとは思えない。

人を疑うことしかできないのが正常?違う。本当の異端はそういう悲しい人達だ。

私はそう言おうと思い口を開いたが、言う前に天空都市についてしまった。


「着きました。ここが…天空都市です。」


私は期待をしていた。だからショックは大きかった。私はこんな都市とは知りたくなかった。

天空都市は……薄汚れ真っ黒だった。

建物は半壊しているものもあれば、完全に崩壊しているものもある。だがそれ以外何もないのだ。商店らしきものが数軒見えるが、客は誰もいない。更に不気味なのが全てが吸い込まれるような黒で塗りつぶされているのだ。人の気配がないのも、より不気味さが増しているのだろう。


「ここが天空都市……!?」


「おいおい。いつからこんな風になっちまったんだよ……。」


私はこの惨状に驚いたが、レンの感想は私と似ているが少し違う様だ。


「レンさんのその反応は前に一度来たことがあるのですか?」


「ああ。昔はもっと活気溢れ、雲と同化するぐらいの白い壁の建物が並んでいた。商店も沢山揃っていて、其処彼処にはアトラクションみたいなのが置かれてて……一体何があったんだ?」


私は絶句した。嘘みたいだ。レンが語った天空都市は、此処と違う場所を言っているのではないだろうか?しかしレンが言うからには本当なのだろうが……信じられないぐらい私が見ている景色と違う。


「私達は若いので良く分かりませんが……そうだったのですね。昔はそんな夢のような国だったのですか。なのにこんな……。」


言いたいことはとてもわかる。こんな地獄みたいな国にと言いたいのだろう。

自分の国の景色を見ていられなくなったのか、エリックは目を伏せている。


「……早く行こうぜ。」


そう言い歩き出したエリックの背中は、とても頼りなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


コツコツ

城の廊下に靴の音が鳴り響く。

書類の山を持っている男は暫く歩いていたが、一際豪華な扉の前で立ち止まる。

ドアをノックし、入室の許可を申し出たが返事が無い。しかしいつもの事なのか気にすることなく部屋に入る。

部屋の主は、書類の山を見るなり、顔を顰める。何を言うのか予想できたのだ。


「失礼致します。陛下よ、この件は如何「黙れ。自分で処理することもできないのか?」


陛下と呼ばれた男は男の言葉を一刀両断する。

それに対し男は口ごもる。書類の確認をして貰おうと思っただけなので、処理はできる。だが後々何か言われるのだ。先程の傲慢な言い草から分かるだろうが、何故確認しなかったとか、理不尽を受けるのだ。それが嫌だから確認しに来たのだが、相手にしてくれないのだ。


「いえ。その様な訳では……」


「なら自力でやれ。余は忙しいのだ。」


男は心の中で舌打ちをする。

忙しいと言っているが女と遊んでいるだけなのだ。

普通ならすぐに失脚しそうなのだが、なまじ顔が良いのが悪い。金と顔目当ての女が後を絶たないのだ。

今も隣に新しい女を侍らせている。三人も。

女達はイチャついているところを邪魔されて機嫌が悪いのか、こちらを睨んでいる。

このような事をしていないで自分に回ってきた仕事をやって欲しいのだが、自分と相手の地位の差が文句を言わせない。少しでも抵抗しようと、会話を続ける。


「ですが…」


「何だ。死にたいのか。」


ギロリをこちらを睨む。一瞬だった。

この発言が本気というのはつい先日同僚の命と引き換えに分かった。自分も死にたくないので、引き下がる。


「いえ、滅相もございません。では失礼致します。」


深く礼をし、部屋から出る。

男は悔しくて手を握る。強く握りすぎて皮が破れ血が出た。

だが、そんなことも気にならないぐらいの怒りが心を埋め尽くしていた。

怒りを発散するように、だから権力ある者は嫌いなんだ、と誰にも聞こえないぐらいの小さな声で呟く。

そして先日追放された前代の王を思い出す。

あの御方は気さくで心の闇なんか無いような方だった。あの御方に仕えようと城に入ったが……主人が変わってしまいやり甲斐のあった仕事が途端に意味をなくした。面倒な書類をさけば褒められ、提案はしっかり検討する。忠告はしっかり聞き、どんな者にも平等に。本人は異端と言って自分を卑屈しているが、自分にとっては理想の人だった。

しかし今はもう亡き者だろう。この高さから落ちて、飲まず食わずで生きているわけがないのだ。

無い物ねだりをしても仕方がない。余計辛くなるだけだ。そう割り切り、少しでも溜まっている書類を処理しようと自室に急いで戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…ってな。すげー優秀な宰相が居たんだ。……お前ら頭を抱えてどうしたんだ?」


「どうしたものないだろ!お前仕事を押し付けていたんじゃねーか!」


もっともである。

私は溜息をつき、真っ暗な道を見た。

私達は城内に忍び込み、家族が捕らえられているであろう、地下牢へ向かっていた。

どういう訳か城の衛兵がおらずあっさり入れ、しかも城内にも人が居なく正面から向かうことになったのだ。

そしてその際エリックが宰相自慢を始め、その内容がやれ面倒な仕事を率先してやってくれたとか、やれ書類に穴があればどんなものでも申し出てより良いものにしてくれただとか。一番衝撃的だったのが、王の仕事の難しいのであろうと、難無くとできてしまうというのだ。

私達は凄いと思うの同時に、その優しさにつけ込んで自分の仕事もやらせたのに呆れたのだ。レイナさんも知らなかったらしく、頭を抱えていた。

レンも私も無意識に頭を抱えてしまった。宰相が少し哀れに思えた。


「で、その宰相は貴族なのか?もし貴族だったらそいつも裏切りに関与した可能性が…」


「いや、平民だ。」


え?

あっけらかんと言ったが、それとても凄いことなんだよ。

まず平民が勉学ができるのが珍しい。幼い頃から学べず、学校に通う事も出来ないからだ。

貴族は恥ずかしくないよう、幼き頃から家庭教師を付けているらしいが、平民は機会さえもらえない。

その上で宰相に上り詰めたのだから……天才としか言いようがない。


「エリック……そういうのは相談してほしかったわ…。」


やはり聞いていなかったレイナさんが溜息をつく。普段こんな感じなのだろうか。


「その宰相さんも捕らえられたりしてませんよね?」


恐る恐る聞いてみる。もしも処刑されるのであれば、助けたい。その宰相さんは本物だ。失うのはとても痛い。

だが、その心配は要らなかったようだ。内乱の首謀者、もとい現王はしっかり宰相さんの才能を見出したらしく、毒を盛られる際、宰相に指名されたのだそうだ。まぁ……現王が塵みたいな奴だったら同時にたすけちゃえ☆


「………で牢屋はどこなんですか?」


流石に長すぎると思う。かれこれ歩いて五分は経つよ。


「後……五分?」


「え、疑問形!?」


不安だなぁ……。城が広いのだろうか?


「あ、あった。」


「何が?」


「牢屋がある部屋への扉が。」


「「「は?」」」


エリック以外の三人の声が見事に重なった。これ以上ないってぐらい綺麗にハモった。

私達の疑問に、エリックは冷や汗を流す。何か言わないと、と殆ど本能的に感じたのだ。


「いやぁ以外と近かったなぁ……。」


「自分の城なんだから覚えなよ。」


「自分の城ぐらい把握しろよ。」


私とレンは、言葉は違えど同じ事をツッコんだ。

正論なのだが、二人に絶対零度の冷たい眼を向けられて、エリックは若干涙目だ。

やはり苦労人のレイナさんが額に手を当ててやれやれと言うふうに首を振る。

エリックはすこしでも罪を軽くしようと言うわけをする。


「いや、だって牢屋なんてあまり使わないしね?」


「「宰相さんは使ったでしょう?(だろ?)」」


「何このバカップル!?」


いやぁバカップルなんて照れ……ないわ!


「「バカップル言うな!」」


「息ぴったり!?」


「「恋人ですから」」


「それをバカップルと…いや、いいや。」


まだ何もしていないのに、なにやら疲れたオーラを出すエリック。

ここでレイナさんがストップをかけた。


「あの早く行きませんか?」


!そうだ。危うく何のために忍び込んだか忘れるところだった。


「これは誰が悪いかわかっているかしら?」


「エリックが悪いな。」


その通りだ。私達は悪くない。

うんうんと頷き、同意する。

レイナさんはジト目で見てきた。段々遠慮がなくなってきたな。

罪をなすりつけられたエリックは青筋を浮かべている。


「お前らが悪いだろ!」


「悪くないよ?」


「お前の頭がバカだから理解出来ていないだけだ。」


レンさーん?いつになく毒舌ですがどうしたのですか?

案の定エリックがキレはじめた。


「お前ら少しは敬えよ!?」


「する必要は?」


「ないよな。」


私達の返答に、また青筋が増える。いつかメロンになるんじゃないか?


「こんの似た者カップルが!」


「「どうも」」


「もうやだ〜」


ついに泣き真似を始めたが、スルーしてレイナさんについていく。

少し進むと私達が止まる気がないと悟ったのか、慌てて追いかけてきた。面白い。

終始見ていたレイナさんが本日何回目か分からない溜息をつく。


「エリックで遊ぶのやめてもらえませんか?」


バレたか。ここは上手くしらばっくれて……


「ソンナコトナイデスヨ?」


「片言ですよ。遊んでいたのですね…。」


「ツバキはわかりやすい。だから可愛い。」


うぅ…。エリックの気持ちが少し分かったかも。凄い恥ずかしいし、なんか悔しい。

そして恋人なのにさり気なくディスってきたレンを睨むと、どうやらツボだったらしく蕩けるような笑みを向けてきた。

うわぁぁぁぁあ!?死にそぅぅう!?

地球で恋愛経験ゼロの私には刺激が強すぎるって!


「れ、れん?あの、救出作戦……。」


本来の目的を提示することで、空気が元に戻った。


「うえっ砂糖吐きそうだった。」


「私もだ。なんだったんだあの甘い空気。」


あはは……。レン、たまに吃驚する程の空気出すからね…。


「ほら!早く探そう!」


「で、どこにいるんだ?さっきから空の牢屋はあれど人は居ないぞ?」


「この一番奥に大罪人専用の牢屋があるからおそらくそこだろう。」


大罪人……。反政府側からしたら確かに大罪人だな。

しかし専用の牢屋を造るなんて考えたものだな。

普通の牢屋と何が違うのだろうか。

そうして直線の道を進んで行き、一番奥に辿り着いた。

そして肝心な牢屋の中にはーーーー


誰もいなかった。

書いていませんがローブは着ています。

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