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まどろみの中ゆっくりと眠りが浅くなり、夢の終わりが見えてくる。自覚できるほど明らかな目覚め。せめて夢の人物に別れを告げたいのだがそうもいかない。ぐるぐると体が回るような感覚に引っ張られて現実へと戻されていった。
目を開けると、血しぶきで汚れた死者の顔があった。
「アギャア!!」
化物のような声を上げてロンが起き上がる。
「ロン、ロン。いつまで眠ってるの、さっさと起きなさい。」
激しく打つ心臓を抑えて、唾ごと息を飲み込む。
「ミ、ミーティア様。それやめてくれっていつも…言ってるじゃないですか。」
「いつもやってるんだから、そろそろ慣れればいいんじゃない?」
とんでもないことを言う。むしろ得意顔ですらあった。
「ま、おかげでバッチリ起きられるでしょ。」
「ええ、本当、ありがとうございますね…。」
皮肉を交えながら、ロンは部屋を見渡した。
「ところでここは?」
「あの女が連れ込んだの!」ミーティアは怒った。「引きずってね!」
「『あの女』…」
ロンは記憶をたどるように宙を眺める。実際に記憶が途切れているのだ。ただ見えていたものはその時理解できていなくとも映像として脳に記録されている。その映像を一つ一つ、ドアノブに手をかけたところから丁寧に思い出していく。
「あっ…」
割と激しい口論をしていたことに気づく。あったばかりの人に喧嘩をふっかけていた。
「俺の口でなんてこと言ってたんですか…!」
また一つ、復讐とは程遠い行為に自分が利用されたと知りロンはがっくりと肩を落とす。だがミーティアは気にも留めずに話し出す。
「ロン、聞いて。さっきフラフラして確認したんだけど、この店ワタシの私物がかなりの数売り出されてるの!ひどくない?!お気に入りのカルラ産の樫の髪串なんて銅貨5枚よ!?あいつものの価値ってもんがわかってないでしょ!ね!?」
同意を求められても仕方ない。ただ、たしかにこの店にはミーティアが生前所有していた品がいくつか並んでいるようだ。
興奮するミーティアに対し、ロンは静かに語りかけた。
「…むしろですね。彼女ではなく品を流している、その出処を叩くべきでは?」
ミーティアはハッと口を抑える。目に輝きが戻り、力強く頷いて同意した。
「あのォ!」
部屋の向こうからとを叩く音ともに不機嫌そうな女性の声が聞こえる。記憶をたどったから間違いない、この店の女性のものである。
「一人でぶつぶつつぶやいてるところ申し訳ないんですが、目が冷めたらさっさと出ていってくれませんかね!」
「ああ、すみません!今そちらへ…」
まず彼女に対してお詫びをしなくてはならない。大いなる復讐の前に、人道からは外れてはいけないのだ。
ロンは戸を開けた。




