2話
ギルドとは各地を転々とする冒険者を管理する組織だ。ギルドに入ると街に入る手続きが楽になり、道具や宿代が安くなったりと様々な恩恵がある。
冒険者は様々な恩恵を受ける代わり一般市民から貴族王族まで様々な依頼主からくる依頼を受けなければならない。一年で受けなければならない最低数が決まっており、それを達成できないと1度は警告、2回目はギルドからの除名となる。
ギルドに到着すると俺はまず、様々な情報が貼られている掲示板へ向かうがトールからの情報以上のことは書かれていない。その情報の無さがどうも気になったため、受付に移動し受付嬢に話を聞くことに決める。
「少し確認したい。近いうちに城のお偉いさんがここに来ると聞いたが、その詳細とかはないのか?名前とか目的とか…」
「申し訳ありません。そちらはマスターからの指示でお教えすることができません。今出せる情報は掲示板の情報のみとなっています」
「そうか、マスターがそういうなら仕方ないな」
マスターとは、ギルド長の事だ。長年ギルドに尽くした一部の冒険者が引退の際に本部にスカウトされ各地のギルドに派遣されているらしい。
長年冒険者として活動していただけあって、冒険者を第一として考えてくれると皆から信頼されている。
「ただ、腕の立つ者を探しているとのことなので、恐らくディアさんにもお声がかかる可能性が高いと思います」
これは面倒事の予感がする。本音は絶対に応じたくないが…
俺が嫌そうな顔をしている事に気がついたのか、受付嬢は申し訳なさそうにしている。
「そこらの貴族ならギルドでどうにか対応できるのですが、今回は上位の貴族なので断った場合、ギルドで守りきれるかわかりません。できればお受け頂きたいですね…特にディアさんは色々と有名ですので隠れることも難しいかと」
...これもこの街に盗賊狩りという呼び名が知れ渡ってしまっていることによって起きる弊害だ。何処に居ようがどうしても人の目についてしまう。
今から急いで別の街に移動しても、逃げたと判断されるだろう。こういった噂が広まると今後の信頼に関わるから今回は諦めるしかないな。
「仕方ない…か。もしその時がきたらよろしく頼む」
それから数日経ったある日、いつも通りギルドに依頼を探しに行くと前に話した受付嬢に声をかけられた。
「ディアさん!少しこちらでお話しよろしいでしょうか?」
行きたくない気持ちで一杯だが、そういう訳にはいかないので受付へ向かう。
「お待ちしておりました。既に察しているかと思いますが、以前お話しした貴族様が明日この街に到着しますので昼の鐘がなる頃にギルドの訓練場までお越しいただきたいです」
「訓練場?もしかして模擬戦でもするのか」
受付嬢は手元の資料を確認しながら俺の質問に答えてくれる。
「はい。集まった中で一番強い人に指名依頼を依頼するそうです。こちらの紙に詳しいことは書かれているのでご確認ください」
渡された紙を読むと人を集めた理由、模擬戦についての詳細が書かれていた。要約すると、とある方の護衛として腕利きを雇いたいが、長期間の移動になるため城の護衛である騎士をつける訳にはいかない。
ギルドからの人選なら信用できるし、依頼という形で長期間の雇用も可能である、というのが今回の腕利き集めの理由らしい。模擬戦はギルド審判付きの観客無しというものだった。
一通り読み終わって、一番気になったことを聞いてみる
「なるほど、確かに確認した。模擬戦の相手については書かれていないがそれはどうなっているんだ?」
「向こうで相手を用意している様です。恐らく護衛騎士の内の一人になるのではないでしょうか。こちらで審判を行うのでギルドの模擬戦ルールの下戦っていただきますのでご安心くだざい」
「どんな相手か気になるが、まぁ対策とかされると正しく力を測れない可能性もあるし仕方ないか…」
情報収拾等の事前準備も冒険者の力の一つだが、今回は戦闘力だけを知りたいんだろう。