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花見の会の警護は流石に厳重である。正面から突撃しようものなら追い払われるのは自分たちの方だ。
ロンは自宅への帰り道、ミーティアと並んで歩いていた。
「なるべく大騒ぎになるようなもので、かつその後誰も近づきたがらない感じのものを考えて」
コスモもこの話に乗ると言っていたものの、やはりそれは問題であった。会をめちゃくちゃにするだけでは、あの闇市とは違う公的なイベントなので逆に正しく成敗されてしまう。当然花見もできない。
「この間の火事のようなものでは」
そう言っている途中でミーティアはロンの頭を軽く叩いた。
「バカ。火なんて使ったらお花がかわいそうでしょ」
大家事の心配よりも、一面のセバフロックスのことを案じるミーティア。
「じゃあ雨が降れば…」
「ワタシたちがその後花見するんだからダメでしょ。それに、雨の場合は中止じゃなくて翌日に延期。雨後のセバなんていい香りがするんだから、むしろ降ってくれたほうがありがたい、なんてこともあるでしょ」
ミーティアが雨雲を呼ぶことは可能なのかわからないが、降っても向こうに不利益はないだろう。
「誰かが亡くなる…」
「野蛮」
ミーティアはふくれ面である。
「死はおめでたい場に相応しくないって。考えてもみてよあそこに…」
ピタリとミーティアの動きが止まった。口を開けて少しの間そのままの状態を保つ。急に静かになったので何事かとロンが振り向くと、ミーティアが飛び出してきた。
「それだ!」
「え?」
彼女は興奮して腕組をする。息はしていないが、鼻の穴が膨らみ少し口調が早くなる。
「死!あの地を忌み地にするの!そうするとその土地で宴会なんて開きたくなくなるでしょ!」
ロンは何を思いついたのか青ざめる。オロオロと夜道でもわかるほど冷や汗が吹き出している。
「なァに、ロン。何か問題でも?」
「いや、忌み地、というと…その…」
「はっきり喋ってよ」
「あと九日、いや八日程度では無理ですし、それにできるとして大量の死体を用意しなくては…」
流石にそれは復讐の度が過ぎている。悪の道を進んでもただの殺人者にはさせたくない。
ミーティアはせせら笑う。
「一体何考えてんの、流すのは噂だけ」
「噂、だけ?」
「そ。あそこは呪われし土地だってなったら誰も行きたがらないでしょ。花見も中止。流すのはワタシ達だから影響なし。完璧じゃん」
ロンはホッと息を吐いて納得した。
「でも、嘘並べても誰も信用しないんじゃないですか?」
「……ま、まあ…それはそんな気もするけど…」
決まりが悪そうにミーティアがモゴモゴと喋った。「次までの宿題!」そう言ったミーティアは、高速で空中を滑りながら家主より先に家へと帰ってしまった。




