6話
side アルム
「はぁ!!」
開始の合図と共に私はセイラに接近し、大槌を下から上へ振り上げる。
私の初撃をセイラは避ける事なく、聖剣で危なげなく防ぎそのまま後ろへ下がった。
「思ったより素早いわね!」
距離が開いたことでセイラはその場で剣を振り、風の刃を飛ばしてくる!
私はその場を動くことなく地面に手をつけ、魔法による土の壁を生み出し飛翔する風刃を受け止める。
無事風刃を受け切った私は、振りかぶった大槌で土壁を殴り、セイラへ土片を吹き飛ばすが土片はあらぬ方向へ逸らされた。
ここまでは順調だ。戦うに当たってまず重要なのは相手の魔法の傾向を知ること、そして魔法発動条件を見つけること。人にはそれぞれ魔力回路という物が体内に存在し、活性化させることで魔力を外に放出し魔法が発動することができる。
しかし、その活性化させるには条件があり、特定の行動を必要とするのだ。例えば私の場合、必ず地面に手を触れる必要がある。
発動条件には簡単なものから複雑なものまで多種多様で、明らかに戦闘に不向きな発動条件や危険を伴う発動条件だってある。
ただ、一般的に条件が複雑な発動条件ほど魔法の威力が高くなる傾向があるらしい。
魔法発動条件を知ることができれば、相手の魔法の発動タイミングがわかり、防ぐことも発動の妨害することもできる。
最初の風刃は聖剣の能力とも考えられるが、その後の土片をそらしたものは一般的な風系統の魔法による防御方法と酷似していた。ひとまずセイラの魔法は風の操作と仮定して次の行動に移ろうとした瞬間、セイラが私より先に動く。
「今度はこっちから行かせてもらうわ!」
先ほどの風刃を飛ばしながら接近してくるセイラに対して私は迎撃体制に入る。
先行する風刃の弾幕は大槌の一振りで全て蹴散らす。しかし、その振り切った隙をセイラは当然見逃さず、加速する。
大槌による返しは間に合わないと即座に判断した私はその場で手放し、籠手を嵌めている両腕で対処する。
どうにか後ろに下がって体制を整えたいが防ぐだけで精一杯の私はついに防ぎきれず吹き飛ばされる。
「っ...強い...」
「くらいなさい!」
力強く振るったセイラの聖剣から先程までの風刃とは比べ物にならない光の奔流が私に向かって一直線に放たれた。私は吹き飛ばされた反動で未だ地に片膝をつけているが、まだやれる。
再び地面に片手を添え、土壁を生成する。急造の土壁だ、恐らくもって数秒。その間に再び魔法を使う!
「そっちこそ!」
セイラの側に落ちている大槌を起点として魔法を発動する。
突如地面から生えた巨大な土腕が大槌を振り抜き、私への攻撃で隙ができているセイラを吹き飛ばすと同時に私も光の奔流に飲まれた。
私が最後に見た景色は崩れた訓練場の壁の中から無傷のセイラが立ち上がっている姿だった。