ジャッカル唯一の問題児06
「あと1人!? あと1人で合ってるよね!?」
「え、なにいきなり? なんの話?」
「お風呂の話!!」
俺が風呂から出て早々、昨晩の肉娘がグイグイ顔を突きつけてきた。ぶっちゃけ流れを無視して告白してやってもよかったが、ほかに好きな女ができちまった以上、浮気するわけにはいかないか。
「あー……たしかに残りはタツキだけだな。それがどうした?」
「いつあがる!? もうすぐあがりそう!?」
「いや、あいつ長風呂好きだから、ギリギリまで出てこないと思うぞ」
ついさっきも俺に「出てけ」と睨みを利かせてきたばかりだし、まだまだ入り足りていないだろう。女子が入りたがってるからあがってやれと呼びに行くのは構わないが、あいつの性格上、風呂を譲ることは絶対にないであろうことはたしかだった。
「えー……そんなぁ…………って、いまタツキって言った? その子って、ジャッカルの子……で合ってるよね? たしか、三席? だったような……」
「そうだが? 知り合いか?」
「今日知り合った!! 君もジャッカルの子?」
「まぁな。俺はカツヒコ、ジャッカルの七席だ」
中途半端な席次のはずなのに、なぜか肉娘はおおげさなぐらいに目を輝かせていた。昨日初めて見た顔だが……どこの訓練所の奴だ? こんな席次で興奮するぐらいだから、末端の訓練所卒だろうか?
「おぉー! 君、不良っぽいのに頭良いんだねー!」
「急にディスってくるスタイルなの? ずいぶんな剛速球投げるのね? 別にいいけど」
「はぁ……あと30分も待たなきゃかぁ……」
「テンションの上がり下がりがわけわかんねぇなお前」
俺以上に気紛れの局地に至っているのか、初見ではこいつの喜怒哀楽の法則性がまるで掴めなかった。これは告白するのをやめておいて正解だったかもしれない。
「あ……そうだ、そんなに風呂入りたいなら、もうこっから先入る男はいないだろうから、タツキと一緒に入ってくれば?」
「え、いいの? 怒られない? 私逮捕されない?」
「知り合いならいいんじゃないか? 違う男が入って行かないように俺が男湯を見張っておくから、安心して入ってきていいぞ」
「おぉー!! 君良い人だね!! ありがと、あとでお礼するねー!!」
「はいよー、楽しんできてねー」
よし、これでタツキとこの子がくっついてくれれけば、失恋した優等生を俺が慰めてやることもできよう。さすがは俺っち、完璧な作戦だ。これは神童復活かな?
「あ、名前言うの忘れてた! 私、ジャック主席のアリサ! 明後日の試合で会ったらよろしくね!」
「あぁ……うん、よろしく」
こんな天才な俺でも、まさかアレが噂のジャックジャンキーだとは夢にも思わなかった。俺らの世代の代表格すら見破れないとなれば……こりゃ、復活したばかりの神童を返上しないといけないかな。
タツキ「はぁぁ……死ぬかと思った……頭が痛い」
カツヒコ「なんかあったの?」
タツキ「なんでもねぇよ……ってなんでもあったわ。おいカツヒコ、お前にちょっと話がある。歯ァ食いしばれ」
カツヒコ(これはどんなお楽しみをしてきたのか、大変興味深いですなぁ)