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世界再編と犠牲の勇者譚  作者: 人生依存
或る魔法使いの物語 第4章 LasVegas編

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第45話:さよなら基幹都市。こんにちは新しい仲間。

 スティーヴの屋敷で過ごす2日弱の間、特にこれといった事件は起きずに平和に時間が過ぎた。

 強いて言えばレオが風呂場で素っ裸のカレンと遭遇して殴り合いの喧嘩をしたくらいだ。

 この間、スティーヴは一度も屋敷に帰ってこなかった。

 もちろん秘書が出入りする様子もなく、それなのに食材だけは丁寧にキッチンに補充されていた。

 きっと俺たち全員が寝てる間に何かしらの方法で補充してくれたんだろう。


 どっちかというと敵意しか向けられていなかったし、印象が悪いままそこから関わってなかったわけだから俺の中でのあいつは嫌な奴って認識だ。

 けど、約束はしっかりと守ってくれるあたり、あいつも……スティーヴ・ニュートラルと言う元冒険者も悪い奴ではないのかもしれない。


「さぁ。約束通りすぐにでも街から出て行ってもらおうか」


 2日後の昼ごろ、スティーヴは秘書を連れて俺たちを迎えに来た。

 朝早くに出て行けだとか言われるだろうと思い込んでいた俺たちはとうの昔に身支度を終えて準備が万端で、むしろ準備万端な状態で待ちすぎて疲れていた。


 屋敷を取り囲む人工林を抜けると大きめの車が止められていて、俺たちはそれに乗ってスティーヴの秘書の運転で街の入り口へと向かった。


 車窓を流れる景色は故郷オリジンとは違って単一色で、見ても見ても面白みのない寂しい景色だった。

 もし、この個々での差異のない巨大建造物群がスティーヴの言う旧時代……西暦の時代の生活によって生まれた産物なのだとしたら、かつての世界もこの街と同じような様相だったんだろうか。

 そうだとしたら、西暦の時代は俺たちが思っているよりもずっと退屈で窮屈で、生きる尊厳なんて存在しない世界で、物語よりも奇怪極まりないものだったんじゃないか?


 考えただけで体が小さく震えた。




「さぁ。早く塀をくぐれ。そして街から出ろ」


 強い調子で促してくるスティーヴに、俺たちは少しだけイラついたけど反発することはなかった。

 なにせ、言い草はひどいがこの2日の宿や食事をしっかりと提供してくれたわけで、そのおかげもあって俺たちは十分に体力を回復することができた。

 だからイラつきはしたものの感謝の念の方が押し勝ち、反発はしなかった。


 ただ、皆が皆、煮え切らない感情を胸中に抱いているのは確かで、それぞれが複雑な形容しがたい感情を表情ににじませながら、レオ、カレン、ポーラと順に塀をくぐっていく。


 4人のうち、最後に取り残された俺は街を出て行く前に聞きたいことがあってスティーヴに顔を向けた。


「何してる。お前も早く出ろ」


 そういう約束だろとスティーヴは急かしてくる。

 確かにそういう約束だった。けど、せめてあの事についてだけは聞きたかった。

 あの写真の事についてだけは。


「一つ、聞いてもいいか?」


「……何をだ」


「お前、冒険者だったのか」


 ピクリと、スティーヴの片眉が動くのがわかった。

 ビンゴだと、俺は心の中でガッツポーズをした。


「見たのか」


 多分、あの部屋を見たのかってことか写真を見たのかってことだろう。


「ああ。見た」


「なら隠す必要はないな。そうだ、俺は元冒険者だ」


 それがどうしたと聞いてくるスティーヴに、俺は幾つかある可能性の中で一番高くなった可能性の話を投げかける。


「あの女の子が原因だな?」


「……何のだ」


「お前がこの街に固執することのだ」


「だとしたら何だ」


 お前には何の関係もないだろう?

 そんな感じの態度でスティーヴは威圧的に俺を睨みつけてくる。


「教えてくれよ。何があってお前がこの街に固執するようになったのか」


「ダメだ」


「っ! それはどうしてだ?」


「理由はない。ただ、教える理由もない」


 教えない理油はないけど、教える理由もないだろうと言い放つスティーヴ。

 確かに、そう言われたら俺は否定できない。

 話すか話さないかの決定権はスティーヴにあるわけだからな。


「何してんだよケイタ。早く来い」


 スティーヴに睨みを返しながら歯嚙みをする俺に、塀の向こう側にいるレオが声をかけてくる。

 そのレオを指差しながら、スティーヴは「お前の仲間が待ってるぞ」と言った。

 どうしようもなく、俺は仕方なしにレオたちが待つ塀の向こうに向け、歩を進めた。


 次の瞬間、背後からものすごい力で肩を掴まれた。

 あまりの痛さに驚きながら振り向くと、俺の肩を掴んだのはスティーヴだった。


「一つ、いいことを教えておいてやる」


「あ? 何がだよ」


「お前の想像通り、俺がこの街を守るのはあの写真が理由だ。そして……」


 他の誰にも聞かれないようにと、スティーヴは顔を寄せてきて耳打ちで言った。


「あの写真こそが、俺が勇者ルールを嫌う理由だ」


 それだけ言うと、今度こそ出て行けと俺の背中を強めに押した。


 スティーヴに対して聞きたいことが増えたわけだが、これ以上レオたちを待たせるわけにはいかない。

 今度こそ、スティーヴと彼の街、そして彼のひしょを背に俺は黒色の塀をくぐった。


 塀の外側である街の外に出るなり、扉はすぐに閉じられた。

 今に始まったことじゃないけど随分と手酷い扱いだな。

 門番も気まずそうにそっぽ向いてるし。


 つーか、門番は俺たちに優しかったよな。

 あれはなんでだ?


「何してたんだ?」


 門番を見て首をかしげる俺にレオが聞く。


「いや、ちょっとスティーヴと話をしてた」


「ふーん。まぁそれよりも、人を待たせてんだからとりあえず謝れよ」


 人って誰だよ。

 そう思いながら振り向くと、仲間レオたちの後ろには候補勇者の衣装を身につけた見知らぬ4人の男女がいた。

 

 身長がレオよりも高い眼鏡をかけた短髪黒髪の少年。いや、青年か?

 対照的にかなり背が低く、ポーラとさほど変わらない背丈の黒髪ツインテールの少女。

 目が隠れるほどの長い前髪が特徴的な中肉中背の少年。

 女性にしては背が高く、目の下に濃いクマがあるのが特徴的な茶髪の巨乳なお姉さん。


 その4人がレオたちの後ろに立って俺を見つめてきている。

 レオが待たせてるって言ってたのはこいつらのことだろう。


 うーん。いや、マジで誰?


 てか、4人とも腰に長剣を据えてるし肩には掛け紐のついた銃をかけてるし、なんか候補勇者ってよりは冒険者って感じの風貌だな。


「いや、誰?」


「スティーヴが用意してくれた他の候補勇者よ」


 あー。なるほどね。


「えーっと、待たせてごめん」


「気にしなくていいよ。これからは仲間なんだし、もっと気楽にいこう」


 眼鏡をかけた短髪黒髪の青年が柔和な笑みを浮かべながら馴れ馴れしく声をかけてくる。

 よくわかんないけど、俺はこいつの事が少し苦手だ。


「よし、じゃあ改めて自己紹介をしようか!」


 短髪の青年が勝手に場を仕切り出す。

 なんか、これじゃあまるで俺たちがアイツらの候補勇者チームに吸収されたみたいだし、俺たち8人のリーダーがこの短髪の青年みたいだな。


「僕……あ、いや、俺はニコラウス。ニコラって呼んでほしいな」


 なるほどね。短髪のへらへらした馴れ馴れしいきっしょいヤツがあニコラウスね。

 絶対にニコラなんて馴れ馴れしく呼んでやらねぇよ。 


「あ、わ、私はホノカ。この4人の勇者役をやってるの」


 ツインテールがホノカね。こいつ、少しだけカレンに似てるな。

 てことはコイツも大元を辿ったら俺たちと同郷って感じか。


「……バク。以上」


 前髪がめっちゃ長い男がバクね。

 なんか、ニコラウスも苦手だけどこいつも苦手だな。

 すっごい既視感があるし本能的な嫌悪感がある。

 ……キャラ被りしてない?


「キャロル。治療師ヒーラーよ」


 わーお。巨乳のお姉さんがキャロルね。

 なんつーか、カレンともポーラとも違うタイプだな。

 まぁ、仕方ないか。だってカレンもポーラも貧……


「あ! ちょっと失礼なこと考えてない!?」


 突然のカレンの声にびっくりした。

 もしかしたらまた考えてたことが口に出てたかもと思ってカレンを見ると、カレンはレオの頬をつねりながら少しだけ怒った様子で問い詰めていた。


「あ? 何の話だっての」


「あんた、私の胸が貧相とか思ってたでしょ! ちらちらと見比べて! 気づいてるんだからね!」


 はいはい。仲がいいですね。

 イチャイチャは他所でやってくれ。



 俺たち4人も自己紹介を済ませたところで、とりあえず次の街を目指して歩こうという話になった。

 次の街は俺たちの目的とする楔国トリガーだ。


 楔国トリガー米国基幹都市ラスベガスの遥か西に位置する国だ。

 位置的には米国領土の中に存在しているが、国としては米国に属しておらず、独立した特別な立場の国として運営されているらしい。


「なぁ、ニコラ。楔国トリガーって行くまでにどのくらいかかるんだ?」


 森に入って少ししてから、レオがそういえばといった様子で言った。

 それにしても、レオは早速ニコラウスのことをニコラとか呼んでんのかよ。

 こんなよくわからないヤツのことを。


「うーん。そうだね。森を出てから丸々10日で着けたら早い方って感じかな」


「そんなにかかるのかよ」


「大丈夫。これだけ仲間がいるんだから退屈はしないよ」


 そして、西を目指して歩き始めて2時間ほど経った頃、俺たちは魔物に遭遇した。

 遭遇した魔物はなんてことないゴブリンだ。

 ただ、数が少しばかり多かった。


 森の中の小さく開けた場所で、寝転がったり、空を眺めたり、じゃれあったりと、思い思いの行動をとる無数のゴブリンたち。

 その数は、


「137だな」


 だそうだ。

 流石はレオだな。仕事が早い。


「うん。じゃあちょうどいいね」


 ゴブリンの数を聞き、ニコラウスは頷きながら仲間たちに目配せをした。

 その目配せにホノカ、バク、キャロルは頷きを返す。


「せっかくだから、僕……あ、俺たちの自己紹介の続きをさせてもらうよ」


「どういうこと?」


「僕たちを知ってもらうために僕たちの戦いを見せるってことだよ」


キャラが増えましたね!

安心してください!減らします!

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