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世界再編と犠牲の勇者譚  作者: 人生依存
或る魔法使いの物語 第4章 LasVegas編

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第44話:交渉の真実


 好きなだけ飲み食いをしたレオは俯く俺を見て「よっし!」とわざとらしく大きな声でいい、勢い良く立ち上がった。

 そして、2段ベッドの下段に立てかけてある2本の長剣のうち、よく使っている支給品の方のを手にとって俺に言った。


「じゃあ、お前が望むとおり戦い方を教えてやる。外に出るぞ」


「……」


「ほら。行くぞ」


 早くしろと、相変わらず俯いたままの俺の方をレオが軽く叩いてくる。


「……わかった」


 少し前まで「戦い方を教えてくれ」「強くなる方法を教えてくれ」なんて騒いでた俺は渋々立ち上がり、同じように下段に立てかけてあった支給品の短剣を手にとってレオの後についていく。


「なぁ。俺とケイタは外行くけどお前らはどうする?」


 カレンとポーラの部屋の扉をノックしてレオが確認すると、中から「勝手にすればいいじゃない」と少しだけ怒った調子のカレンの声が返ってきた。


「あいつまだ怒ってんのかよ」


 口を尖らせながら、レオが玄関の扉に手をかける。

 が、扉が開く様子はない。


「……あれ?」


 おかしいなと口にしながら、確認をするように何度もなんども取っ手を掴んでガチャガチャと扉を押したり引いたりするレオ。

 けど、そんなレオの行動が無意味だとでも言うように、扉は固く閉じたまま開く気配がなかった。


「何してんだよ。鍵開ければいいだろ」


「いや、違ぇ」


「何が違うんだ」


「この扉、鍵がついてねぇんだ」


「…………は?」


 レオに言われて見てみると、確かに扉のどこにも鍵らしきものが付いていなかった。

 じゃあ鍵を差し込んで施錠解錠するタイプの扉なのかと思ったがそうでもないようだ。

 鍵はおろか、鍵穴すら見つからない。


「……どういうことだよ」


「んなもん俺が知るかよ」


 いや、お前そこでつっかかってくんなよ。意味ないだろ。


「っ! 窓は!」


 一つもしかしたらと思うことがあり、俺は慌てて一番近くの窓のある部屋に駆け込んだ。

 そして、そのまま窓に駆け寄って窓を開けようと試みる。

 

 けど……


「おいケイタ。どうしたんだ」


 俺の後を追って部屋に入ってくるレオ。

 その顔には疑問の色が浮かんでいた。


「……ハメられたかもしれない」


「どういうことだ」


 自分で見てみろという意味を込めて、俺は親指で背にある窓を指差す。

 幸い、レオは俺の意図をすぐに汲み取ってくれた。


「なんだよ……これ」


 窓を見てレオが声を震わせる。


「見たまんまだ」


 俺は‘もしかしたら’の話を確認するために窓のある部屋に入ったわけだ。

 その行動は窓を確認するためのものなわけで、目的を果たすためにも俺は窓を開けようとした。

 もしかしたら、窓も扉と同じように内側からは開けないように施錠されてるんじゃないかと思ったからだ。


 案の定、窓を開けることはできなかった。

 理由は施錠されているなんてものじゃない。


「窓がはめ込み式になってる」


 そう。窓が開かなかったのは鍵をかけられていたとかそういう理由じゃなく、窓自体が最初から開けられない設計で取り付けられていたことが理由だった。

 壁にはめ込むように、もしくは埋め込むように窓が取り付けられていて、窓を開けるための器具は何一つとして付いてない。

 簡単に言うと、ただのガラスの板が窓として壁に貼り付けられていたというわけだ。


 別にそういう方式スタイルの窓が珍しいわけじゃあない。

 どこの家にも1つはある窓だ。

 ただ陽の光を屋内に招き入れるためだけの窓。

 開けて屋内に風を招き入れることは目的としておらず、ただ光を通すことだけを目的とした窓。


 俺たちが確認をするために入った部屋に取り付けられていたのは、そんなタイプの窓だった。

 いわゆる嵌め殺しというやつだ。


「他の部屋は!」


 そう言いながら、レオが慌てた様子で部屋を出て行く。

 すぐ後に階段を駆け上るような音が聞こえてきたから多分レオは2階に向かったんだろう。


 とりあえず1階にある他の部屋の確認をしようと思い、鍵の空いている部屋をリビングと風呂場を含めて順に巡っていく。


 そして、すべての部屋の窓の確認を終えたところで自分の部屋へと戻っていくと、息を切らせたレオがソファでぐったりとしていた。


「1階の部屋は全部‘そう’だった」


「2階もだ」


 ため息をこぼしながらレオが言う。


「カレン達の部屋は確認したか?」


「ああ。あいつはまだ怒ってたけど窓だけは確認してくれた」


「……そうか」


 これで確定してしまった。

 この家には内側からは開けられない玄関の扉と嵌め殺しの窓しかなく、中に入った人間が自分で外に出られないようになっている。

 まるで軟禁状態だ。


「まるで軟禁状態だな」


「今更気付いたの?」


 思っていたことが口に出てしまった俺だが、そんな俺の言葉を拾ったカレンの声が、扉の前に立つ俺の後ろから聞こえてきた。

 振り向くと、俺のすぐ後ろに機嫌の悪そうなカレンとオドオドした様子のポーラが立っていた。


「ハッ! 今更ってなんだよ。まるでお前は気づいてたみたいな言い方だな」


「ええ。気づいてたわ。レオと違って単純じゃないもの」


「あ?」


 互いに睨み合い、今にも取っ組み合いを始めそうな2人。

 まぁ、カレンのすぐ前で俺が部屋の入り口を塞いでるわけだから、もしもの時は2人を止めることができる。大丈夫だ。


「レオは少し落ち着け。それよりもカレン。お前、全部知ってたのか?」


「ええそうよ。気づいてたんじゃなくて知ってたの」


「だそうだ」


 レオに目線を向けて「話を聞かないか?」と念を送る。

 すると、俺の念が届いたのかはわからないけどレオが小さくため息をついて「わぁーったよ」と表情を柔らかくした。


 俺とポーラが2段ベッドの下段に腰掛け、カレンがレオと向かい合うようにソファに座る。

 よくわからないけど自然な流れでそんな配置になった。


「で、知ってたってどういうことだ?」


 教えてくれよと、レオが不足していた言葉を付け足すと、カレンは満足げにうなずいて語り出した。


「最初からこうなることを分かった上で話を進めていたのよ」


「と、言うと?」


「あの人の性格を考えると、絶対に私たちを街と接触させたくなかったはずなの」


 正確には街の民だろ? と指摘すると、カレンは無言で頷いた。


「だから、滞在をお願いしたら絶対に断るはずだったのよ」


「でもあいつは受け入れた」


 頬杖をつきながら、レオが促されるままに言う。


「ええ。だからこそ私は確信できたのよ。あの人は私たちをより確実に街の人から隔離しようとしてるんだって」


「すまん。もっとわかりやすく言ってくれ」


「自分の管理下で幽閉したほうがより確実に街の民と俺たちを離すことができて、関わらないようにすることができるって話だ」


 頭を抱えるレオに水を差すと、レオはそういうことかと素直にうなずいた。


「レオは疑問に思わなかったの?」


「何がだよ」


「どうして食べ物とかまで提供してくれるって言ったのか」


「いや、それは俺たちが候補勇者だからだろ?」


 当然じゃねぇかといった様子のレオに、俺とカレンは思わずため息がこぼれる。


「いやいやいや。俺たちが候補勇者だからこそ、勇者ルールを毛嫌いしている人間なら何も与えたくないって思うもんだろ」


 指摘すると、レオはハッとした様子で俺のことを見てきた。

 いや、嘘だろ? まさかこんくらい想像できなかったとか言わねぇよな?

 まぁ俺も屋敷に閉じ込められたって気づいてから想像できた話なんだけどな。


「けど、あの人は私たちに危害を加えることはないわ」


「もう加えられてるだろ」


「これはぜんぜん危害じゃないわよ」


「そうだぞ。あいつの話が正しければ食事と就寝場所は間違いなく提供されるんだ。金もかからねぇしどっちかというと俺たちにとっては危害じゃなくて良い事だろ」


「あー。そうか」


「だからこの家に閉じ込められたからって焦る必要はないの。大人しく明後日の朝まで待てば良いのよ。そしたらこの家からも出れるし仲間も増える」


「それまでの間に体力を回復できるしな」


「そういう事」


 やるじゃんとカレンが俺を見ながら言ってくる。

 多分だけど、レオが理解できていない事を俺が理解できてたから「やるじゃん」とか言ってきたんだろ。

 はいはい。どーもどーも。


「あーあ。じゃあ結局ケイタに戦い方を教えれねぇのか」


「なんだよ。結局お前も体を動かしたかったのかよ」


「そりゃあさ、ここ最近は戦い続きだったわけだから丸一日ちかく体を動かさないとなんか罪悪感が沸くじゃねぇかよ。だから少しぐらいは体を動かしたかったんだ」


 じゃあなんでお前最初の方は渋ってたんだ?


「何その話」


 興味を持ったカレンが話に首を突っ込んでくる。


「あ? ケイタが強くなりたいから戦い方を教えてくれーって頼んできたんだよ」


「ふふっ。何それ」


 小さく笑いながらカレンは変なのとか言ってくる。

 悪かったな。変なので。


 そして、面白くないといった感じの表情をしている俺を見てなのか、レオとカレンが一瞬固まってから顔を見合わせてゲラゲラと笑い出した。


 何笑ってんだよ。失礼だぞお前ら。

 つーか俺を使って仲直りすんな。


「悪かったな」


 口を尖らせて見せ、拗ねるからなアピールをすると、隣に座るポーラがものすごく小さい声で、俺にしか聞こえないくらいのささやきレベルの声で、


「悪くなんてないですよ」


 そう言ってきた。


 思わずポーラの方に視線だけじゃなくて顔まで向けてしまい、そのせいなのか互いの視線が交差してしまう。

 近い距離で見つめ合う形になってしまい、どうしたら良いのかと俺の頭が少しだけ混乱をし始める。

 すると、微妙な表情でポーラを見つめる俺に、ポーラは恥ずかしそうに微笑みを返してきた。


 ウェーブがかった綺麗な金髪や整った顔立ちの影響なのか、ポーラの微笑みはやけに色っぽく、美しく見えた。

 いや、俺はこの時、素直にポーラが可愛いと思えた。


 頬が熱くなるのを感じ、俺は慌ててポーラから目を逸らした。


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