第90話:宣戦布告
「君の敵意のある視線はレオ君のと違って全然刺さらないね。ダメだよ。弱いくせに強がっちゃ。弱い事が相手にバレる」
「余計なお世話だ」
「で、いつから気づいていたの?」
自分がピース・ライアーであると、どの瞬間から気づいていたのかとアビゲイルは聞いてきた。
ただ、その回答を俺は持っていない。
「いつからって言われるとついさっきだ。お前が認めたからそこで答えあわせをした」
「ズルい人間だ。じゃあ、いつから疑っていたの?」
「本格的に疑いだしたのは第一階層の教会で遭遇したあと、レオとカレンがお前を疑っていたから、それを聞いて俺も疑うようになった」
「なら、疑う根拠はなかったという事だね。ただ、周りが言うから自分もそんな気がしただけ」
脇役の考えじゃないかと、アビゲイル……いや、ピース・ライアーは言う。
その言葉に、俺は頷いた。
同意の頷きだ。
俺は脇役だ。
祖父が大魔法使いと呼ばれる知識人であるという事以外、特別な事は何もない。
何か優れた能力を持っているわけでもなく、魔法みたいな超常的な力が使えるわけでもない。
身体能力も平均かそれ以下で、何かの願望があるわけでもない。
だからこそ、俺は脇役だ。
誰かがスポットライトを浴びるために、その土台となる人間だ。
自分がそうなのだと理解しているからこそ、ピースの言葉に同意して頷く。
腹がたつ事も拒絶したがる事もない。
ただ、確かにお前の言う通りだと頷く。
けど、1つだけ否定するべき事がある。
それは、ピースを疑う事に根拠がなかったという点だ。
何せ俺がピースを疑った事には、明確な根拠があるのだから。
「お前を疑う根拠はいくつもあった」
「へぇ。どんな?」
「まず、最初にピース・ライアーの名前を聞いた時、その名を名乗ったのが大型の竜種だと教えられた。だからてっきり、邪竜事象かそれ以上のサイズの竜種なんだと思っていた。そうだな。バベルで見たオーディンくらいのサイズは想像していた。けど初めてあった時、ピース・ライアーを名乗ったのは竜種の枠組みの中でもかなり小さなサイズの物だった。そして、その時のピース・ライアーは明らかに、途中から意識を持ったという感じだった。ここでまず、俺はピース・ライアーという魔王軍幹部について、違和感を覚えた」
へーそうなんだー。と、聞き流すようにピースは相槌を打つ。
俺の話を妖しいニヤけ顏で聞きながらも、ビールを飲む手は止めない。
「次に、この街、楔国で初めてお前に会った時、初めて会ったはずのお前の声にどうしてか聞き覚えが会った。これが疑うに至る2つ目の素材だ。さらにこの時、多くの人がいるにも関わらず、なぜか俺に話しかけてきたという点にも違和感を覚えた」
「それは大層な推測だ。だけど、あの時君に話しかけたのは本当にただの偶然だったんだ」
「嘘だな」
「どうしてそう思うの?」
「今、お前はニヤけている」
「そういう顔だって。あと、お前とか女性にいうのはよくないよ?」
「うるさい。それから、本当に疑うに至った最後の材料は、最初に言った通りの教会での遭遇だった。あの時、お前が知っているはずだった人間は俺だけだ。他の人間には会っていないワケだしな。そして、あの時お前は名乗っていないはずのカレンの名前とレオの家名を口にした。挙句にはオーディンとの戦闘があった王の間で、お前は俺とポーラの名前だけじゃなく、レオがゲルという男の息子である事も口にした。何もかも、ただの一般人が興味本位で知っている話じゃない」
「なるほどね。だからこそ私を疑ったと」
運ばれてきたアヒージョのブロッコリーをフォークで転がしながら、ピースは言う。
先を話せと、間接的に促す。
「ああそうだ。あとは魔法の存在を知っているのも判断の1つだった。あれは、世間一般としては確かに存在するが目にした事はない物という、ある種の都市伝説的認識をされている。だから、魔法をみて驚かず、その存在を当然のように認めているという事は、すでに魔法を見た事があるのだと考えるのが妥当だ」
1度話を区切り、話し続けたことで乾燥した口内をコーラで湿らせる。
氷が溶けて少しだけ水っぽくなっていた。
「あとはそうだな。お前があの街でニコラウスを勧誘していたのも、魔王軍に人間が居てもおかしくないという価値観を俺たちに与えたワケで、これまでの話とも合わせることで、アビゲイル・キャンベルという人間が魔王軍の人間なのではないかという疑問、疑惑へ至った。そして、ここまで思考が組み上がったところで、俺はふと思い出した。初対面の時、お前の声をどこかで聞いたことがあったなと」
どこで聞いたことがあったのだろうと、俺は思考を巡らせた。
(候補勇者に選出されるよりも前?)
違う。学校の先生は年老いた女性か40前後の男性ばかりで、俺の身の回りに該当する酒灼けしたような嗄れた声の、それでいて少しばかり若い様子の声を持った人間は居ない。
(だとしたら、候補勇者に選出され、旅立つまでの間に会った誰かか?)
それも違う。ヒシギもアリスも、二人とも芯のある透き通った声をしていた。
濁ったような嗄れ声じゃあない。
(だったら基幹都市で出会った誰かなのか?)
それはありえない。基幹都市で出会った女性はシロ……八条真白だけで、あとはスティーヴとその秘書に会ったくらいだ。
(あの街……は、違うか)
何せ、あの街で出会った生きた人間は、ミカド・ユミという幼い少女だけ。
当然のように声も幼く、あんな人生に疲れ切った嗄れた声はしていない。
「え、何か失礼なこと考えてない?」
なんて聞いてくるが、とり合えずピースは無視しよう。
まぁ、こうやって過去の記憶を順に漁っていき、俺はたどり着いた。
似た声の生物に。
あの街のことを思い返すと、必然的にホノカとバクとキャロルが命を落とした瞬間のことも思い出してしまう。
そうして辿り、ホノカが竜種に踏み潰された後の情景に行き着く。
あの時、ニコラウスをも踏み潰そうとした竜種は突然止まった。人語を叫びながら。
その個体が正しくピース・ライアーだ。
まるで人格が乗り移ったかのような不自然な変貌を遂げたピースは、びっくりするほどのざらついた声で、酒灼けしたような嗄れた声で、名乗りを上げた。
嗚呼。そうだ。この声だ。
この声こそが、アビゲイルの声を聞いた時に似ているなと思った声だ。
そう思った。
「思い返した結果に行き着いたのは、あの時の街で出会った人語を話す竜種、ピース・ライアーを名乗る竜種と、声が似ているじゃないかって話だ。ここまでくれば、材料は足りないかもしれないが俺はお前を疑わずにはいられなかった。自分自身が武器だと言ったアビゲイル・キャンベルという女性が、おそらく魔物に化けることのできる人間、もしはそれに順する何かの力を持っているピース・ライアーという魔王軍幹部と、同一の存在なんじゃないか……と」
最後の部分は、ほんの数分前に思いついた仮説だ。
証言とは異なる体を持ち、さらには人間の体をも持つ。
世界最優の武器職人を自称し、自分自身が武器だと言う。
このバラバラの情報をつなげると、アビゲイル・キャンベルを名乗るピース・ライアーという魔王軍幹部の女性は、世界最優の武器職人であり、故に自身を体そのものが武器である魔物へと変える術、もしくは、魔物を操る術というものを持っており、だからこそ、異なる体を保持していて証言と現実が食い違ってしまう。
と、言った具合の解釈になる。
ただ、あくまでも解釈だ。
得られた情報を勝手に引き伸ばして繋げただけで、仮説の範囲を飛び出ない。
だから俺はわざとその仮説を口にした。
敵である魔王軍の幹部の一人、おそらくは魔王軍の武器を開発していると思われる人物について、何か得られる情報があるのではと思い。
「驚いたなぁ。そこまで気づいていたんだ」
とうとうビールを飲む手を止めるピース。
どうやら図星だったようだ。
「そうだよ。君の指摘通り、私は魔物を操ることができる。だからこそ私自身が武器だって言ったの。まぁ、魔王軍の魔物に限るんだけどね。だから、君たちでいうバベルじゃあ実のところ何もできなかったよ。あそこに出てくる魔物は私の管轄じゃないからね。どう頑張っても操作できない」
「牛人間やヤギ男もか?」
「えーっと、君が何を言っているのか分からないけど、あそこに出てきた魔物は、ウィークが引き連れていた魔物以外は全部が魔王軍とは無関係の魔物だよ。小鬼であろうと、生屍体であろうと関係ないね」
「おま……ピースも生屍体に遭遇したのか?」
「ああしたとも! あれはすごいね! 浪漫だよ! 私はまだあんなキチガイなものは造れないから、早く造れるようになりたいなぁ」
(造る? 何を言っているんだコイツは。それじゃあまるで、魔王軍の魔物は自分が作っているみたいな言い草じゃないか)
「あ、ちなみに言っておくけど、魔王軍の魔物は私が造っているよ。今は。だからこそ自分が作った作品を自分で操ることができる。製造者特権というやつだね」
合点がいった。ような気がする。と、言うか、
(どうしてここまで教えてくれるんだ?)
「な、なぁ。そこまで話していいのか? 俺は敵だぞ?」
敵ながら心配になり聞くと、ピースは空いている方の手で俺の頬をガシッと掴んできた。
俺のお口がタコさんのようになる。タコタコ。
「いいよ。君たちは君たちで私にいろいろな情報提供をしてくれたしね。そのお礼だよ」
君ではなく、君たちというあたり、ポーラの魔法の話やレオの疑似聖剣の話も含めているのだろう。
確かに、アレらはかなり重要な情報だと思う。
俺も敵にあんな芸当できる奴らがいるのだと知ったら、かなりの収穫だと思うはずだ。
「それに、これは本題を語る上で必要な話だ」
「ひょ、ひょんひゃい?」
うまく言葉が出ない。
原因はピースに頬をグニっと掴まれていること。
なんなの? それ、楽しいの?
俺にはその楽しさがちょっとわからないんだけど……。
「ああそうだ。本題だとも!」
ねぇ、ニシゾノケイタ
今までの嗄れた声を作っていたんじゃないかってほど、ものすごく色っぽい妖艶な声音でピースは俺の名を呼んだ。
「ひゃ、ひゃい」
年上のお姉さんのギャップに、俺はつい背筋をピッと伸ばして座りなおしてしまう。
何してんだろ俺。
「君、魔王軍に来るつもりはない?」
…………は?
「……は?」
思ったことが口に出ていた。
「だから、魔王軍に来なよ。悪くはしないよ?」
「い、いや、何で」
俺の頬を掴んでいたピースの手を払いのけ、動揺した声で聞いてしまう。
これも、何かの狙いがあっての戦略なのだろうか。
そういえば魔王軍は祖父を探している的な話だったな。
なら、俺を仲間に勧誘して俺を人質に祖父に会おうと思ってんのか?
「お前たち魔王軍が欲しがっているのは俺じゃなくてハルアキの方だろ」
「確かにハルアキの方も欲しいね。けど、私は君が欲しい。ウィークも君を気に入っているし、魔王も君を欲しがっている」
(魔王が? どうしてまた……)
「そうかぁ。まだ取引材料がたりないのか」
君は取引上手だなと、勝手な解釈で褒めてくるピース。
その意図が、何となく読めた。
きっと、敵である俺に自分が魔王軍でどういう役割を担っているのかを教えたのは、それそのものが取引の材料だったのだ。俺を、魔王軍に引き込む。
自分は重要な機密をお前に教えているんだ。お前はもう引き返せない。
脅迫じみた、そういう取引だ。
「ならこれはどうかな。あの建造物、バベルだっけ? 何度聞いてもダサい名前だね。あれの製作者はウィッチクラフトだよ」
ウィッチクラフト。確か、シロから聞いた話だとひとつ前の魔王の名前だ。
またの名前を、エンペラー。
「どうしてそんなことがわかるんだよ。つーか、ウィッチクラフトはシロに殺されたんじゃないのかよ」
「シロって誰?」
「真白だ。今の勇者だろ」
「あーね。確かに八条真白によってウィッチクラフトは刺されたよ。けど、殺されたかまではわからない。あの人なら周りの目を欺いて生き残ってそうだけどね。あと、どうしてウィッチクラフトがバベルを作ったってわかるのかって話については、生屍体を製造できて物理無視の魔法建造物を作れるような人を、私はウィッチクラフトしか知らないから、だから彼が作ったんじゃないかって思ったの」
「その話は今するべき話なのか?」
「あれ、知りたくなかった?」
いや、知りたかったけど。
「まぁ、この話を君にしたのは、ウィッチクラフトに魔法を教えたのが君の祖父、ニシゾノハルアキだったからって理由かな?」
「……どういうことだ」
「おっと。ここから先は有料だよ。魔王軍に来るなら教えてあげる」
クソ。そうなるとは思ってたけど実際にここで話を切られると腹が立つな。
「教えてくれないなら俺は魔王軍にはいかない」
「じゃあ別のことで君が知りたいってことを教えてあげるよ。どうせ、君がここに正直に来たのは何か聞きたいことがあったからじゃないの?」
図星だった。
ピースに呼び出されて大人しくここに来たのは、アビゲイルという女性がピースであることの確認をする以外にも目的があった。
おそらく俺が知らないことをたくさん知っているであろうピースに、再編についてと聖剣について話を聞くという目的だ。
それらに答えてくれるというなら、甘えようじゃないか。
散々話を聞きだすだけ聞き出してそのまま魔王軍には入らないと言い放って帰ってやる。
「再編についてのすべてと聖剣についてを教えてくれ」
「再編については有料だね。それを聞けば君は確実にこっちに来るだろうけど、来るよりも先に多くの人間に言いかねない」
なるほど。つまり、再編はそれだけ人に知られたらいけない話を内包しているということか。
例えば、世界の在り方そのものを覆しかねなかったりだとか。
これはこれで1つ大きな収穫だ。
「聖剣については教えてあげるよ。どうせ私が教えなかったらカナリスか八条真白のどっちかに聞くんでしょ? だったら、今ここで私が教えて私の好感度を上げておくよ」
いや、別にそんなんじゃお前の好感度はあがらねぇよ。
つーか、カナリスって誰?
「え、カナリス?」
「そうそうカナリス。カナリス・ラスカー」
「え?」
「え?」
いや、マジで誰?
いきなりキメ顔で知らない人間の名前出されても、話についていけなくなるだけなんだけど?
「あ、あーあーごめんごめん。カナリスはあれだよ、君たちが知っているカローンナだよ。彼女、本名はカナリス・ラスカーっていうんだけど、今は柱なんて名前を名乗っているんだよね。今度カナって呼んであげなよ。きっと、顔を真っ赤にして殺しにかかってくるよ」
ケラケラと笑うピースから、俺は知りたかった聖剣についてではなく、知りたくもなかったカローンナの本名を教えられてしまった。
それにしても、カナリスね。うん。なんか似合わない。
「いや、それよりも聖剣について教えてくれよ」
「そういえばそんな話だったね。ごめんあそばせ」
てへっ! と、舌をチラリと出してウィンクをするピース。
いや、それ可愛い子がやるから可愛いんだぞ?
まぁ、ピースもそれなりに顔立ちが整っているから似合わないってことはないんだけど。
「先に疑似聖剣の話をしておこうかな。疑似聖剣ていうのは、聖剣の欠片を混ぜた鋼で作られた剣のことを指すんだけど、びっくりすることに疑似聖剣は混ぜた欠片の大元の聖剣と、同じ能力を使うことができるようになる。ただまぁ、大元……親と言おうかな。親である聖剣よりははるかに威力が落ちる」
威力が落ちてあれなのかよと、レオが疑似聖剣を使った時のことを思い出す。
あれが疑似聖剣じゃなくて聖剣だったならと考えるとゾッとする。
「で、その疑似聖剣と似て非なるものとして、魔剣というものがある」
「魔剣?」
「うん。1つの聖剣の欠片だけを打ち込んだ疑似聖剣とは違い、2つ以上の聖剣の欠片を打ち込んだ剣の事だよ。2つといっても単に2つ欠片を用意すればいいわけじゃなく、異なる聖剣のかけらを2つ以上混ぜ合わせると、魔剣というものが出来上がる。すると、面白い事に親となった聖剣の能力同士が混ざり合い亜種的な聖剣が出来上がるんだよ」
「それが、魔剣」
「そう。単純な威力自体は落ちるものの、聖剣とは大きく異なる力を持ち、その使いようによっては聖剣よりもはるかに強くなる。それが魔剣。まぁ、私も実物は2度ほどしか見た事ないんだけどねぇ〜」
それを手に入れれば、俺もレオのように強くなる事ができるのだろうか。
いや、レオよりも強くなる事ができるのだろうか。
……………………。
「で、聖剣なんだけど、今この世界には聖剣と呼ばれる剣が全部で3本だけ存在しているの」
思ったよりも数があるんだなと思ったのと同時、思ったよりも少ないんだなと思えてしまう。
魔剣の話を聞いたからなおさらだ。
「生命を操るといわれる聖剣“ミストゥルティン”。空間を支配すると言われる聖剣“フラガラッハ”。そして、保持者の望みを叶えるという聖剣“エクスカリバー”」
ミストゥルティン。
フラガラッハ。
エクスカリバー。
それが、この世に現存する3本の聖剣の名前。
生命を操る剣と空間を支配する剣。
そして、望みを叶える剣。
なんか、どれもかなり曖昧な表現で本当にそんな能力を持っているのか疑いたくなるな。
まぁ、聖剣がある事は信じるけど。
レオが疑似聖剣使っていたしシロが前に聖剣がどうのとか言ってたし。
「あれだよ。君たちもよく知る八条真白が持っている穴の空いた剣。あれ、エクスカリバーだから」
「……へ?」
思わず変な声がでた。
いや、シロが持っていたあの小刀がエクスカリバーだって!?
嘘だろ。そんな訳ねぇだろ。
そう簡単に身近な位置に聖剣を持つ人間がいてたまるか!
「で、どう? 魔王軍に入ってくれる?」
「え……いやいやいや! そりゃねぇだろ! せめてもう少し話を聞かせてくれ」
「いいよ。魔王軍に来てくれたらね」
机に置いた組んだ手に顎を乗せ、ニコニコと俺を見つめてくるピースは、いつの間にか運ばれてきた料理を全てたいらげており、グラスの中も空っぽになっていた。
「それは……無理だ」
「そう。それは残念」
全く残念じゃなさそうにピースは言う。
「じゃあ、私たちはこれからもずっと敵同士という事だ」
「そうなるな」
「ふふふ。君、少し悩んでいるように見えるよ?」
悩んでいる?
俺が?
一体何に。
「悩んでなんかない」
「そう。ならいいけど」
大きく欠伸をして体をひねったりしてほぐすと、ピースは勢いよく立ち上がる。
その際に膝がテーブルに当たり、食器がガチャガチャと音を立てる。
全く騒がしい奴だ。
「実はね。私、この街に来た目的ってのがあるの」
「なんだよそれ。そうやって俺にまた情報を渡して対価を払えとか言ってくるんじゃないだろうな」
「違う違う。そんなんじゃないよ」
君はつまらない男だねと、ピースは馬鹿にするように微笑む。
「今回この街にはね、ウィッチクラフトが生み出したあの建造物の調査をするついでに、カナリスに宣戦布告をしに来たんだ」
「宣戦……布告……だと?」
「そう。宣戦布告」
反復するように言い、不敵な笑みでピースは笑った。
「7ヶ月後の1月23日。私たち魔王軍革命派は、再編を完遂するために人類に対して総攻撃を仕掛けるぞっていう、そういう宣戦布告をしに来たの」




