天使と悪魔の漫才コンビ05
「いつまで俺の視界に入っているつもりだ? この駄天使が」
「このたびは、誠に、真面目に、本当に、申し訳がございませんでした……」
気晴らしに飲み物を買いに部屋から出たら、あわあわと逃げ惑う天使が待ち構えていた。食堂で一時のコーヒータイム味わっている間にも、ずっと俺の背後で土下座をしているのがわずらわしく、ちょうどいい位置にあった頭を踏んでやっていたが、なんら態度が変わらなかった。
「おい駄天使、そんなところで遊んでないで、コーヒーのおかわりでももらってこい」
「は、はい!! 何杯でしょうか!!」
「1杯以外の選択肢がどこにある? 俺が飲み続けたくなったら、またお前がもらってくればいいだけだろうが」
「はい!! そうですね!! そうでした!! 行って参ります!!」
「10秒で持ってこい」
物理的に不可能な要求をされて震える天使だったが、3秒で立ち上がり、20秒かけてダッシュで帰ってきた。そして――俺の頭に向け、綺麗に熱々のコーヒーをこぼしてくれた。
「あっ……」
「…………お前、わざとやっているのか?」
「わわわわわざとじゃないです!! ごめんなさいすみませんあびばぶるべば!!」
最後のほうはなにを言っているのかわからなかったが、再び俺の前で土下座をし、どうぞとばかりに頭を差し出してきた。さっきとなにも変わっていないどころか、完全に状況が悪化している。
「それよりも、先にやることがあるんじゃないか?」
「え…………あ!! おかわり!! もらってきますね!!」
「違うだろ、よく考えろ」
「え、おかわりじゃ……ない? もう要らな……あぁ!!? お、お風呂!! お背中お流しいたします!! 悪魔様!!」
言われてようやく気付くのでは遅すぎる。それに、俺はタオルを要求したつもりだったのだが、どうやら背中まで流してくれるらしい。せっかくだ、ご相伴にあずかろうか。
「へぇ? 貴様、男湯に入る度胸はあるんだなぁ?」
「え……男湯!? むむむむ無理です恥ずかしくて死んでしまいます!!」
「そうか、無理か。ならいい、俺があがってくるまで、ずっとそこで土下座しているんだな」
「ははー!! かしこまりましたー!!」
ハズレを引いたのはわかりきっていたから、いまさら落胆することはなにもない。だが、それにしても酷すぎるペア相手だ。こんな劣等生は要望通り、2盾6面のダイスと一緒に末端卒と組ませておけばいいんだ。ジャンク主席の俺に押しつける必要は、まったくない。