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世界再編と犠牲の勇者譚  作者: 人生依存
或る魔法使いの物語 幕間の章 後日譚編

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幕間の物語:新しい希望


 分かりきっているのに何をぐちぐち言っているのだとでも言いたげなウィークに、俺もロウも固まる。

 ロウに関しては、ポカンとした表情から直ぐに怒ったような表情になり、ウィークを睨みつけた。


「それはどういう意味ですか? 少なくとも、私が何度確認しても、2人の蘇生方法に違いは無かった筈です」


「ロウ。お前も疲れてんだろ。少しは休めよ」


「……はぁ? 貴方、何を言っているんですか? もう一度言いますよ? 2人の手順にも2人の使用した素材にも、相違はありませんでした」


「ハッ! 滅茶苦茶簡単な話じゃねぇかよ。こんな簡単な事にも目が行かないなんて、やっぱり少し休んだ方が良いぞ」


「貴方に何が____」


 きっとロウは、「貴方に何が分かるのですか」とでも言おうとしたのだろう。

 けれど、そんなロウの悪態はウィークの思いもよらない言葉で遮られた。


「差が無いなんて、見える部分だけでの判断だろ。アヤセ・ユウカの蘇生は、本当はあのバケモノじゃなくて、別の奴がやったんじゃないか?」


「「……は?」」


 余りにも突拍子もない話に、俺もロウも目が点になる。

 今までの話の根底を覆すような話に、理解が追いつかなくなる。

 だが、ロウは違ったようだ。


「…………確かに、その可能性は十分にあり得ますね。彼の交友関係や経歴は不明瞭な部分も多いですが、少なくとも、彼が徒党を組んでいた333革命未遂事件の生き残りたちの中には、特殊国家(エクストラ)出身の者も居ます」


「俺はあんまり科学とやらに詳しくは無いが、普通に考えて人の力の延長で人の蘇生ができるモノか? 正直、俺は無理だと思っている」


「……つまり?」


「つまり、アヤセ・ユウカの蘇生は人造人間(ホムンクルス)技術によるモノじゃなくて、魔法もしくは魔術によるモノじゃねぇかって話だ」


 ウィークのその言葉に、ロウは納得したように「確かに」と頷く。


「確かに、もしその話が本当なら、全く同じ手順を踏んだにも関わらずポーラ・アクターの蘇生が失敗した事も、納得ができます」


「だろ? 俺はそっちの方が可能性が高いと思っている。お前も映像越しで観ただろ、あの革命派のバケモノどもと、世界の構造に(ミズタニ・)気づいた男(ショウゴ)の戦闘。少なくとも、人の蘇生が出来そうな奴がひとり居ただろ。感だが、アイツがやったんじゃねぇか? アヤセ・ユウカの蘇生」


「なるほど。地底都市(アガルタ)のサルキュニュウムですか!」


「ああ。アイツだけ、革命派の中で際立って情報が少ない。けど、アイツはあの場で確かに魔法を使って見せていた。レイチェルもそれっぽい事をしていたが、サルキュニュウムのはレイチェルと比較しても異質だった。アイツ、かなり怪しいぞ」


 言われて、俺は思い出した。

 ミカド・リョウスケたちとミズタニ・ショウゴとのあの戦闘を。

 あの時、サルキュニュウムと呼ばれた少女は確かに魔法を使っていた。

 足場が崩れるのを止めて、元に戻して見せていた。

 部分的に時間を止めて部分的に時間を巻き戻していたとも見えるアレは、魔法以外の何物でもない。


「ロウ。ウィークの話が正しいものと仮定して、もう一回調べてもらう事はできるか?」


「わかりました。サルキュニュウムは公式で残っている情報が少ないですが、何とかして彼女の事を調べ、接触を図ってみます」


「ありがとう」


 礼を言うと、ロウは「気にしないでください」と少しだけ笑った。


「まぁ、アレはもう魔王なんだ。立ち回りは考えた方が良いぜ」


 ウィークは念のためだがなと、ロウに忠告する。


「ありがとうございます。ですが、ご安心ください。我々調停者(ロウ)は必要とあらば要人の暗殺も行います。隠密行動はどちらかと言えば得意分野ですし、必要とあれば我々は誰にでも為り、どこにでも入り込みます」


「そりゃ頼もしい事で」


 話は終わったとでも言うように、ウィークはさっさと部屋から出て行ってしまう。

 後を追うようにニコラウスとクトゥブも部屋を出て行き、皆に続いて「では私も」と部屋を出ていこうとするロウを呼び止める。

 ひとつだけ、ロウに聞いておかなければいけない事があったから。


「なぁ、ロウ。ロウはどうしてそこまで俺に協力してくれるんだ?」


 そう。これだけは聞いておきたかった。

 どうしてロウが寝る間も惜しんで俺に協力してくれるのか、どうして失敗の可能性が濃厚になった際、あそこまで悔しい顔をしてくれたのか、それだけは確認しておきたかった。


「それが真白様の願いだったからですよ」


 何てこと無い様子であっさりと言い、ロウもさっさと部屋から出て行ってしまった。

 残された言葉に、俺は暫くの間固まった。


 そして俺は、思考の整理が着いた所で部屋の隅から椅子を引っ張ってきて、ポーラの傍に座った。

 虚ろな目で天井を見上げて、半端に開けた口から涎をたらし、言葉としての形を持たない声を零し続けるポーラの隣に。


 今のポーラは以前のポーラの面影が無い。

 顔は同じはずなのに、以前のような美しさが無い。可愛らしさがない。

 そう感じてしまう自分の頃に、罪悪感を抱いてしまう。


 俺はポーラ・アクターという少女を愛している。

 けれど、今目の前にいるポーラは同じように愛する事が出来ずにいた。

 随分と都合が良く自分勝手なモノだと自分で思う。

 そんな自分の感性がどうしようもなく嫌に感じてしまう。


「なぁポーラ。俺、どうすれば良い?」


「ぁぁあ……ぁぅ」


 問いかけても、ポーラから答えは返ってこない。

 ポーラの姿を持つ誰かが、条件反射で声を返してくるだけ。

 もうずっとこうだ。ずっとずっと、俺の知っているポーラは帰ってこない。


 確かに、さっきの話で新しい希望は見えた。

 けれどその希望を掴むまで、ポーラは今のままだ。

 これ以上、元のポーラに戻る事は無い。状況が良くなることはない。

 


 その事実を痛感しながらまた時は流れ、季節は冬になった。



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