ジャッカル唯一の問題児03
――その、はずだった。彼が1人で敵コンビとの銃撃戦に無傷で圧勝するまでは、そう確信していた。
「ふんふふーんふふーんふーん」
「あなた……なぜそんな腕前を持っていて、七席などに座っていたんですか……?」
「え? だってうちジャッカルだよ? 座学がすべて、いくら実戦技術が優れていても、頭が悪ければジャンクや末端に島流しされるのがジャッカル。そのぐらい知ってるでしょ?」
知ってはいたが、ここまで徹底しているとは考えていなかった。最初からジャンク訓練所の私には、想像もつかない領域なのかもしれない。
「……もしも、ジャッカルにおいて座学の評価がゼロになり、実戦だけがすべてのジャックみたいになったとしたら、あなたが主席ですか……?」
「え? いやいや違う違う、そうなったとしても俺は次席だよ。主席はタツキ、ジャンクでも有名だろ? あいつ頑張り屋だからなー。それでも三席ってのが、ジャッカルの厳しいとこだよね」
「タツ……そ、そうでしたわね。ジャッカルにはあの方がいらっしゃいましたわね、失念しておりました」
そう、あの覇王ジャックを彷彿とさせるほどの戦闘センスを持つ、絶対無敵のジャックポッター――私が同世代で唯一憧れている殿方が、こんな男に劣っているわけがない。
「あぁでも、俺が銃撃戦で本気を出したときに限れば、タツキに負けたことはないけどね」
「え……?」
「あいつ俺に負けるとガチで悔しがって徹夜してまで訓練続けるからさぁ、バレないようにギリギリで手抜いて負けてやってるのよ。そうしないとあいつが過労で死んじゃうし、俺殺人犯になりたくないし」
嘘だ、フカシだ。20年に一度の才能とまで言われたジャック訓練所主席との直接対決すら渇望されているあのお方が、こんなふざけた男に劣っているわけがない。そんなこと、有り得ていいわけがない。
「でもたまにタツキが調子悪くて想定外の勝利貰うこともあるんだよね。だから気をつけて見てないといかんの……よぉ!? なになになに!? なぜ俺にナイフ突きつけたぁ!?」
「ジャンク次席、アンズ。これより決闘を申し込む。貴君、名を名乗れ」
「え……ジャッカル七席、カツヒコ……」
決して、許すわけにはいかなかった。いくら見栄を張りたいからと言って、私が尊敬するタツキ様をこんな虚言で侮辱するのは、ほかならぬこの私が許さない。
「私と決闘しろ――カツヒコッ!!」
こいつは私の手で、地の底を這いつくばらせてやる。