1ー13.ヒューイット城聖騎士団副団長
「君かい?スカラベロードを倒したっていうのは?」
「ええ、まあ一応」
金髪の好青年で、年は20歳前後といったところか。背もすらっとしていて、
いかにもイケメンである。
苦手なんだよな〜こうゆう人種。
「私はヒューイット城聖騎士団副団長のエリックである。よろしく頼む」
「僕はヴァン。隣にいるのは獣人のイヨとスケルトンのコテツ。」
イヨは恥ずかしいのか、おれの側にくっついて離れない。
コテツはなぜかエリックと真正面に向き合っており、無駄に胸を張っている。
嫌な予感がする。
「君はスケルトンを飼っているのかい?不思議なパーティだねぇ」
エリックはコテツをチラ見し、怪訝そうな顔で俺たちを見ている。
「まあ、とにかくだ。君たちがスカラベロードを倒したかどうかを確認するために、
東の洞窟の調査に向かうとしよう」
「そう言ってもらって助かるよ。お前さんにきちんと見てもらったほうがいい。
よろしく頼むよ」
ギルドマスターのガジンが副団長エリックにそう言い、入り口まで
見送りに行った。
「それでは私達はこれからむかいますので、これで失礼します」
エリック達は一礼をし、ギルドを後にした。
「すまんなヴァン」
ギルドマスターのガジンがエリックを見送った後、おれに話しかけてきた。
「いえいえ。別に気にしていませんよ」
どうやら俺たちはエリックに信用されていないようだ。まあ無理もないだろう。
こんな新人のパーティが、まさか300レベル帯のモンスターを
退治できるとは到底思えないだろう。
エリックを一見した感じだと、オーラは行儀が良いし、
それなりに強いんだろう。ただスカラベロードを倒すのは難しそうだが・・・。
「スカラベロードの気配が消えていることは俺が確認している。
まさかこんなに早く解決するとは思ってなかったもんで、
ヒューイットのギルドにも調査依頼をお願いしていたんじゃが、
無駄だったようじゃな」
そういったガジンだが、なんだか嬉しそうな顔をしていた。
「ヴァンはん、あのエリックっちゅうやつ」
コテツが俺に一言言いたげな顔をしている。
「大した事ないであれ」
「だな」
お前が言うなっ。と言いたい所だが、おれも同じ印象だ。
ガジンが隣でふっと笑っていた気がするが気にしない。
「ヴァンさん、それでは特別クエストの報酬です」
受付にいたシーナさんに呼ばれて、報酬を受け取っていなかったのに気づいた。
成功報酬は金貨3枚。
それと、買取をお願いしたスカラベロードは
後日報酬を受け取ることになったが、俺は素材が欲しかった。
あいつからは良い防具が作れるので、あとは鍛冶屋を探すだけだ。
あと、シーナさんからギルドカードを返してもらう時に、
さらっと冒険者ランクをFからEランクに上げた事を伝えられた。
クエストの結果を踏まえてだそうだ。
◇◆◇◆◇◆
俺は、コテツのステータスを確認をするために、冒険者の石の前まで来ていた。
コテツが石の中心に手をかざすと、ステータスが浮かび上がった。
【対象者】コテツ
【ジョブ】侍
【レベル】30
【スキル】
(斬鉄剣)
()
()
まだ開花していないスキルはあるが、
最初に覚えているスキルが「斬鉄剣」
大当たり引いたな、これは。
スキル「斬鉄剣」は、武器としてはマイナーな刀を使用するものだが、
この1番の特徴としては、防御力無視という所にある。
これはこの世界において非常に強力で、装備している防具と
自身のオーラによって相手の攻撃を防ぐのだが、
「斬鉄剣」に関してはそれを貫通してダメージを与えることができる。
今回のステータス確認は、おれの想像の斜め上をいったものとなった。
良い意味で期待を裏切った。とても良い意味で。
これは第一線で戦える人材だ。しかも育て方次第でSランク戦の最前線で。
「どうなんおれのステータス?!ごっつええ感じ??」
「これはごっつええよ。マジでやばい」
コテツの冗談混じりな一言だったが、案外合っていた。
それから俺たちは、Eランクで受けれるクエストを確認をし、
イヨやコテツのレベル上げに良さそうな討伐クエストをいくつか受けた。
◇◆◇◆◇◆
狩りに行く前に、武器屋に寄ることにした。
おれが盗賊で使用するナイフ、コテツ用の刀を探しにきた。
イヨには今使用している樫の杖から、短杖に変えてもらう予定だ。
外観はお世辞にも綺麗とは言えず、店の中は狭くて
武器が乱雑に置かれていた。
中には誰もいない。
「誰もいないね」
イヨはキョロキョロと店内を見ているが、人の気配がない。
おれは店内に置かれている武器を物色する。
変わった品揃えだ。武器屋でよく見かけるであろうラインナップがなく、
ムチ、棍棒にボーガン、とても重い剣など、使い道がなさそうなものまで
雑多に置いてある。
これは探すのに手間がかかりそうだな・・・。
「いらっしゃい」
ぬっと店内の奥から小柄で物静かそうなドワーフのじいさんが出てきた。
そして静かに、そっと受付に移動した。
俺たちは気にせず、商品を物色した。すると、
「ヴァンはん、これ刀ちゃう?」
コテツが見せてくれたそれは、まさしく日本刀だった。
お店の奥、武器と武器が重なって見えないところに置かれていた。
状態としては悪くない。特別癖がある効果がついてなさそうな刀だから、
最初に使う分には最適といえる。
「これ、いくらですか?」
「あ~、銀貨10枚でいいよ」
安っ。相場から考えると半額以下だな。
「ところでお前さんら、変わったパーティーじゃな」
「そういわれると、そうかもしれないです」
「そこのお嬢ちゃんがネクロマンサーかい?」
「ええ、まだまだひよっこですが」
「スケルトンを従者にしたんじゃな。良いパーティだねぇ」
小柄なドワーフのおっちゃんは、優しい表情でにっこりとほほえんだ。
「あと、盗賊で使えそうなナイフはありますか?」
「うちにはお前さんみたいな3次転生者が使いそうな
無限ナイフは置いてないねぇ。あるとすればこれかねぇ」
このおっちゃん、物腰はやわらかい感じで話してくるけど、只者じゃねぇな。
さらっとおれが3次転生していることに気がついてたからな。
すると奥からでてきたのは、ミスリル製のナイフだった。
「これは普通のミスリルナイフだが、オーラの伝達率がええし、
使い手によって切れ味が変わるもんだ。お前さんみたいな
オーラのコントロールが上手いやつが使うのがいいだろう」
手に持つと、よく馴染むのがわかる。
このじいさんが言ってたことがよくわかる。
「これはいくらですか?」
「金貨1枚だな」
「じゃあこれも買います」
「あと、そこのお嬢ちゃんにはこれはどうだ?」
そう言われて奥から出てきたのは、ミスリル製の魔法銃と短杖だった。
「あのお嬢ちゃんには小型で立ち回りがしやすいもんがいいじゃろ。
それに、その樫の杖よりこの杖の方がよっぽどええわ」
この2つも、通常のミスリルでできたものより強力であることは明らかにわかった。
「これは2つで金貨1枚になるが」
「ではこれももらっていきます」
良いものに出会えたし、この店にしてラッキーだったな。
それに今回の収穫といえば
俺のこと気づいた人物に出会えたことだろう。
機会があれば、またこのお店にお世話になろう。
「そういえば、お前さんらのことをガジンが嬉しそうに話しておったよ」
「どんな話をしていたんですか?」
「ゴリエルを一撃でぶっ倒した新人が現れただの、尋常じゃない量の
セレナ草をとってきただの、興奮しながら話しておったよ」
「そんなこと言ってたんですね」
「この間の、東の洞窟にでたスカラベロードを倒したのも
お前さんらじゃろう?」
「そうですね」
「うんうん、良いパーティじゃな」
「ありがとうございました。また伺います」
「ええ。いつでもええよ」
そういって、俺たちはその店からでてきた。
看板には、「ドーガの武器屋」と書かれていた。