覇王ジャックの孫05
「「ウエポンズセレクト」」
結局、味方チームに接触することすらなく、最初の30分を終えてしまった。俺1人なら2、3チームは殲滅できていたはずなのに、こいつのおかげでせっかくのアサルトライフルが台無しだ。
「ぐあー!! また外れたー!! そしてまた1だぁ!!」
「うるせぇ、敵にバレたらどうするつもりだ」
「ごめんなさいぃ!!」
俺が小声で注意しても、ぷるぷる震えて涙目になりながら叫んでいた。これがジャックの主席とは、たいしたことないな。たとえどんな目が出ようと、持てる武器で最大の戦力を挙げるのが俺たちジャッカーだろうに。認めない、認めないぞ……こんな奴が覇王ジャックの孫だなんて、ほかでもないこの俺が認めるものか。
「なに出た……?」
「また4だな」
「君……運良すぎない?」
「お前にだけは言われたくないな」
「…………ごめんなさい」
たった30分ともに行動していただけだが、こいつの性格はだいたい掴めた。気紛れで人を巻き込むことを除けば、明るくていい奴でしかない。最初に俺を褒めたのも自然体で、俺が死んだらほかのコンビを探していいか聞いてきたのも、単純に疑問だったからでしかないのだろう。……やはり、俺の一番苦手なタイプだな。いい奴だとわかってしまったら、嫌味のひとつも吐けなくなる。そもそも遠回しに挑発したところで、こいつに通じるとはまったく思えないが。
「おい、いつまで座ってんだ? 武器の付与はもうされたぞ?」
「だってぇ……ナイフ一本だと心細いしぃ……。ジャックポット出たら本気出すからさぁ……」
「駄目だ。さっきの30分は全面的に俺がお前の方針に従ったんだ、今回は俺に服従してもらう」
「ええぇえぇぇ!?」
戦闘前は猪突猛進なタイプとばかり思っていたが、実際には真逆で臆病者だったらしい。ある意味これも酷いギャップだな。この戦いに、そんな感情は不要だというのに。
「お前、貴重な俺の4武を無駄にした自覚はないのか? 今回の4武も捨てろとでも言うつもりか?」
「そ、それは…………わかった、従う」
「次俺に逆らったら、真っ先にお前から撃ち殺してやるよ」
恣意的で無意味なフレンドリーファイアは、最低でもワンペナは喰らうだろうが、そんなの知ったことか。こいつが持つ所持コストと減らされる俺のコスト以上の点を、この俺が稼げばいいだけだ。