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店の至るところにランプがかけられ、辺りは薄暗いオレンジ。仕事終わりのおじさんたちが飲み比べたり、陽気に歌ったり。慣れっこなのか店のものは客が柱に頭をぶつけようが構わず各々の仕事をしている。
「ねーちゃん!こっち来てくれや!」
鼻頭まで真っ赤にしたおじさんが、ジョッキを運ぶお姉さんを呼びつけている。
ミーティアは口をへの字にしてたいへん不愉快そうだった。
「雰囲気…いいですかね、ここ」
どちらかというとだいぶガラが悪い。空気も悪い。何を持ってミーティアが惹かれたのかロンにはわからなかった。ミーティアはわざとらしくため息をつく。
「ロンってちゃんとワタシの話聞いてないよね。ワタシ、ここのことを“良い”っていったの」
「えーと……もしかして逆の意味を含んでるんですね…?」
「そう!」
そもそも解釈違いだったようだ。
「ワタシは“悪”霊でしょ?だから好きなものは悪いものだし…」
「嫌いなものは良いもの、と…」
スラスラと受け答えのできる自称悪霊をロンは見つめた。
「いや!ややこしいですよ!」
「文句言える立場だと思ってるの!?」
二人でギャイギャイ言い合っているが、ここにいる誰にもミーティアの声姿は認識されていない。
それでも誰も気に留めないのは、ここが酒場だからであった。
「突っ立ってないで、さっさと席ついてくれません?」
無愛想な給仕に店の中へと案内された。ミーティア少し嫌な顔をしたが、仕方ない。とぶつぶつ文句を言いながらロンにくっついて奥へと進んでいった。




