5話
模擬戦の順番はクジによって決められた。
運がいいのか悪いのか…引いた番号を見ながらため息をつく俺にアルムが嬉しそうに寄ってきた。
「ディアー!何番目だった?私は3番目だったよ!」
アルムに引いた紙を見せながら答える。
「俺は最後だよ」
「最後かー。それだと待ち時間も長いし結構暇だね」
今俺たちがいるのは訓練場の準備室だ。それぞれの戦闘スタイルや武器、魔法などは冒険者にとって重要な情報で、おいそれと他人に見せるわけにもいかない。
従って、模擬戦の状況が見えない準備室で待機、前の模擬戦が終わり次第次の相手が呼ばれるようになっている。
それから30分程度で一人、二人と順に呼ばれ、次はアルムの番だ。
アルムは自身の武器である大槌と身にまとっている鎧の最終調整をしている。
「緊張してきたかも」
「嘘つけ。お前今めちゃくちゃ楽しそうだぞ」
「やっぱりわかっちゃう?本当は嬉しさ9割、緊張1割って感じ。最強と言われている相手に自分がどこまでやれるのか試せるなんてまたとない機会だもの!」
アルムは男が多い冒険者の中で影響されてしまったのか、それとも元々の気質なのか基本は大人しい性格だが、戦闘の事になると途端に積極的になる。
アルムと話していると準備室の扉が開いた。
「では次3番目の方、よろしくお願いします」
準備を終えていたアルムはすっと立ち上がり、入口へ向かっていく。
「じゃ、ディアお先に行ってくるよ!」
「あぁ、頑張ってくれ。見えないが応援してる」
アルムを見送った俺はそのまま自分の準備に取り掛かった。
準備室から呼び出され、訓練場に到着するとその中心に綺麗な白銀の鎧をまとった勇者セイラがいた。広い観客席にはオーディルが一人座っている。
私は、気を引き締めて中心へ向かう。歩を進めながらセイラを観察する。白銀の鎧からかなりの魔力を感じるからおそらく高位の魔法鎧、腰にある剣は勇者の証である聖剣、他にも身につけている物全てが高級装備だ。
対して私は、中級魔法鎧に苦労してオーダーメイドした大槌、他にも細々とした戦闘補助用の装備はあるがどれも勇者の物と比べると見劣りする。
セイラも私を観察していたのか、私の背負っている大槌に興味があるようだ。
「女性の冒険者ってだけでも珍しいのに、大槌を扱うなんてすごいわね」
「お褒めいただき光栄です」
私と初めて会った人は大体がこんな反応をする。最初は男の多い冒険者の中で女だからとバカにされないように、小さな体を少しでも大きく見せるために鎧を着込んで、大きな武器を選んだ。
そりゃ最初は鎧はガチャガチャうるさいし、大槌に振り回されて大変だったけど、今ではこのスタイルに愛着さえ持っている。
「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ!いろいろギルドを回っているけど女性の冒険者は初めてだわ。同じ戦う女として精一杯戦いましょう」
「はい!よろしくお願いします!」
「ではこれより、模擬戦を開始します。お互い位置についてください」
審判席にいるギルドの審判員が私たちに準備を促す。
私とセイラは指示に従いお互い離れた位置で武器を構え、戦闘態勢に入った。
お互いに睨み合いながら開始の合図をまつ。
「では模擬戦を開始してください!」