表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界再編と犠牲の勇者譚  作者: 人生依存
或る魔法使いの物語 第6章 楔国編(前編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/339

第65話:クエスト(後編)


「正確にはお前たちがダンジョンの調査をするんじゃなくて、現役勇者であるシロが私の部下を率いてダンジョンの調査をするんだが、お前たちにはその護衛というか、手助けをしてやってほしい。それが私からの依頼クエストの内容だ」


「ハッ! お前、何勝手に語ってんだよ。誰も受けるだなんて言ってねぇだろ」


 相変わらず不機嫌なままのレオはそっぽを向いたままで吐き捨てる。

 頬を膨らませているし、ガキかよお前は。


「まぁ、そう言うなよ。これはお前に取ってもかなり得をする話なんだぞ?」


「俺が何を得するっていうんだ。高い報酬がもらえるとかそんなくだらない話ならなおさら聞かないね」


「そんなお前が目を剥くほどの高い報酬がついてるじゃないか」


 大げさに両手を広げて演劇口調で言うカローンナの言葉に、俺はハッとした。

 確かに、この依頼クエストの報酬は尋常じゃ無いほど大きい。

 なにせ、依頼内容はダンジョンというよくわからない建造物の調査というわけじゃなく、シロの手伝いだ。


「この依頼を受ければな、お前はこの世界の人間の中で今一番強い奴の戦いが見ることができるんだ。それも肉眼で間近で何度もだ」


「あ? 何言ってんだよお前。一番強い奴って誰の話してんだ?」


 レオの返答を聞き、カローンナが目を剥いた。

 そして、レオを指差しながら俺とカレンとポーラに順に聞いた。

「あれ、シロは身分を明かしているんじゃ無いのか?」と。

 当然、俺たちはラスベガスの外で話をした時に聞いていたわけだから、知っているさと頷いた。


______________


「まさかアイツが本当に勇者だとは思わなかった」


 女性陣が三人とも出て行った後の俺の部屋で、レオはしょげるように言った。

 つーか、やっぱり勘違いしていたんだな。

 勇者と言う職業と、候補勇者と言う職業の勇者と言う役割を。


 まぁ、レオはプライドが高いわけだし、どっからどう見ても自分より弱そうなシロが本物の勇者なわけが無いって、そんな感じの補正がかかったからなおさら勘違いしたままだったんだろうな。

 とはいえ、俺も今さっきカローンナから改めて言われるまでまったくもって信じられなかった。と言うか、未だにまだ信じられていない。

 

「けど、結局はカローンナからの依頼クエストを受けることにしたんだから、実際に見てみて真偽を確かめればいいだろ」


 嗜めるように言うと、レオは少しだけ落ちたトーンで「そうだな」と頷いた。


 そう。俺たちは、結局カローンナから提示された依頼クエストを受ける事にしたのだ。

 決めたの自体はレオだった。

 ただ、決め手は多分だけど、俺とカレンとポーラの三人が依頼クエストを受ける事に賛成派だったっていうのが大きいだろうな。

 レオはバカでアホだけど完全な頓珍漢では無い。

 パーティーメンバーの要望を無視して自分の立場が保全されるなんて根拠の無い過信はしていないようだ。

 だからこそ、ダンジョンの探索がしたいと言う俺と、シロの戦いを見たいと言うポーラ、それからしばらく滞在して準備を整えたいと言うカレンの言葉を聞き入れて、カローンナの依頼クエストを受ける事にしたはずだ。


 そういった経緯があってカローンナの依頼クエストを受注した俺たちだったが、ダンジョンの探索に向かうのは半月後のようで、それまでは準備として特訓を受ける事になったわけだから、結局は楔国トリガーに滞在してカローンナに鍛えられると言う形になった。


 つーか、最初からこの形で話を進めておけばレオがカローンナに変に敵対意識を持つこともなかっただろうし、俺もカローンナが魔王軍の人間なんじゃないかと疑うこともなかっただろ。

 

 それよりも、今は一つ、確認しておきたいことがあった。

 簡単な価値観の確認みたいなものだ。


「なぁ、レオ」


「あん?」


「シロは勇者なんだよな」


「信じられねぇけどな」


「だとしたらさ、魔王って倒されているってことだよな」


 レオは少しだけ考え、「そうなるな」と返してきた。

 

「ならさ、俺たちが魔王討伐を目指して旅するのってどうしてだと思う?」


「そんなん、次の魔王が出てきたからじゃねぇのか?」


「次の魔王って?」


「んなもん俺が知るかよ。けどあれだな。前まで二番目に強かった奴が魔王になったとかじゃねぇの?」


 なんでそんなことを確認したがるのかとでもう言うように、レオがものすごく嫌そうな顔をする。

 だが、俺はレオにそんな表情で睨まれようとこの点についての深掘りを辞めるつもりは無い。


「前まで二番目に強かった奴が魔王になったならさ、そいつもシロが倒せるんじゃないのか? だって、アイツは魔族で一番強い奴を倒したんだろ? だったら、その次の強さを誇る魔族が魔王を名乗ったところで、そんなのすぐに倒せるはずじゃねぇかよ」


 以前、ケビンが言っていた話を思い出した。

 候補勇者の選出は各役職に適性のある上位10人からランダムに選出される方式なのだと。

 そして、それは旅立つ候補勇者たちのレベルが年々劣化していってしまうのを防ぐための方式なのだと。


 もしかして、魔王軍に関しても同じような話が適応できるんじゃ無いのか?

 徐々に弱くなっていかないように、本当は2番目に強いのを魔王として表に立たせ、一番強い奴は弱い奴らを魔王のレベルになるまで鍛え上げるだとか。

 ……いや、それは無理があるのか?

 魔王軍って俺たちは一括りにしているわけだけれど、俺たち人類が人類という一つの種族だけで成り立っているのに対して、魔族は複数の種の魔物を総称して魔族として成り立っている。

 その中でも一部の奴らが魔王軍として行動しているわけだが、種族が違う以上はなんと言えばいいのか、強さの定義だとか育て方だとかも違ってくるだろう。

 ああ。ダメだ。うまく考えられない。


 普通に考えておかしくないか?

 魔族で最強の存在である魔王を倒した人間が、その実力と功績を称えられて最強の人間として勇者に任命されるんだろ?

 けど、その魔王は倒しても別の個体が魔王になるのだとしたら、勇者はまた魔王を倒さなければ、勇者としての定義には当てはまらなくなるんじゃ無いか?

 それに、カローンナが言っていたな。シロは現役勇者だって。

 だとしたら、退役勇者なんかもいるのか?

 ……いや、確かレオの親父がそうだとか言っていたな。

 聞いてもいいことなのか?


 本格的にわけが分からなくなってきたな。

 魔王に代替わりがあるように勇者にも代替わりがあるのかよ。

 魔王については敗北というか、討伐が代替わりの条件になるようだけれど、勇者はどうなんだ?

 次の勇者が出てくることが代替わりの条件なのか?

 それならまぁ納得できるんだけど。

 けどなぁ…………。


 候補勇者として旅立って以降、必要以上に考えるための時間が手に入るわけだから、今まで考えなかったようなことまで考えるようになってしまった。

 今考えている魔王の話についてもそうだ。

 こんなの、考えれば考えるほど何かがおかしいっていう感覚がせり上がってきて違和感しか浮かび上がって来ないじゃ無いかよ。

 

 俺たちは学校教育で教えられた。

 天撃があり、その後の魔王出現と魔王による襲撃で人類史は壊滅したのだと。

 そして、魔王というのは魔族で一番強い1個体を指し示す言葉なのだと。

 対して勇者は魔王と対を為す言葉であり、魔王を倒した人類最強の一人を指し示す言葉なのだと。


 けど、おかしいじゃ無いか。

 この3つ、一見かみ合っているように感じるが、実際は全く話が噛み合っていないぞ?

 と言うか、話のスタート地点がもうおかしい。

 魔族で一番強い個体が魔王だと呼ばれるのに、魔王自体は天隙の後にある日突然出現したんだって?

 さらにはその魔王は魔族を指揮していて、それらを総称して魔王軍と呼ぶんだって?

 噛み合ってないじゃないか。


 卵が先か鶏が先か理論と似たようなものだ。

 ある文面では魔王が現れたことで魔王軍が生まれたと書かれていて。

 別の文面では突然出現した魔物たちの中で一番強いモノを魔王とすると書かれている。

 一見、しっかりとした文章を書いているように見せて、その実は中身が何もない。


 おかしい……どういうことだ……

 そもそも魔王って何なんだ……魔物ってなんだんだ。魔族って何なんだ。

 ……勇者って……再編って……勇者ルールって…………。

 何をもって定義されているんだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ