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第5章5-7

5-7


・ユウのターン


オレ達はスライムを探すため、街の南に流れている小川まで来た。

「じゃあ、今日は反対の岸を上流に向かって探そうか」

「うん、いいよ」

チェアリーは明るく返事してくれたが、オレの方は少し焦っていた。

(なんとか、午前中に来られたか・・・・・・)


今日こそはスライムを!と気合いを入れていたのだが、チェアリーが居眠りをしてしまい出鼻をくじかれてしまった。それはしょうがない。チェアリーも疲れていたのだろう。

その後、宿を出てから彼女が教会でお祈りをしてから行きたいというのでつき合わされた事も構わない。それは信心深いチェアリーの日課らしかったから。


だが、途中で市場にも寄り彼女が食材を買いはじめた時には、さすがに口を挟んだ「昼はおかみさんから貰ったパンだけでいいよ」と。そう言ったにもかかわらず、彼女は露店をいくつか回って歩いた。

チェアリーに迷惑をかけっぱなしのオレが彼女のやる事に文句を言えるわけも無く、出来るのは黙って付いて行くことだけだ。


「ユウ。早く、早く」

オレの前を行くチェアリーが楽しそうに振り返り手招きする。ここまで来る間、なぜかとても機嫌が良く彼女はニコニコしていた。

(きっと少し仮眠を取ったからスッキリしたんだな)

今も目が合うたびににっこりと笑い、少しテンションも高い。

(ハァ・・・・・・チェアリーが楽しそうなんだからそれもいいか)

そもそもスライムを倒そうと気合いを入れていたのは彼女に報いるためなのだからと、焦る気持ちを鎮め後を追う。


橋を渡って対岸の河原へ降り、スライムを求めて上流へ向け探し始めた。

彼女はオレの横に並んで歩き、辺りを見回している。

「別れて探さないの?」

二人で別々の場所を探した方が効率がいいと思ったのだが、

「うん、大丈夫だよ」

彼女はそう言っただけだった。


(やっぱり、気を遣わせてるのか)

オレが一人でいるのを心配してくれているのかもしれないと思った。情けない話だがスライムに殺されかけたのだから仕方がない。

気合いを入れ直し、改めて辺りを見回す。


探し始めて小一時間。

「いないなぁ・・・・・・」

「そうだね・・・・・・」


川沿いにだいぶ上流へさかのぼってきた為、遠くに見えていた山は近くまで迫ってきていた。

その山の稜線は斜面に生える藪と平原とに境界線がはっきりしている。

それは人を寄せ付けないかのようにこちら側と向こう側、日常と非日常の境のように見えた。あれを越えたら強敵が潜んでいるのでは?そう感じる。


このまま行っても山の中へ分け入ってしまう。そうなればどんなモンスターが出てくるか分からない。無理は禁物だ。

「いったん橋の所まで戻ろうか」

「うん。そうしましょ」

チェアリーもオレの意見に同意してくれた。


スライムはまだ1匹も発見できていなかったが、一旦戻ろうと思ったのには他に理由がある。

(あー、トイレに行きたい!)

宿を出る前にちゃんとトイレは済ませてから出てきたのだが、朝食にパンを3つも食べてしまったオレは喉が渇き、水道の蛇口から水をがぶ飲みしてきてしまったのだ。そのせいで今になって、もよおしてきた。


べつに外でするのはかまない。かまわないのだが・・・・・・チェアリーの方をチラッと見る。

(気を使わせるのは嫌だな)

オレの視線に気付いた彼女が笑う。

「なに?」

「いや、なんでもないよ」


河原を引き返すうちに歩いていれば汗で水分が消費されて尿意も収まるのではないかと期待したが、気にすればするほど限界がより近くなってくる。

(あー、ダメだ。完全にスイッチが入った!)

橋まで戻っても街までは持ちそうも無い。


別々に分かれてスライムを探していたのならチャンスもあったかもしれない。しかし今のチェアリーはオレの事を心配してくれているのかピッタリと横に並んで離れようとはしない。


とうとう我慢できなくなったオレは話を切り出した。

「あのさ、分かれて探した方が見つかる確率も高くなると思うんだけど・・・・・・オレが土手の上から探すから、チェアリーは河原を探してて」

そう言って彼女の言葉を待たずオレは土手を上がり始めた。


「待って!私も一緒に探すからっ」

彼女も後ろから土手を登ってくる。

「大丈夫だから、付いてこなくても」

「でもっ!」

オレはしょうがなく振り返って言った。

「一緒に来られると困るんだよ」

「えっ!?・・・・・・なんで・・・・・・わたし、何か気に障ること、」

彼女の表情がみるみるうちにこわばっていく。


「ちっ、違うっ!その・・・・・・トイレに行きたかっただけだからっ」

オレの言葉を聞き、彼女は顔を隠すように帽子を深々とかぶり直して踵を返した。

「ご、ごっ、ゴメンナサイ!私、気が利かなくて!!」

そう言い放って土手を降りていく。

(今度からは変な気を遣わず素直に言おう・・・・・・)

恥ずかしそうに小走りに駆けていくチェアリーの後ろ姿を見ながら、オレは思った。


用を済ませるため土手を上がりきると、そこも一面の草原だ。

(見渡す限りオレ専用トイレ!)

壮大な自然が広がる解放感の中、オレのアレも解き放とうとズボンに手をかける・・・・・・が、何か嫌な予感がする。


(もしかして、)

その場でかがみ草陰にスライムが潜んでいないかチェックした。もし用を足している時に襲われたら大参事だ!

モンスターは常に動き回っていると聞いていたので、しゃがんだまま暫くじっとしていたが、何かが動き回っている気配は無い。


スライムはいそうにない事を確認したオレは心おきなく用を足した。

(ふー、助かった。これからは不用意に水は飲んだらいけないなぁ。これも冒険者としてやっていく教訓か)


スッキリしたところで、チェアリーの元へ帰ろうとすると、

ガサガサッ!

草陰で何か音がした。

オレはとっさに音のする方とは反対側へ飛びのき、素早く剣に手をかけた。

(スライムか!?)


スライムかどうか判断する間もなく、草陰から茶色い物体がオレの目の前に飛び出す。

(ウサギ!?)

いや違う!飛び出してきた茶色い物体は、見た目はウサギの格好をしていたがその口からは鋭くとがった牙が2本、上にまっすぐ伸びているのが見えた。それにその体はオレが知っているウサギの物よりデカい!


(モンスターか!)

緊張から一瞬で手に汗をかいて湿り、握った柄にギュッと力がこもる。

剣をいつでも抜ける体勢でゆっくり、その獲物ににじり寄って間合いを詰めた。

すると・・・・・・

ガサガサッ!

草陰からもう一匹飛び出してきた!

(仲間を呼ばれた!?)


しかし、仲間が飛び出した音にビックリしたのか、最初に居た方は一目散に逃げていく。

(逃がすかっ!)

オレは残った方に、素早く剣を抜き放った。

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