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世界再編と犠牲の勇者譚  作者: 人生依存
或る魔法使いの物語 第4章 LasVegas編

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第36話:微笑み

「シロはどこの出身なの?」


「…ひ……みつ」


「じゃあ、いつの候補勇者なんだ?」


「…忘……れた」


「その…どうやって戦うんですか?」


「……こう」


 真顔のまま、白は剣を振るようなジェスチャーをしてみせる。

 ぶんぶんと腕を振るのだが、その腕は細い。

 足も同じようにかなり細いのだけど、ちょっとした衝撃で折れてしまいそうだなと思った。


「武器は剣なのか?」


 そう聞くと、シロは腰に取り付けてあった短剣を鞘から抜き取り、俺たちに見せた。


「何だよ…これ」


 今まで見た事がないような短剣で、俺は思わず訝しむような声をこぼしてしまう。


「これ、カレンの奴に似てないか?」

 

 レオはカレンの片刃の長剣を指差す。


「確かに形は似てるけど、多分この剣は刀じゃないわ」


 へぇ。カレンの使ってる片刃の長剣って刀っていうのか。

 いい事聞いたな。

 まぁ、知識が増えたってだけでそれ以上何かがあるわけじゃないんだけど。


 カレンの言葉を借りるなら、シロの持っていた短剣の見た目は大まかには刀のそれだ。

 けど、大きく異なる事が多々有る。

 

 まずは長さだ。カレンの持つ刀の長さがカレンの背丈をはるかに超える長さであるのに対し、シロの持つ小さめの刀は…あ、小刀とでも呼ぼう。

 で、シロの小刀は俺の短剣よりも小さい。

 もうナイフと言ってもいいほどのサイズだ。

 しかもバランスが歪で、柄の部分が刃の部分とほとんど同じ長さでどちらも10センチほどに見える。


 さらに俺たちが首を傾げたのはそのサイズ感やバランスだけじゃない。

 小刀の様相にも首を傾げた。


 まず、小刀の柄の部分には刃部との境に近い位置に一つだけ小さな牡丹のような飾りが付いている。

 そして、刃部がかなり異様な容姿をしている。

 刃の中央に、柄の側から剣先にまでずらっと大きめの穴が並んで開けれられているのだ。

 異様としか言いようがない。

 だって、その存在意義がわからない穴がある事で剣の刃部はまるで骨組みを見ているようで耐久性を疑わずにはいられない。

 

 どうしてシロの小刀はそんな様相デザインをしているんだ?

 何か理由があるのか?


 皆が生唾を飲む中、俺の耳に確かに届いてきた。

 機械の駆動音みたいな音と、それに次ぐ形で歯車がかみ合わせを確認するように動くような音、そして、探り合っていた歯車が噛み合うような音が聞こえた。


 ウィーン、カチカチカチ、ガチッって感じだな。


 しかも、その音は確かにシロの小刀から聞こえてきていた。

 

 他の4人…いや、シロは知っているはずだから3人か。

 とにかく、他の奴らは音に気付いているのかと思って目だけを動かして様子を確認すると、全くもって気付いている様子は見られなかった。

 3人ともシロの小刀を見るのに一生懸命で、音なんて全くもって耳に入ってやいない。


 チラリとシロを見ると、シロは右手の人差し指を口の前にかざし、可愛らしい高い声で無感情に「しーっ」と言った。


 ……どういう事だよ。

 何か秘密にするべき事だったのか?


「……あと…これ…も」


 そう言いながら、シロは羽織っていたローブを捲って見せた。


「え、凄っ」


 捲ったローブの内側に取り付けられた無数のナイフを見て、俺は思わずテンションが上がった。

 

 だって仕方ないだろ?

 ローブの内側にそんなにナイフが取り付けてあるって、そんなん絶対投げて使うしかないだろうし、もしナイフを投げて戦うんだとしたらそれはめっちゃカッコイイじゃねぇかよ。

 

 いや〜。憧れるね。

 俺もいつかローブの内側に武器をたくさん取り付けたいね。

 それか投げナイフで戦いたいね。


「それ、どうやって使うんだ?」


 レオがナイフを指差して聞いた。


「……投げ…る?」


 ほらー!やっぱりそうじゃん!

 カッケェ!めっちゃカッケェ!

 スゲェよスゲェよ!



________



「じゃあそろそろ寝るか」


 2時間ほど話し続けたところでレオが言った。

 俺たちは特に否定する理由もなかったから頷いた。


「でもここは塀の外だから危険ね」


「じゃあ二人ずつ寝て残りの二人が監視するか。で、シロはまぁずっと寝てて大丈夫だ」


「そうねそれがいいわ」


「よし。ケイタとポーラはどう思う」


「あの…いいと思います」


「俺も賛成だ」


 じゃあ誰と誰をペアにしようかと俺たちが相談を始めると、シロは「別に…」と小さな声で言葉を切り出した。


「……安全…だ…から、みん…な……寝て…大…丈夫」


「どういう事だよ」


 シロの言葉の意味が気になって思わず聞いてしまった。

 だってそうだろ?

 安全だからみんな寝て大丈夫って、もし俺たちがみんな寝たらシロが寝れなくなるわけじゃないか。

 それとも、本当にシロのいうとおりに安全で、俺たち5人がみんな同時に睡眠をとる事が出来るっていうのか?


 ありえないだろ。

 ここは塀の外側だぞ。ましてや森のすぐ外側でもある。

 俺たちが焚き火をしているこの場所はいつ魔物の襲撃を受けてもおかしくはない場所だ。


「…え?」


 聞こえないからもう一度言えとでも言うように、シロは無表情のまま俺を見て首をかしげる。


「いや、『え?』じゃなくてさ、安全だからってどういう意味なんだよ」


 言葉を付け足して改めて聞き直すと、シロは眉をひそめて見せた。

 まるで、本当に俺の言っている事がよくわからないとでも言いたげだな。


「……いま…は……。ん」


 いや、「ん」って何だっつの。


「いや、んって何だっつの」


 また思っていた事が口に出た。

 すると、シロはより一層その綺麗な顔をしかめる。


「…うるさ……い」


 それだけ言うと再び焚き火に視線を戻し、黙り込んでしまった。

 何ていうか、出会ってから初めて感情的な部分を見た気がするな。


 人形みたいな見た目をしていて無表情だとはいえ、シロも人間なんだな。


「シロ。いいか?」


 と話しかけるレオをシロは無視する。

 けど、レオはそれを無言の行程だと受け取る。


「今は魔物が出ないっていう事か?」


「…そ」


 その言葉に、レオとカレン、ポーラまでもが騒ぎはじめる。


「今は出ないっていうと、時間的な問題か?」


「あり得るわね。でも、ここに来るまでに夜に魔物に遭遇する事はあったと思うけれど」


「じゃ、じゃあ塀のすぐ外側には魔物が出ないとかそういうのでしょうか」


「あり得る。どう思うケイタ」


 いや、だから何で一々俺に聞いてくるんだっつの。


「知らねぇよ。けど、シロが大丈夫っていうんなら大丈夫だろ。不安なら俺が見張りやるよ」


「お前が見張りやったって知れてるだろ」


「いや、見張りなんだから別に戦えるとか戦えないとか関係ないだろ」


「それでも不安だって言ってんだ」


 もうレオが何を言いたいのかわからねぇよ。

 なんて思っていると、シロが控えめに手を挙げた。


「…じゃ……わたし…も」


 言葉足らずだけど、多分私も見張りをやるって言ったんだろう。


「いやいやいや!シロに見張りをやってもらうわけにはいかねぇって!」


 だって、シロは俺たちの仲間っていうよりは客人に近いだろ?



 なーんてしたり顔で言っていたレオだけど、秒でと言う表現ができるほどすぐに眠りについた。

 本当こいつ何したいんだよ。


 当然、疲れがたまっている事でカレンとポーラもすぐに寝てしまった。


「寝なくていいのか?」


 焚き火の揺れる炎を眺めがら、何気なしにシロに聞く。


「……あなた…は?」


 シロも俺と同様に、じっと焚き火を眺めている。


「俺はまだ眠くないだけだ。眠くなったら寝るさ」


「…信じ……てる…の?」


「何を…いや、信じてるさ」


 何をだって言おうとしたけど、会話の流れ的に意味は絞れた。

 きっと、シロは自分の言葉を信じるのかと聞いてきたんだ。

 だから俺は短く信じていると返した。


「……どう…して?」


「疑う理由がないからだ」


「……そ」

 

 シロの素っ気ない返しを最後に俺たちは無言のまま焚き火の炎の揺らぎを眺め続けた。

 

 

 

 10分ほど経ち、突然シロが俺の方を見てきた。


「な、何だよ」


 少しだけドギマギしてテンパったような返しをする俺に、シロは相変わらずの無表情を向けてきた。

 ……いや、違う。

 よく見るとシロは少しだけ微笑んでいた。

 ほんの少しだけ口角が上がり、眠たそうな目が僅かに細められただけだけど、それがシロの微笑みなのだと俺は確かに理解できた。


「何で笑うんだよ」


 俺の言葉に、シロが少しだけ目を見開き、驚いたような表情になる。

 そして、すぐにまた顔に笑みを浮かべ直した。


「…おやすみ」


 ほとんど囁き同然のシロの声がこの時はやけにハッキリと聞こえた。


 こんな事、言っても信じてもらえないかもしれないけれど、この時に聞いたシロの声は幾重にも重なっていた。

 男の声にも女の声にも聞こえ、子供の声にも老人の声にも聞こえた。

 まるで何人もの人間がタイミングを完璧に合わせて同時に話したような、そんな感じの声だった。

 本当に…本当に不思議な感覚だった。


 そして、その不思議な感覚に動揺する俺にシロは相変わらず微笑んだまま「寝ていいよ」と言った。

 瞬間、シロの囁くような声に安心したのか俺は唐突な眠気に襲われ、抗う事も出来ずにあっという間に眠りに落ちてしまった。


 


 朝になり目がさめるとシロが姿を消していた。

 周りを見回すと三馬鹿が気持ちよさそうな顔で寝ていた。

 焚き火は土をかけて火消しの処理をされていた。


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