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夜だというのにたくさんの松明と、木槌の音が聞こえる。メインの花見席の準備は整っているが、今回、急遽参加者の増大を図ったため、簡易の席作る必要が出た。夜通しその作業に当たり、さらに警護つかなくてはいけないので騎士の皆さんは大変である。
「ふっふっふ、なかなかうまくいってるじゃん」
先程の門番といい、ぜぇぜぇ言いながら噂に振り回される姿をミーティアは笑っていた。
「あの噂だと普通の感覚なら、国王はもちろん市民に危険が及ばないよう遠ざけると思うんですが」
「王国の奴らにそんな情は存在しないってことよ」
ロンは少し小高い山の斜面の草影から建設地を俯瞰していた。必要以上に火が焚かれているのでその位置からなら陣容が丸わかりである。
「もしかしたら噂がデタラメだと看過されてて、こちらが行動を起こすのを待っている…とか?」
ロンの思考途中の独り言を聞いて、ミーティアも気づいた。
「そういう悪知恵、あいや良知恵、ん、悪知恵でいいのか。ともかくそういう考え方得意だからね、連中」
悔しい思いが蘇ってきたのかミーティアは自身でも気づかないうちにグッとそばにあったロンのローブを引っ張っていた。
「さて、あれはあるかなぁ…」
「あれ、とは?」
ミーティアはシシシと歯の隙間から抜けるような笑い方をする。
「言ったでしょどうやって脅かすかは決めてあるって。ロンは地図と大体の施設の見当をつけておいてよ」
トントンと指でロンの肩を叩いた。
ロンはそれに応じて黙々と用意した筆記具で紙に記していく。小さな松明すら使うと居場所がわかってしまうので使うのは月明かりだけだ。それも草影なのでかなり根気がいる。
「ワタシはしっかり手元見えてるよ。今気がついたけど」
困ってあるロンに寄り添うようにしてミーティアが筆先を導く。彼のももに手をかけて顎をのせ、もう片方の手の指でペンの向かう先を示す。
夜でもミーティアの姿はよく見えた。心無しか発光しているようにも感じる。悔しいのは以前より少しマシになったとは言え、かつての麗しい姿は鳴りを潜め、痩せこけた苦しみばった髪が目の前に広がっていることだ。
「どしたの、ロン」
「あ、すみません」
手が止まっていたロンをミーティアが下から見上げてうかがう。
「眠い?」
「大丈夫ですよ」
「そ。よかった」
ミーティアはまた地図に目を戻した。ジロジロ目の前の光景と地図を行き来していたが丁度ロンが筆を走らせ始めたところで視線が止まる。
「ここ…?」
ミーティアはその建物の場所をゆび指した。
「ああ…」ロンも建設地と地図を交互に見比べる。
「おそらくあの形ですから。当日任務につく騎士の人数もおおよそでわかりますよ」
それを聞いたミーティアがニカッと歯茎までむき出して、眼下の花見会場を見渡した。
「オーケー、悪い感じ。悪い感じだ、これ」
悪の計画はロンにも伝えられず進行しているようであった。




