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7話


アルムが呼ばれてさらに数時間が経過した。長時間の待機を見越してギルド側も特別に食事や本など色々と用意してくれてはいるものの、流石に同じ場所で数時間もいると飽きるな…


「ようやく俺の番か」


9人目が呼ばれてからずっと聞こえていた戦闘音が止まった。

既に装備の最終チェックは済んでいる。呼ばれれば直ぐにでも戦闘可能だ。


「長らくお待たせしました。10番目のディアさんこちらにお願いします。」


受付嬢の後を追い、準備室を出て訓練場へ向かうとその中心に勇者セイラがいた。

俺はそのまま歩き続け、セイラと向かい合う。


「これまで休み無しの連戦のようですが、問題はないんですか?」


俺の質問に、特に息を切らしている様子もなく答える。


「ええ、問題ないわ。街の外に出ればそんなの日常茶飯事よ。あなただって冒険者ならわかるでしょ?まぁギルドが集めた面々なだけあって普段よりは疲れてるけど、模擬戦に全く支障はないから心配しないでいいわ。」


「流石は勇者様。噂に違わぬお強さで…」


「この程度の戦闘でへばってたんじゃ魔族領域の探索なんて出来っこないわ。ところで、聞きたいんだけどあなたが街で聞いた盗賊狩りであってるかしら?」


やっぱり知られていたか。オーディル家が居るなら情報を集めるくらい簡単か。まぁ隠して居るわけでもないし、街人に聞けば直ぐ分かることではあるが…


「そう呼ばれてたりもしますね。勇者様に知られているなんて光栄です」


「門番さんに教えてもらったのよ。その強さ期待してるわ」


その言葉にあの憎たらしい門番の顔が脳裏によぎる。

あいつ…わざと教えやがったな!後できっちり説明してもらおうじゃないか…


「それぞれ位置についてください」

俺たちの会話が途切れたところで審判員が位置につくように促す。

定位置につくと、俺は黒塗りの片手剣を構え、勇者は白銀の聖剣を構える。


「では、模擬戦開始してください!」


開始と同時にセイラは風刃を飛ばしてきたが、俺は横に動くことでそれを避ける。

回避している間に接近してきたセイラは聖剣による突きを繰り出すが、体を横に反らしながらギリギリで避けそのまま懐へ入り込む。

お互いの剣では近すぎる間合い、俺は空いているもう一方の手で腰に差している短剣を素早く抜刀しセイラに切りかかる。しかし、セイラも空いている手で風の盾を展開し、短剣を防ぎながら後ろに後退した。


すかさず後退するセイラに防がれた短剣をそのまま投擲するがそれも聖剣によって切り払われる。短剣を弾くために剣を振るったセイラだが、俺は短剣を投擲した直後に追撃を仕掛けるため再接近していた。

黒剣を構え隙のできたセイラへ斬りかかろうとした瞬間、突如正面から突風を受け後ろへ吹き飛ばされる。態勢を崩しながらも、問題なく地面に着地するがセイラはすでに隙なく聖剣を正面に構えていた。


「やるわね。私が今回防御を必要としたのは貴方で2人目よ。」


人族最強と言われるだけあって勇者であるセイラは魔法の展開速度、剣術、身のこなし全てがトップレベルだ。


「そうですか…ありがとうございます」

「ああ、それとわざわざ丁寧に話さなくてもいいわ。そんな硬い言葉はお城の中だけで十分だもの」


このままなら少し強いくらいで、そんなに目をつけられずに終われそうだな。


「ただ、盗賊狩りとまで言われる貴方がこの程度な訳ないわよね?聞いたわよ、一人で盗賊団を壊滅させているらいいじゃない」


「…いやいや、これでも精一杯戦ってますよ」

「見られても構わない程度の精一杯でしょ?全力とは程遠いわね。まだ魔法すら使ってないじゃない」


まいったな…隠しすぎて逆に違和感を感じたのか目をつけられてしまった。


「けど、手の内を見せたくないって気持ちも分かるわ。私だって知られてもいい技しか使ってない訳だし。けど、その力の片鱗くらいは見せてもらうわ!」


勇者の魔法により突如訓練場の風景が塗り替えられていく。今まで見えていた審判員も観客席も見えなくなり、代わりに白色の空間に変わってしまった。


「これは、結界か!」


空間を切り取る高度な風の結界をあの一瞬で組み上げたのか…それにここまで魔法の発動をハッキリ見せられても発動条件がわからない。剣を構えたまま勇者は動いていなかったはずだ。


「正解。ほら周りの目を隠してあげたわ。これなら思う存分戦えるでしょ?」


そう言うやいなや、セイラは再び風刃を飛ばしてきたがその練られた魔力も速度も先程とは比べ物にならない。


「おい!これは一発当たるだけで重傷だぞ!これは模擬戦だ!」


「そんな事言いながら全部綺麗に避けてるじゃない。それに、治療班も待機してるから大丈夫よ。貴方が力を出さないなら、多少強引かもしれないけどその片鱗だけでも確認させてもらうわ」


「くそっ!これが勇者のやり方かよ」

「ええ、清く正しい勇者様は物語の中だけの存在よ?」


会話しながらもセイラは風刃を放ち続ける。これじゃ完全にいい的だ。こっちも飛び道具を幾つが試したが全て届く前に魔法で叩き落とされた。


ふと、風刃を放っていたセイラの聖剣に違和感を感じたその瞬間風刃をではなく広範囲に白い光を放ってきた。風刃が来ると思い込んでいた俺にはこれを避けられないと判断し、片手を胸に丁度心臓の真上に持っていく。


「っ…貴方その姿はどう言う事かしら」


セイラが驚くのも無理は無い、魔法によって俺の両手足は紫の鱗に覆われている。変質した腕を前に構え目の前に迫った白色を防いだのだ。


「これが俺の魔法だよ。体の一部の魔族化による身体強化だ。」



魔法発動条件によって使用できる魔法の種類はだいたい決まってくる。

例えば、俺のように胸に手を当てる等、自分に対する特定行動で発動できる自己完結型、

アルムのような地面との接触等、特定の物体や領域が必要な物質依存型、

そして目を合わせる等の他者の存在を必要とする他者依存型。


自己完結型の場合は自身の強化又は特殊能力付加。

物質依存型の場合は一定範囲の対象物質、領域の操作、変質。

他者依存型の場合は回復や解析、状態異常付加。


以上のように一般的には分類されている。もちろんそういう傾向が強いというだけで、必ず当てはまるわけじゃない。


俺のこの魔人化は自身の強化どころか、体の変質まで行なっているせいで自己完結型の魔法の中ではかなり特殊な魔法だ。一般的な強化なら魔力によるオーラが発生するだけだ。人の身に魔族の力を宿すこの魔法を俺は魔人化と呼んでいる。

俺がソロで戦っている原因はこれだ。この体の変質現象は魔族の外見と一致しているせいであらぬ疑いをかけられる可能性がある。人族は自分と異なる姿の者に対して排他的だ。だからこの姿はできるだけ秘匿してきた。



「一応聞いておくけど、あなた人間よね?」


「ああ、それはもちろんだ。ギルドにも所属しているし、そこら辺はギルドも保証してくれる」


俺自身も一度不安になって魔族避けの結界とやらを試してみたがすんなり入ることができた。


「ならいいわ、続けましょう」


さっきの光はおそらく聖剣による攻撃。

これまでの動きからセイラ自身は風属性の物質依存型と予想するが、発動条件が未だわからないせいで魔法のタイミングが読めない。

先ほどの結界の発動時は特別な行動をしているようには見えなかったから、行動ではない何か特殊な条件があるはずだ。それを見極める!


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