第27話:門出(2)
リビングに行くと、ケビンの言った通りみんなが待っていた。
「寝すぎだぞお前。今何時だと思ってんだ?」
「おはよう。ケイタ」
「えと…その。お、おはようございます」
呆れたように言うレオ。
小さく微笑みながら言うカレン。
頬を赤くし、俺から目を逸らしながら言うポーラ。
その3人に俺は言葉を返す。
「おはよう。待たせたな」
が、俺の言葉に反応をしたのは3人の誰でもなかった。
「構わん。無事ならそれでよい」
リビングで椅子に座ってコーヒーを飲むジャージにパーカー姿の国王が反応した。
いや、つーかそれ絶対ウチのコーヒーだろ。
マグカップも俺がよく使ってるやつだし。
リビングのテーブルに添えるように置いてある4つの椅子には、俺から見て手前の右手に国王、それと向かい合うようにポーラ、ポーラの左側にカレン、カレンと向かい合う形で右手の奥側にレオが座っている。
そして、国王のすぐ後ろにケビンが、候補勇者3人のすぐ後ろにはそれぞれの付き人が立っている。
「おっさん。ここには俺たちしか居ないんだし作る必要はねぇぜ?」
「ケビン。そんな言い方はないのでは? 言うならそう…そんなみっともない格好してるんだし、作ったって格好はつかないぞ? とかの方が…」
「ヒシギ。あなたの方が酷い事を言ってるわよ」
ケビンのボケにボケをかぶせるヒシギ。
そんな二人に溜め息を零すアリス。
「全員静かにしろ。国王が本題に入りたそうな顔してるぞ」
少しだけ怒ったような口調でジョージが3人を制止する。
「本当にみんな居るじゃねぇかよ」
「だから言ったろ?」
やれやれと、アメリカンなリアクションを取りながらケビンが入ってくる。
ここは米国だけどな。
「じゃあ話をするからここに座ってくれ」
国王は立ち上がると、自分の座っていた椅子を俺に差し出してきた。
他に椅子がないから仕方なしに国王が少し前まで座っていた椅子に座った。
めっちゃあったかいじゃんか。
国王のぬくもりを感じ、少しだけテンションが下がったところで国王は咳払いをした。
「まず、昨日の出来事についての話をさせてもらう」
「革命未遂事件について…か?」
レオの言葉に、国王は少しだけ驚いたような顔になる。
「勘がいいな。そこまで気づいているのか」
「俺も馬鹿じゃねぇからな」
得意げに言ったけどさ、本当に馬鹿じゃない奴は自分の事を馬鹿じゃないとは言わないもんだぜ?
自分が聡明だと思っている奴に限って馬鹿なんだよ。
まぁ俺は違うけどな。
「だがまぁ、念のため順を追って話をしていく。まず、昨日の門出の儀の際に魔族による襲撃があった。これはみんな知っているな?」
俺たちは付き人合わせて全員が静かに頷いた。
「うむ。そして、襲撃の直後にケビンから魔王軍の襲撃の可能性があるとの報告があった」
「まぁ、武装した魔族を見かけた時点で疑うよな」
「だそうだ。そして、ケビンからの報告とほぼ同時刻に、連絡係を担当しているジョージの元に7カ国からの救援を要請する連絡があった」
「国王のおっしゃる通り、自分の元に7つの国々から助けて欲しいという旨の連絡が届いた。うち3つは職務用の連絡網ではなく個人的な連絡網を使用しての物だった事から、それほどまでに急いでいた、もしくは焦っていたと考えるのが妥当だと」
「で、救援要請の連絡があった国とそれらの国からの連絡の内容は?」
「救援要請の連絡があった国はロシア、倭国、インド、イギリス、マレーシア、朝鮮連合国です。連絡の内容はどこも似たようなもので…いや、聞いてもらったほうが早いだろう」
ジョージの言葉遣いはなんだか不自然だな。
敬語にしようとするけどうまく気を遣い切れていないって感じだ。
ジョージは着ていたスーツの胸ポケットから携帯式通信端末を取り出し……
…は?! 携帯式通信端末?!
それって、皇帝期以前の西暦の時代のものだろ?!
実物初めて見たぞ。
ぱっと見は銀色の薄い鉄の板にガラス板を貼り付けたみたいな見た目だけど、あんなんで連絡とか取れるのかよ。
うわっ。それよりもうわー。すげぇ。うわぁ。
初めて見る人類の遥か過去の遺物に俺は静かにテンションを上げた。
ガラス面を指先で触り、「うむ」とわざとらしく頷くと、ジョージはガラス面を俺たちへ見せるように向けた。
『こちら朝鮮連合国。門出の儀が魔族の襲撃により中断となった。魔族は武装をしており、ウィーク・ドミネーターを名乗る小鬼が魔族を統率。ウィークと名乗った個体はしきりに魔王の名を口に出しており、その事実から今回の襲撃がただの魔族によるものではなく魔王軍によるものであると推測される。繰り返す。今回の襲撃は魔王軍による襲撃である。大至急、応援を求む。繰り返す。我々朝鮮連合国は魔王軍による襲撃を受けている。大至急応援を求む。救援を求む。ああぁクソ。頼む。早くしてくれ。そうじゃないとこの国は−」
携帯式通信端末から流れ出た音声はよく分からない本能的に嫌悪を感じる音でところどころが遮られていて、最後は中途半端な位置で止まった。
「なんだよ。ノイズが酷いな」
「仕方がないだろう。今の時代、電波などまともなものは残っていない」
「まぁな。それよりも朝鮮連合国か」
「信頼できる相手だろ?」
「まぁ連絡よこした奴らの中では一番信頼できるな」
この場にいる俺たちを置き去りに、ケビンとジョージが二人だけで会話を進めて行く。
「つーかお前、6つしか国の名前出さなかったな?」
「…ああ」
「どうしてだ?」
「それは……分からないからだ」
「と、言うと?」
「ひとつだけ、どこの国からの連絡かわからないものがあった」
「へー。誰からかも分からなかったのか?」
「…ああ」
「なるほどね。じゃあそっちも聞かせてくれよ」
「……わかった」
ジョージは再びガラス面を指先で触り、何かをした後に俺たちへとガラス面を向けた。
『あ。あ、あー。聞こ るか? 俺は今、 から通信を ばし いる。俺の名 は 。今、ゴブ ンが こに 入して た。そこ で』
途切れ途切れの音声はそこで止まった。
「えー。これ救援じゃなくね? これを救援にカウントしたの?」
「む? 違うのか?」
「違うでしょ。あーヤダヤダ。これだからゴリラは」
「ゴリラじゃない」
「うおっほん!」
国王が咳払いをして二人を静止させる。
なんていうか、情報量が多すぎて何も頭に入ってこなかった。
「すいません。要点だけお願いしていいですか?」
カレンが挙手をしながら言う。
多分、カレンも俺と同じで話を理解できなかったんだな。
まぁ仕方ねぇよ。うん。不必要な情報も多かったし。
だが、カレンの言葉に国王は困ったような顔になる。
「え〜っと、まだ本題は話せてないんだけど?」
自慢の髭をいじりながら気まずそうに言う国王。
…あれ? まだ本題に入ってないって、そうだっけ?
「かなり話は脱線したが、ご覧の通り幾つかの国からの救援要請が襲撃直後にあった。そして昨日の晩になり、今回の襲撃が特定の国家だけでなく全国家へと行われたものだということが判明した」
「判明ってどうやって?」
ケビンの質問に国王が嫌そうな顔をする。本当、心底嫌そうな顔だ。
国王の気持ちがわからないわけでもない。ここでケビンの問いに答えてしまえばまた話が脱線することになるだろうからな。
国王の顔を見て、ケビンは「答えなくていいっす」と付け加える。
「まぁ、過程はどうあれ、昨日の門出の儀の襲撃がすべての国々に対して行われたものであることが判明した。そしてさらに、それらすべての国々で魔王軍幹部を自称する魔物が現れた。そのほとんどはウィーク・ドミネーターを名乗る小鬼だったが、他にもピース・ライアーを名乗る大型の竜種や、サルキュニュウムを名乗る機巧人形の姿なども確認されている」
「なんかドラクエみてぇだな」
「「「いい加減静かにしろ!」」」
ヤジを飛ばすケビンに今度は他の付き人3人が怒鳴った。
ケビンは口笛を吹いて知らんぷりだ。
初めて見る自分の付き人の様子にレオとカレンはびっくりしてるし、ポーラなんてさっきから「どら…くえ?」とか言って首をかしげてる。
てか、ポーラはそこに食いつくのか。
「アリス。あとでケビン君にお仕置きね」
「縛って捨ててきます」
「うむ。よろしく」
いや、よろしくって…。
「本題に戻るが、昨日の襲撃は魔王軍による全世界同時多発襲撃事件であることが判明した。その襲撃の目的はまだ判明していないが、大方前回と同じようなものだろう。よって、今回の魔王軍による襲撃の名称を第二次革命未遂事件とする」
今度はレオが挙手をした。
「前回と同じっつーとどんな目的なんだ?」
「今度こそ世界を完全に再編しよう。それが奴ら魔王軍の目的だ」
その言葉に俺たち候補勇者4人は皆、生唾を飲み込んだ。
再編。
それはかつて人類史が壊滅するきっかけになった出来事だ。
神から人類へ向けての天撃と呼ばれる突然の大規模攻撃。天撃に便乗した魔王軍の人類蹂躙。
それらを総称して再編と呼ぶ。
……ん? 完全な再編ってなんだ?
あと2話で一区切りつきます(キリッ!)
みたいなこと言ってごめんなさいでしタァァァ!
読む人が辛くないようにって分割したのと、あと、追加で伏線を張りたかったのが原因で、全然もうあと2話か3話くらい一区切りの位置までかかりそうです!
本当にごめんなさい!




