第38話:街の長
何というか、自分の中でのライトノベルの代表作の影響で、かなりそこに力いれるなよってところに文字を使っています。
匂いだとか匂いだとか匂いだとか。
まぁ、許してほしいです。
あと、できれば2章が終わったあたりから毎話あとがきで人物であったりとか用語であったりとかのデータベースを少しずつ公開していきたいなぁと思っています。
変に前置きをしてごめんなさい。以下より本編です。
街の中央にそびえ立つ他の建物とは比較にならないほどの超巨大建造物。
真四角な形をしているそれは、街の管理人である長やその部下たちが仕事をしている役場だ。
そう。俺たちは館へと案内すると言われたのに役場に案内されたのだ。
もう何が何だかって感じだ。
役場は高さだけで言えば塀よりも高く、面積で言えば巨大建造物と言っても過言ではない民家10棟分以上はあるんじゃないかと思われる。
ただ、正確な広さはわからない。
「いや、これはデカすぎだろ。どんくらいの広さなんだよ」
と、レオが言っていたぐらいなのだから、街の中央にある超巨大建造物の役場が異常な面積を占有し、異常な高さを誇っていることは確かだ。
大体の距離感だとか広さだとか大きさだとかを目視で正確に認識できるレオが「どのくらいだ」と言葉を零しているんだ。それほどまで規格外ということになる。
外面だけでも圧巻だった役場だが、中に入ると外装よりも奇怪な光景が広がっていて、俺たちは外で一度、中に入ってからもう一度圧巻されることになった。
街に入ってからカウントしたら3度目だな。
一粒で3度美味しいってやつか!やったね!
じゃなくて!
役場の内装は全面に鉄かコンクリートかよくわからないタイル状の物が貼られていて、外装と同様の黒色で統一されていた。
室内灯のような物は見当たらず、内装全体のタイルとタイルの隙間を青白い光が常に流れていることで室内の明かりは保たれていた。
「こちらへ」
街の入り口から案内してくれた門番に連れられ、役場の最上階にある会議室へと通された俺たち。
そこは会議室と呼ぶにはあまりに狭い空間で、入り口から見て手前側に四人掛けのソファが、それと向かい合うように一人掛けのソファがそれぞれ一つずつ置かれていて、その間にはガラス製の透明な正方形のテーブルが置かれていた。
見ると部屋の奥には木製の大きめなデスクが置かれていて、その上には尋常じゃない量の書類が積み重ねられている。
「この部屋、窓がねぇな」
ポツリとレオが言う。
その言葉で俺はハッとした。
この部屋は会議室なんかじゃないのだと気付いた。
「たぶん、長って人の仕事部屋だろ」
「だな」
俺の言葉にレオは簡単に頷いた。
「それじゃあ、長を呼んできますのでソファにお掛けになってお待ち下さい」
それだけ言うと、門番は一礼をして部屋から出て行った。
お言葉に甘え、俺たちはソファに四人並んで腰を下ろす。
左側から順にレオ、カレン、ポーラ、俺の順だ。
けど、問題が発生した……
いくら四人掛けのソファとはいえ、レオはガタイがいい。
それに四人掛けソファの四人掛けという許容人数なんて面積上は四人が座れるはずですよっていう制作会社の訴えかけでしかない。
だから実際には四人座るとぎゅうぎゅうになって結局は三人しか座れないのだ。
そう。俺たちは今、ものすごくぎゅうぎゅうな状態でソファに腰をかけている。
ぎゅうぎゅうな状態……
つまり、隣の人間とかなり密着した状態ということだ。
やばい。これはやばいぞ。
俺の隣はポーラだ。ポーラとものすごく密着していることになる。
さらに俺たちは街の中に入ってすぐにこの場所へと案内されたわけだから、風呂にも入れていない。臭いままだ。
けど、単純に汗臭いというわけじゃない。
もうそれすらも一周回って人間本来の匂いになってしまってる。
あれだ。フェロモンと言う奴だ。
果実の腐敗臭みたいって言ったら聞こえが悪いけど、とにかく本能的に良い匂いと感じる甘い匂いがポーラからする。
身長の都合で俺の鼻の位置あたりの高さにポーラの頭があるのも関係するのか、ポーラの頭から女の子らしい香りがする。
ダメだ。このままじゃあダメだ。何かわからないけどダメなきがする。
てか、俺もう変態じゃんこんなの。
チラリとレオを見る。
これだけぎゅうぎゅうで詰めて座っているんだから、いつものレオなら「狭から詰めろよケイタ」とか言ってくるはずだ。
そしたら俺はごくごく自然な流れで立ち上がり、ポーラの柔らかさと匂いの呪縛から解き放たれる事ができる。
だからほら。レオ。俺に文句を言え! 悪態を吐くんだ!
頼むから俺に文句を言えと念じながらレオにアイコンタクトをしてみたものの、レオはその顔に不満の表情を1ミリたりとも浮かべていない。
それどころか、カレンと楽しそうに談笑している。
くっそ。こいつこういう時ばっかり性格が穏やかになりやがって。
つーか、お前やっぱりカレンと仲良しだな。
カレンに対する態度が俺に対する態度と比べて随分と優しいじゃねぇかよ。
とにかく、自然な逃げ道は潰されてしまった。
こうなったら多少不自然でも行動に出るしかないか。
よし!
たぶん冷たい視線を向けられるんだろうなと思いながらも俺は立ち上がり、なんてことない顔でソファの脇に立った。
すると、そんな俺の行動を見てレオが刺すように言う。
「どうしたんだ?」
「いや、結構狭かったから俺が経てばお前らが楽に座れると思ったんだよ」
「そんな気遣いはいいから座れよ。長と話す時にお前の方が目線が上になって失礼だろ」
くっそ。コイツまじでこういう時だけ…!
けど、レオが言っている事は確かに正論で否定できない。
つーか、俺に悪態つかなかったのってカレンと話してて気分が良かったからじゃなくて、俺を立たせないために我慢してたってだけかよ。
あーもう。なんていうか、最悪じゃねぇかよ。
まぁ、魔物に殺されるよりは最悪じゃないんだけど。
「いや、まぁ…うん」
そうやって生返事を返すと、ポーラが不安そうな表情で上目遣いで俺を見てきた。
そして、上目遣いのままポーラは言う。
「えっと…その……私の隣、嫌…でしたか?」
ぐぅ…。やめろよそれ、何か気まずいじゃねぇかよ。
上目遣いも弱々しい声もやめてくれよ。
不安そうな顔で見つめてくるポーラに困った顔を返す俺。
そんな俺をカレンは睨み付けてくるし、レオは呆れた表情で見てくる。
もう、完全に退路は絶たれたようだ。
「その…ごめん」
尻すぼみで謝り、俺はポーラの隣に今一度座り直した。
なるべく鼻じゃなくて口で呼吸しよう。
ニシゾノケイタは決意した。
_________
5分ほど経ち、部屋の扉が静かに開かれた。
扉の開くわずかな音に、俺たちは部屋の入り口を思わず振り返る。
そこにはストライプの小洒落たスーツに身を包んだ30歳くらいの細身の男性が立っていた。
男性は黒髪をジェルワックスでオールバックに固めていて、左耳には蝶を象ったピアスをつけている。
理由は分からないけれど、俺はその男性に薄気味悪さを感じた。
男性は足音を立てる事なく俺たちの正面に移動し、立ったまま、座っている状態のレオに右手を差し出した。
「初めまして。私はスティーヴ。スティーヴ・ニュートラルだ。この街の長をしている」
名乗りを上げた男性…スティーヴに差し出された右手が挨拶ついでの握手を求めるものである事を俺たち候補勇者は皆が理解していた。
だからこそ、レオは立ち上がり、スティーヴの手を自身の右手で握った。
「初めまして。第35期の米国代表候補勇者、勇者役のレオ・ガラードです」
がっちりとレオに手を握られた事で、スティーヴもレオの手を握り返す。
そんなごく普通の光景に俺は違和感を感じた。
けど、その違和感が何物なのかはよく分からない。
「初めまして」
そう言いながら、スティーヴはカレンへと握手を求めた。
これはあれだな。全員と握手していく奴だ。
「初めまして。剣士役のコノエ・カレンです」
次いで、ポーラへと握手を求める。
「初めまして」
「は、初めまして。ポーラ・アクターです。役職は回復師です」
ポーラの名乗りを聞き、スティーヴは小さな声で「君が…」と呟いた。
無理もない。ポーラは米国国王の娘、つまりは王女様だ。
同じ米国の都市であるラスベガスの人間がポーラを知らないはずがない。
だからこそ、「君がそうなのか」と言う意味合いで声が漏れてしまうのは仕方がない。
当然の顛末だ。
「初めまして」
そう言葉を添えて差し出された手を握り、俺はスティーヴの目を見て自己紹介をした。
「初めまして。候補勇者のニシゾノ・ケイタです。役職は魔法使い…です」
全員の自己紹介を終えると、俺たちは再びソファに座った。スティーヴに促されたからだ。
秘書だというスーツ姿の初老の男性が人数分のコーヒーを持ってくると、スティーヴはコーヒーを一口だけ飲んで呼吸を整えた。
そして、長い足の太ももにおもむろに肘を置き、薄い唇の前で指を組むと「早速本題を話させていただく」と言葉を紡いだ。
「君たちにはすぐにでも街から出て行っていただきたい」
はい。今回はラスベガスの長であるスティーヴ・ニュートラルが初登場したわけです。
多分ですが、これ以上メインキャラクター増やすなよとか思っている方もいると思います。
安心してください。3話くらいあとでメインキャラが増えますが、スティーヴはメインキャラじゃないのですぐにお別れです。




