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まっすぐ自宅へと戻るロンの背を上から退屈そうに眺めていたミーティアが追いかける。ついでに、どうしたらいいのか戸惑っている入り口の騎士たちに向かって嫌そうにベッと舌を突き出した。
少しスッキリしたのかロンの方に向いたときにはもう笑顔に戻っていた。
「ロンもなかなか災難」
彼の背中に指を突き立ててグリグリいじる。
「まだ処刑台に運ばれるわけには行きませんからね」
「なんでよ、別に問題なさそうじゃん」
そろそろ日が暮れる。寄り合い所には自分の残していた農具と麦わら帽がフォークの柄にかけたままになっていた。
肩にフォークを乗せて麦わら帽をかぶり帰路につく。
「問題ありますよ」
寄り合い所の入り口を横においてあった箒で掃いてから、ロンはミーティアに目を向けた。
「俺は復讐の手伝いをしてるんですから」
「……」
ミーティアはじっくりロンを見た。そして一度ニッと笑う。
「なかなか悪いじゃない」
「この調子でどんどんやっていきましょう、俺は手を抜きませんから」
「うん、でも…」
ミーティアはもう一度ロンを眺める。少しまだ無理に取り押さえられたところや蹴り上げられた頬が腫れているのが見える。だいぶマシにはなったが。ちなみにこの怪我は対外的には、帰りに酔っ払いと喧嘩したため、ということになっている。
「なかなか次のが思いつかないの」
流石に今回の摘発は、王宮のスキャンダルとして掲示板のトピックに載った。道行く人々は魔女に関わるからだ、とか好き勝手言ってくれている。このままではまた小見出しに逆戻りである。こうなってくると次のも派手にやらかしたいのだが、きっかけが見つからない。しかも操縦したいロンの身体は最近このように拘束されがちである。
「なにか、ワタシがものに触れられるようになったことを活かしたやつが良…悪いよねェ…」
自宅に戻って作戦会議である。といってもここのところ毎日ロンにいたずらして終わりである。退屈ではあった。
「今日はもう寝ましょうか」
汚れを落としてきたロンがさっぱりした顔でミーティアに告げる。
「じゃ、ワタシはベッド」
ミーティアがロンの寝床に倒れ込むとギシッとベッドの脚が歪んだ。シーツ類は全部新しいものに替えている。ロンは簡単な頭に敷くマットを一つと掛けシーツ一枚で床に寝る。
「ロン、いつもそこで痛くないの?」
誰のせいで、と思うがロンはその一言を飲み込む。怒らせても面倒だ。
大丈夫ですと言って横になってしまったロンがミーティアには不服であった。
(最近聞き分けが良すぎる…そりゃ口応えするなとは
言ったけどさ、ちょっと許しを乞えば譲ってあげるのに)
ミーティアはまだ痛々しい傷が残るロンの頭を見つめていた。
(ロン…)
しばらく向こうを向いた彼から目が離せないでいた。




