第5章5-14
5-14
・チェアリーのターン
ユウに火を起こすようにお願いすると、この前のようにかまどを作り始めた。大きな石を運び、息を切らせながら張り切っている。
(やっぱり頼りになるわ)
スライムが見つけられなかったのはしょうがない。その代りにユウはウサギを捕まえてくれた。肉はおかみさんのお土産にしても、残りの毛皮は売ってお金にできる。
おかみさんにも顔向けできるし、お金も得られるし、今日はユウのおかげで大収穫だ。
私は気分よくウサギ肉を洗った。
よく血を洗い流すことが、臭みの無い肉になるかならないかの分かれ目になる。しっかり川の流水で血を洗い流し、おかみさんの手間にならないよう余分な脂やスジ、膜などを綺麗に取り除く。
(こんなものかな)
血が流れ落ちた肉は、綺麗なピンク色になった。
川から引き上げて見ると大きさも身の締まり具合も最高で、これならおかみさんに見せても申し分ない。
最後の仕上げに、私は近くに転がっていた握りこぶし大の石を拾い、ウサギのお腹へいくつか詰めた。それを重しにして肉を川へ沈める。これでお昼ご飯を食べているうちに、血管に残った血も完全に流れ出るはずだ。
(お肉は終了っと)
ひと段落したのでユウの方を見ると、かまどは既にでき上がり流木を集め始めている。
(ちょっと急がなきゃ)
火がつくまでそんなにはかからないはずだ。彼を待たせないように私は急いで毛皮を洗いはじめた。
毛についてしまった血や泥を丹念に洗い流す。
ジャブジャブ・・・・・・
このウサギは全体的に薄茶色でお腹の部分が白くなる典型的な野ウサギの毛色だった。これがもし黒のブチ模様だったら珍しいので少し色を付けて買い取ってもらえるはずなんだけど。
(贅沢言っちゃダメだよね)
買い取ってもらうにしても、皮に残ってしまった肉や膜は削ぎ落し、綺麗にして持っていかないと汚れている事を理由に買い叩かれてしまう。
少しでも高く買い取ってもらえるよう入念に洗っていると、背後から彼の声が聞こえた。
「ファイ、ヤー・・・・・・お! わっち!!」
ユウが火を起こすために魔宝石を使ったようだ。
変な声を出したのでそちらを見ると、丁度こちらを振り返った彼と目が合った。ユウはよっぽどかまどを作ったり、火を起こしたりと野営のまねごとが好きなのか満面の笑みだ。
(フフッ、子供みたい)
私も彼の無邪気な笑顔を見て、つられて笑った。
(任せてよかった)
やっぱり男の人はこういう事が好きなのだろう。
ジャブジャブ・・・・・・
流水に手が浸かりっぱなしで指先が冷えて火にあたりたくなってきた頃、また彼の声が聞こえた。
「ウォーター」
ユウは先に料理を始めてしまったらしい。
(あんっ、一緒に作りたいのにぃ)
私はまだ皮にこびり付いている膜を剥がしている途中だ。
急いで済ませようとするも、細かい作業なのでかじかんだ指では思うようにはいかない。
直ぐには終わりそうも無く、とりあえず毛皮は置いておきユウの様子を見ることにした。
彼に近づいていくと、
「おわっ!!」
何やら驚いた声を上げた。
後ろから肩越しに覗いてみたら、預けた魔宝石が割れてしまったようだった。
「壊れちゃったね」
「おわっ!!」
脅かすつもりは無かったのだけれど、ユウは私が後ろに立っていたことに気付いていなかったらしく、大げさなくらいに驚いた。あまりにビックリしているものだから、私は可笑しくなり笑ってしまった。
「ふっ、ふふっ、ふ、・・・・・・」
悪気はない。けど、堪えようとすればするほど、可笑しくなってくる。
笑いを堪える私になぜか彼が謝ってきた。
「ごめん、壊れた・・・・・・」
(別に謝らなくてもいいのに、)
見ると彼の後ろにはレバーを入れておいた鍋に水がなみなみと注がれ、血で赤く濁っていた。彼は肉を洗うために魔法を使ったことを気にしたのかもしれない。
魔法は川の水のように好きなだけ使える訳ではない。なるべく節約を心掛けないとあっという間に使い切ってしまう。
直接飲む水なら私も魔法で出すけど、肉を洗うくらいなら川で洗えば十分だ。
「ちょうど寿命だったんだね。気にしなくてもいいよ。でも、節約してよ?お肉洗うだけなら、川で洗ってね」
彼に軽く注意して私は毛皮を洗う作業に戻った。
ジャブジャブ・・・・・・
(早く終わらせないと!)
早く済ませて一緒に料理したい。
ユウの方からはコン、コンと流木を割る音が聞こえてくる。また箸を作ってくれているのだろう。
(あーもう、やめ!)
我慢できなくなった私は先に彼と料理をすることにした。
「ごめんね、待たせちゃって。すぐ用意するから」
「大丈夫、ゆっくりでいいよ」
レバーは彼が水に浸けておいてくれたので、ある程度臭みは抜けたはずだ。
後は川へ持っていって筋や膜をはずしながら洗えばいい。
「私はレバーを洗うから、ユウはおかみさんに貰ったパンを温めておいてくれる?」
「分かった」
細く割った流木を手に取った彼はパン取り出すとそれを串刺しにし、かまどの上に置き始めた。
(相変わらず手際がいい)
ソロでやっていた時は、面倒だったのでパンだけかじってお昼は済ませていた。けど、今は違う。彼といると手際よく進められ手間がかかる料理でも楽しい。




