1ー11.特別クエスト
カーテンから光が漏れ、その光でおれはゆっくりと目を覚ました。
イヨはベッドから落ちており、地面でうつ伏せになって寝ていた。
とりあえずイヨを起こして、1Fで朝食を食べた。
今日はクエストをこなしながらイヨのスキルを試してみて、
実践での使い方を検討したい。あとは装備を揃えていきたいから、
武器防具屋に寄ろう。
軽く朝食を済ませ、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに来ると、チラチラと目線を感じるがそれを
無視し、まずは買取カウンターにいるゴリエルの所まできた。
「ようヴァン。昨日のハッカクリザードだが、全部で
金貨6枚だな。」
金貨1枚は銀貨100枚に相当する。
ハッカクリザードは銀貨600枚程の報酬になった。
周りの冒険者にジト目で見られているが気にしない。
俺たちは報酬を受け取り、クエストが並んでいる掲示板の所へ向かった。
すると、シーナさんがおれ達の所に近づいてきた。
「ちょっといいかしら?」
「ええ。なんでしょう」
「あなた達にお願いしたいクエストがあるの」
めんどくせーと心の中で叫んだが、この場合避けられないんだろうなぁと
思い、諦めて話を聞くことにした。
「どういったクエストですか?」
「東の洞窟にスカラベロードの目撃情報がありました」
まじか!こんなことあるんだ!
スカラベロードは甲殻類のモンスターで、スカラベはよく見る
やつだが、ロードになるとかなりレアモンスターになる。
しかもおれが欲しがっている「ネクロマンサー専用アイテム」を
レアドロップする!
イヨはよくわかっていない様子だが、おれ自身かなり驚いている。
「東の洞窟の適正レベルから大きく離れたモンスターですから、
もし本当のことであればかなり深刻な問題になります。
ヒューイット城の冒険者ギルドとも相談をして、
高レベルの冒険者を募らないと・・・」
「シーナさん、そのクエスト一旦僕たちに任せてもらっていいですか?」
「ええ、構いません。ただし期限は今日中にさせて下さい。
長引かせると被害が大きくなりますから。
既に冒険者には東の洞窟には近づかないようにと通達はしています。
今回は特別クエストになりますから、報酬については後日相談という形で。」
「ええ、期待しています。」
「イヨ、今日やろうと思っていた事を急遽変更して、東の洞窟に行くことになった。」
「ヴァンさん、スカラベって強いモンスターなんですか?」
「ああ、それなりに。それよりも、あいつがドロップするアイテムは
イヨにとって、とーーっても大事なものだから、今回はチャンスだ」
「おお、ヤバイアイテムがドロップするんですね?!」
「おう。ヤヴァイやつだ。絶対ゲットしようぜ」
「ヴァンさん盛り上がってきましたね!」
「おう。それにドロップについては秘策を考えてある。」
「ヴァンさん、マジリスペクトっす!」
俺たちはスカラベ討伐クエストを受け、東の洞窟へとハイテンションで向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
【東の洞窟】
おれは「スカラベロード」の居場所をスキルを使って検索する。
すると、隠し通路の最後の部屋にいることがわかった。
この洞窟は構造は簡単だが、最後の分岐点で隠し通路がある。
適正レベルは30〜50。
普通にここで狩りをしに潜っていた場合、その隠し通路は
まず気づかないような通路である。
しかも見破る方法が盗賊スキルの「探知」をある程度あげておかないと
見つけることができない。
俺たちは道中何事もなく進んで行き、
最後の分岐点まで到着すると、「探知」スキルを使って、
隠し通路を出現させた。
「うおお、いきなり通路が出てきた!!」
「普通だとわかんないよねこれ」
俺たちは隠し通路を進んで行き、最後の部屋までたどり着いた。
最後の部屋はとても広く、冒険者ギルド2Fの訓練所くらいの大きさはある。
その端っこに、俺たちが探していたモンスターはいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
【スカラベロード】
モンスターのレベルは230程度。
この洞窟の適正レベルからは大きくかけ離れている。
こいつは、スカラベという甲殻類のモンスターと比べて、
一回り大きく全長で3mくらいある。
触角による攻撃も強力だが、同レベル帯のモンスターと比べて、
防御力がかなり高い。
こいつと普通出くわした場合、スルーして狩るのを辞めるやつが’殆どだ。
現在、俺のレベルが340、イヨが56。
俺のレベルくらいでやっと攻撃が通るくらいだ。
しかも攻撃力が高く、パーティで戦わないと倒すのにとても苦労する。
それに、こいつにレアドロップであるネクロマンサー専用のアイテムを
落としてもらわないと倒す意味がない。
おれはマジックボックスにある秘策を使うことにした。
「盗賊の極意」
スクロール式のマジックアイテムで、読んだ対象者が倒した
モンスターは、必ずレアドロップするという、
超レアアイテムである。倒したモンスター1体に限られるが、
必ずレアドロップするという、マジックアイテムの中でもレア中のレアだ。
何かの大会での賞品だった気がするが、あまり覚えていない。
おれは「盗賊の極意」を使用し、万全の体制となった。あとは倒すだけである。
スカラベロードは俺達に気づいており、自身のオーラを
警戒モードにしている。
「イヨ、注意しろ!あいつはレベル230くらいだが、
強さだけでいうなら300くらいはある!」
「ふえええ。ヴァンさんどうしましょう〜。」
「イヨは俺のタイミングに合わせてヴァルフレアを打ってくれ!
それまでは攻撃の当たらない所で待機だ!」
「あいあいさー!!」
ジリジリと俺とスカラベロードの距離が近づいている。
スカラベロードの攻撃がギリギリ当たらないくらいの距離だが、
おれはまだオーラを解放していない。
イヨは距離を保っている状態だ。
すると、スカラベロードが飛び込んできた。
長い触角が俺に向かって凄いスピードで襲ってくる。
幾重にも向かってくるそれは、鋭い刃物のような切れ味で
ムチのように変則的な動きをしながらも狙いは精確だ。
攻撃を仕掛けてきた刹那、俺は自身のスキルを発動させる。
「開放!」
「疾風迅雷!」
ドンっという衝撃が辺りに響き、俺のオーラ量が
爆発的に大きく誇大する。
向かってくる触角を正確に拳で弾き、
頭めがけて一撃打ち込んだ。
ボンっという大きな衝撃音とともに、スカラベロードは大きく仰け反ったが、
何とか耐えきった。しかし、攻撃はかなり効いているようで、触角の
攻撃がぴたりと止まった。
おれは続けざまに連続で攻撃を胴体に打ち込み、こぶし大の大きな
クレーターをいくつも作る。スカラベロードも負けじと
反撃してくるが、おれは簡単に攻撃を弾いてみせた。
そろそろくるな。
すると、予想していたタイミングでスカラベロードの
口にオーラが集中した。
「イヨ!ヴァルフレアの準備だ!」
「はい!」
すると、スカラベロードのオーラが大きくなり、それが
一点に集中する。口をカッと開いたかと思うとおれに向かって
巨大なビームを放ってきた。
「ヴァンさん!!避けて!!!」
おれは疾風迅雷で、瞬時にそれを避ける。
おれがいた場所は地面が大きくえぐれ、焼けた匂いが辺りに漂う。
すると、スカラベロードの背後から、おれはイヨに向かって
叫んだ。
「今だ!打て!!!」
「ヴァルフレアーー!!!」
イヨのヴァルフレアはスカラベロードを丸々と飲み込み、
灼熱の業火でスカラベロードの外殻を溶かしていく。
スカラベロードの動きが鈍くなり、頭を守っていたオーラが弱々しくなる。
そのタイミングを逃すまいと、おれは最後の切り札を出す。
全身のオーラを右手に集中させ、膨大なオーラの塊が右手に集まる。
おれの目に緑色の六芒星が浮かび上がった。
三次転生専用の武道家スキルを発動させる。
おれはスカラベロードの背後にまわって飛び上がり、
スカラベロードの弱点である後頭部に向かって渾身の攻撃を放つ。
「麒麟!」
右手にオーラを集中させ、それを雷属性に変える。
極限に研ぎ澄まされたそれは、カミナリを右手に
抱えているような、超電力の雷属性攻撃となる。
バリバリバリッ!!!っという雷鳴音が洞窟全体に響き渡り、
スカラベロードの頭に雷が落ちたような衝撃が襲う。
その攻撃を受けたスカラベロードは頭が焼け、
感電死をした状態になり、動きを停止させた。
すると、その近くで光るアイテムを見つけた。
ネクロマンサー専用アイテム、「勾玉」に間違いなかった。
イヨは安心したのか、へなへなと腰が抜けていた。
おれはゆっくりと「勾玉」を拾い上げ、
スカラベロードをマジックボックスに回収した。




