1ー6.悪い事はしていない。ただ、反省はしている。
なんでこんなことになったのか・・・。
振り返って考えてみる。
冒険者登録をするために、指定された試験を受けた。
ゴリエルは参ったと言わせれば合格だと言った。
だから左フックをかました。
痙攣してぶっ倒れたのは向こうのせいではないだろうか。
・・・おれのせい?
まさか一撃でこうなるなんて・・・。
ーー3Fにある、ギルドの応接間らしき所に通されて
おれは暫くの間座って待っていた。
そして、俺とゴリエルの一部始終を見守っていた、
獣人の女の子、イヨも隣で座っている。
イヨは猫族の獣人で、今よく見るととても可愛らしい顔をしている。
状況がまだ掴めていないのか、耳をしゅんとしている。
暫くすると、入ってきたのは
シーナとドワーフの爺さんだった。
この爺さん、いかにもギルドマスターって感じだな。
シーナのエルフらしいすらっとした身体とは対照的に、
筋肉隆々で、身体中に無数の傷がある。
「お前がヴァンか。ゴリエルを一撃で失神させたのは。」
その爺さんは俺の事をじっと見たかと思うと、ニヤリと笑った。
何それ怖い。
「まず試験の結果としては合格じゃ。隣にいるイヨもな。
それについては安心せい。」
イヨはホッとしたのか、表情が少し柔らかくなった。
「ゴリエルの状態をみると、顔面に一発、相手が気絶する程度の
雷撃属性のスキルが発動された形跡がある。今までワシが
この属性スキルを見たのは今回が2回目じゃ。」
雷拳のことだな、と思った。様子見で打ったやつだが、まさか
あんなに綺麗に決まるとは思ってなかったが。
「雷神シド様も雷撃属性でしたか。」
シーナは何かを思い出すように
遠くを眺めながら頷いていた。
「お前さんは何者じゃ?」
「いや、ただ冒険者登録をしにきただけなんですか?」
「雷撃属性持ちの武闘家なんざ、ワシが知る限り見たことがない。
ただ、転生者であればあるいは考えられるが・・・」
「転生者ですよ」
おれは普通に答えたつもりだったが、その場にいた3人は
ギョッとした目で俺を見た。
そんな珍しいのか?
まあ冒険者の登録をする前からレベルを
こんなに上げてくるやつは確かに稀だろうが。
「転生者であることは間違いないでしょう。
彼が戦闘態勢に入った瞬間、オーラの量が桁違いに増えました」
「それはワシもすぐ感じたわ。訓練所の方からじゃったから、まさかとは
思うたが・・・。」
「これにしても、このギルド創設以来の
とんでもない奴が出おったな〜!!!ガーッはっはっは!!!」
そう言うと、ドワーフの男はガハハと大きく笑い始めた。
おれも隣にいるイヨも置いてかれている感が半端じゃない。
「安心せい。お前さん達の事は悪いようにはせんよ。
ここで騒動を起こさんでくれんかったらええ。
たまーにじゃが、ヒューイット城で抱えきれんクエストなんかは
こっちも要請が来ておる。お前さんなら何とかなるじゃろう。
うちの冒険者で対処できれば良いんじゃが、最近それも
難しくなってきておる。」
「厄介ごとに巻き込まれるのは御免ですよ」
「お前さんなら大丈夫じゃわい。しかもそのクエストの場合、
普段より報酬は高くなっておるから、お前さん達にとっても
悪い話じゃないと思うがな。出来れば受けてほしいという
話じゃから、無理にとは言わんが・・・」
フラグですね完全に。
この爺さんすげぇ悪い顔してやがる。
「まあ色々と引き止めて悪かったな。とにかく合格であることは
間違いないわい。この後の説明については、シーナがするから、
よろしく頼む。」
シーナは深いため息をして応接間から出た。
「話は受付で行うからの。そういえば自己紹介がまだじゃったな。
俺はこのギルドマスターのガジンじゃ。」
この爺さんのペースに上手く持ってかれたな〜。
「そういえば、お前さん達はパーティなんじゃろ?」
「いや、違うけど?」
そうゆうおれの顔をじっと見つめてくるイヨ。
いやいや、どうしたんだよ突然。
とりあえず、おれとイヨは冒険者登録の説明を受けるために
1Fに戻ることになった。




