1ー10.作戦会議
【宿、野中亭】
中に入ると、同い年くらいの獣人の女の子が
出迎えてくれた。
「いらっしゃーい!お泊まりですかぁ〜?」
「1週間ほど泊まりたいんだけど、2人部屋1つでどれくらいかかるかな?」
「ほうほう」
そうゆうと、獣人の女の子は俺をジロジロ見て、
怪訝そうな顔をした。おそらくお金を持ってなさそうだから、
それを心配したんだろう。
部屋については、イヨに別々にしようといったんだが、
一緒がいいと聞かなかったので、1部屋にした。
「あの〜料金なんですけど、
前払いで銀貨14枚になるんですが、大丈夫ですか〜??」
「構わないよ。じゃあこれを」
そうすると、さっき稼いできた銀貨から14枚を取り出すと
獣人の女の子に手渡した。
すると、疑っていた表情からすぐさま
ぱあっと明るい表情に変わり、毎度あり〜!!
と元気な返事が返ってきた。
「食事は1階が空いている時間ならいつでもできます〜!
朝から晩までやってますので、お腹いっぱい食べてって
下さいね〜!部屋は2階の207号を使って下さい〜。
鍵渡しときますね〜!」
そうして鍵をもらい、お腹も空いていたので早速1階の
酒場で食事をとる事にした。
「いらっしゃい。」
中華料理屋ででかい鍋でも振っていそうな男が1人
厨房で料理を作っていた。
「何かオススメありますか?」
「今日のオススメは海老カツサンドだな。それでどうだ?」
「それは美味しそうですね!!ではそれをいただきます。」
カウンターに座り、しばらく待っていると
程なく海老カツサンドが出てきた。
大きい海老カツがパンからちょっとはみ出ていて、
野菜も入っている。
フライドポテトもお皿に添えられていて
そして小皿にケチャップ!が入っていた。
先ほどの男が作ったとは思えない程
色鮮やかで、かつシンプルに美味しそうな料理だった。
今まで住んでいた家では、執事のダンテは基本的に
家にいなかったので、自分で作っていた。
食事は主に狩りでとれたモンスターの肉を焼くだけのものだったので、
こんな凝ったものを食べるのはとても久しぶりだった。
イヨはめちゃくちゃ腹が減ってそうで、ジッと海老カツサンドを
凝視しているのだが、手はつけない。
俺が食べるのを待っているのだろうか。
おれは早速海老カツサンドにかぶりつく。
う・・・うまい。外のパンはサクッとした歯ごたえで、
中の海老カツはとてもジューシーだ。
ボリュームがあり、噛むたびに
口いっぱいに海老の美味しい味が広がる。
フライドポテトとケチャップも当然めちゃくちゃ合う。
この宿屋は大正解のようだ。
イヨは尻尾をブンブンふって無心でパクパク食べている。
とても美味しそうに食べていたので俺もホッとした。
俺たちはそれをペロリと平らげ、
自分達の部屋に入った。
簡素な作りだが、必要十分な作りで好印象だった。
この宿屋にして正解だったようだ・
さて、これから俺たちがどうするべきか。
イヨはベッドにダイブして、フカフカしている。
おれは椅子に腰掛け、両手を組みながら
これからの計画をゆっくり考える。
まずは冒険者ギルドでランクBを目指す。
Bランクになれば受けれるクエストの幅も増えるし
Bランク以上でしか入れない専用のショップにも出入りできる。
装備を揃えないと、これからがきつくなるのでこれは必須だろう。
それに、冒険者ギルドBランク以上から
「レンジャー」試験を受けることができる。これに合格することが
ある意味この世界でのスタートラインと言っていいだろう。
あとは、イヨのネクロマンサーで必要な装備、アイテムの収集もある。
特殊なジョブであるがゆえ、汎用的な武器防具も使えるが、
強力な、能力の尖った装備になると特注になる。
当然作り手を探すのに手間がかかるし、素材集めも手がかかる。
またネクロマンサー専用のアイテムもあるが、それはレアドロップの為、
さらに入手難易度が高い。
ただし、手に入れられれば相当に強い。装備次第では
戦闘に関しては大人数を相手でも無双状態になる。
俺も当時武闘家で対人最強ではあったが、ネクロマンサーについては
対策を練っておかないと結構ヤバかった。
最後は自分のジョブである武闘家、サブジョブの盗賊の装備収集。
急務ではないが今後レベル400以上の壁、4次転生のクエストをクリア
するために、装備を整えておかないとまずクリアできないだろう。
レベル上限突破の転生クエストで、4次転生のクエストは
難易度が急に高くなる。
この町に滞在するのは1週間かそれくらいにして、
次はヒューイット城に移動しよう。大きい街だから
装備等の情報が豊富に集まるだろうし、良いクエストが
あれば受けて、早めに冒険者ランクを上げておきたい。
「ヴァンさん、これからどうするんですか〜??」
ベッドに入りながらモフモフしていたイヨは、眠たそうな目で
こちらを見ている。
「1週間くらいはここにいるけど、次はヒューイット城に移動しようと思ってる。」
「すぐ出ちゃうんですね〜。ここの海老カツサンド美味しいのになぁ」
イヨはちょっとガッカリした様子で、耳がぺたんとしている。
おれもここの飯は気に入ったから、また様子を見て食べに来よう。
「イヨはこれからどうしたい??」
「ん〜、ヴァンさんについていこうって思ってるんで、ヴァンさんの
行きたい所について行きます!」
「イヨはこれから主力戦力として戦ってもらうから、頼むよ」
「あいあいさ!!」
イヨは満面の笑みで返事をしているが、目が虚ろになっている。
「まだまだこれからだけど、イヨにはとっても期待しているから、
おれを信じてついて来てね」
「ヴァンさんカッコいー・・・」
頭がグラグラしていたが、イヨはとうとうバタッとベッドに
突っ伏して起きなくなった。
今日1日で色々な事があったが、結果的に良い方向に転んでくれて良かった。
それにイヨが仲間になった事はとてつもなく大きい。
これからも色々と助けられる事もあるだろう。
あとは自分達でどうしようもできないことは
成り行き次第だろう。
今日1日をぼんやり振り返りながら、おれも眠りについた。