覇王ジャックの孫01
「うおおおぉぉー!! 凄いごちそう!! これ好きなの食べていいの!? タッパーに詰めて持ち帰ってもいい!?」
「あぁ、好きにしたまえ。なんたってこれは、前夜祭という名の、君たちへの卒業祝いだからな」
「やったー!!」
前夜祭の食事が豪華とは聞いていたけれど、これほどまでになんでもあるとは思わなかった。肉! 肉! 肉! どれがどこの部位なのかわからないけど、たぶん全部揃ってる!
「おぉー!! 拙者これ大好物でござるよ! お母さんとお父さんのお土産にしよーっと!」
「楽しんでくれているようで、なによりだ」
さすがは優しい王様が主催してくれたパーティーだ、これで満足しない人はいないだろう。いつか私も、自分の力でこんなごちそうを用意できるぐらい活躍するんだ。
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「なんなんですか国王、あの騒がしい野良犬は」
「おぉ、タツキか。あやつはアリサだよ」
「アリサ……」
どこかで、聞いたことがある。国王が知っていて、俺が顔を知らないとなると――ジャック訓練所の卒業生だろうか。うちの訓練所とは所長同士の仲が悪いせいで、ジャック訓練所とは対抗戦が一度もなかった。おかげで、今日初めて顔を合わせる者も多い。
「すみません、覚えてません」
「なら、ジャックジャンキー――と言ったほうが、わかりやすいかな?」
「ジャックジャンキー……あれが?」
「なにこの肉!? うまっ!!」
まだデビュー前なのにも関わらず、すでに異名を付けられている異例の新人――いったいどんな怪物なのかと想像に想像を重ねていたが、まさかこんな野良犬みたいに騒がしい女だったとはな。覇王ジャックの孫が聞いて呆れる。
「どうだ、仲良くできそうか?」
「無理ですね、意図的に遠ざけたいです」
「はっはっ、実は昔、小さいときに一度だけお前たちを会わせたことがあったんだが、お前はいまとまったく同じ反応をしていたよ」
「それは、そうでしょうね」
俺はジャッカル所長の頭脳戦略重視の考えに感銘を受けて入所したんだ。才能だけでやっているジャックの生徒と折り合いがつかないのも当然と言えよう。フリジディティーを尊ぶうちとは、真逆の存在だ。