第4章4-14
4-14
・チェアリーのターン
はむっ、んぐんぐんぐ・・・・・・
ユウがおいしそうにブリトーを頬張る。そして、
・・・・・・ゴクゴク。
一息ついてからプルケで流し込んだ。どうやら彼はどちらも気に入ってくれたみたいだった。
私も彼に続いてプルケを口にする。
じゅる・・・・・・
すぐに飲み干してしまってはもったいない。口に含んでゆっくり一滴、一滴が喉の奥に溶けていくのを、私はいとおしみながら飲んだ。
(えへへ)
程よく酔いが回って気持ちいい。顔が火照って、ぽーっとする。
彼とゆっくり食事をしていると、二人だけの世界に浸っている気分だった。
広場に集まっている人たちは結構いたが、時々笑い声が突然あがるくらいで人々の話し声は気にならなかった。かえって、雑音の中に居る方が不思議と他人の事が気にならない。
ユウもブリトーを片手に広場にいる人たちをぼんやり眺めて、リラックスしている様に見える。
彼は何か気になる物でも見つけたのか目線はそのままに、左手でブリトーを頬張りつつ、右手がテーブルの上でプルケを探して空を切っていた。
(ふふっ)
私は彼の手を取り、持っていたプルケを手渡した。
「はい、こぼさないでね」
「あぁ、ありがとう」
ユウは何かに興味を持つとじっと眺めてしまい、周りが見えなくなるようだ。
こうして二人でいると彼の事が少しづつ分かって嬉しい。
特におしゃべりすることなく、ゆっくりしている時間もそれはそれでよかったが、そろそろおかみさんに頼まれたお使いに向かわないといけない。
私は食べかけのブリトーを平らげた。
おかみさんからおつりはお駄賃にしていいと言われている。そのお駄賃で彼と一緒に買い物をするつもりでいたのだけれど・・・・・・ユウの横顔を見ると、プルケに酔って少し赤い。さっきも立ち上がった時によろけていたし、私は一人で買い物に行くことにした。
「ねぇ、何か欲しいものない?買ってあげるよ」
「いやっ、そんな買ってもらうなんて悪いよ」
気軽に聞いたつもりだったのだけれど、ユウは慌てた様子でこちらに向き直り、遠慮してくる。
彼は遠慮深い人だ。私はユウの為に役にたちたいと思っているのに素直に甘えてくれない。今も気を遣って断ろうとするので、私は少ししつこく聞き続けた。
そしたら彼がモゾモゾと一言。
「パンツが・・・・・・欲しいなって」
(パンツ!?)
私は赤面した。
思いがけない要求にからかわれているのかとも一瞬思ったが、そうじゃないみたいだ。
「ごめん、変な事言って。オレのはいいからチェアリーの欲しい物、何か買っておいでよ」
彼は私が顔を真っ赤にしたのを見たのか、自分の事はいいからとまた遠慮する。
よく考えてみると、ユウは荷物を無くしていたのだった。外見はなんとか教会で見繕えても、着替えなどは無く下着に困っていてもおかしくない。
(あぁ、私ってなんでこんなに気が利かないんだろう・・・・・・)
彼が何に困っているのか、何を欲しがっているのか、気付いてあげれないのが悔しい。
「うん・・・・・・うん、いいよ。買ってきてあげる。ちょっとここで待ってて!」
私は悔しさと、恥ずかしさを抑え、真っ赤な顔を見られないように急いで商店街へ向かった。
「ふぅー」
広場から遠ざかったところで、一息ついた。
(彼のパンツを買うって事は、これはもう恋人以上・・・・・・夫婦って言ってもいいんじゃないの)
たとえ着替えが無くて困っていたのだとしても、パンツを買ってきてほしいと頼むという事はそれだけ私に心を許して甘えてくれた証拠ではないのか?そうなら嬉しい。
(むふーぅ!)
私は鼻息荒く、衣料品を扱うお店へ入った。
店内はお店の人以外は誰もいなかった。ひと目を気にすることなく買えて好都合だ。
そんなに広くないお店だが、ちょっとした日用雑貨も置いてあり、衣料品関係なら最低限のものは大概揃う。
お店の中を少しうろつくと男性用品がまとめて置かれている棚を見つけた。
(ぱんつ、ぱんつ、ぱんつ・・・・・・)
それは人目をはばかることなく、堂々と積み上げられていてすぐ見つけることが出来た。
目に付いた木綿で出来た白いパンツを手に取る。だけど、そこに張られた値段にビックリした。
(安っ!)
私が身につけているものより半値以下で買える。しかも、無造作に紐でくくられていて3枚まとめての値段だ。今まで男性用品なんて見ることは無かったので、なぜこんなに安いのか分からず衝撃的だった。
(安いに越した事ないよね)
そう思い、白いパンツを持ってその場を離れようとした時、隣に2枚組で同じ値段のショートパンツタイプの物が置いてあるのが目に止まった。
(ユウはどんなパンツを穿いているんだろう?)
男性にだって好みはあるはずだ。いくら安いからといったって、気に入らないものを買う訳にはいかない。
一旦、帰ってユウに好みを聞いてこようか?一瞬そんな考えが浮かぶ。
(ばっ、バカじゃないの!!そんな事聞けるわけないじゃない!)
冷静になれ私っ!
プルケに酔ってしまい、まともな思考が出来ていないのかもしれない。
棚を良く見てみると他にも様々な形のものが売られているのに気が付いた。中には目を覆いたくなるような、どうやって穿くのか分からない小さな布きれまで売られている。
どれにしようか迷って、私は1つの答えに行きついた。
(私の好みでいいはずよね?)
彼とはこれから一緒にやっていくのだから、遠からず彼の下着姿を見る事になる。見る側である私の好みで選んでいいはずだ。
そう思い黒色のショートパンツタイプに決めた。私が身につけているものよりだいぶ安かったので、まとめて4枚買う。
ユウの下着を買ってもおかみさんから預かった赤い魔宝石で支払うと、まだまだ残金に余裕がある。余った分で私も下着を新調しようと考えた。
(遠からず・・・・・・)
来るであろう、その時の為。
女性用品は男性の物より2倍は展示場所をとって置いてある。色々な柄や形のものが売られ目移りしてしまう。
いつもなら私はお金に余裕が無いので、値段重視の白色でシンプルなものを選んでいる。
(どれにしよう・・・・・・)
”その時”の事を考えて選ぶとなると迷ってしまう。
やっぱり、清潔感のある白?爽やかな薄い水色もいいかもしれない。それとも可愛らしさを出すために薄いピンクとか?どうしても無難なものに目がいく。
(少し冒険してみようかな?)
真っ赤なショーツが目に止まり、手に取ってみた。
その赤い下着をつけて彼の前に立っている姿を想像してみると、私の顔も真っ赤になるようだった。
(だめ、だめ、まだ早いっ!)
私は赤いショーツを置き、その隣の黒いセクシーな下着を手に取った。さっき選んだ彼のパンツと色がお揃いでいい気がする。
その黒い下着を彼が見た時にどう反応するか妄想してみた。
(ああぁぁぁああっー!ダメ!ダメ!)
こちらから誘っているように思われたくない。やむを得ず黒い下着も諦めた。
(やっぱり、無難なのがいいよね)
そう思い直し、いつもの白いパンツに手が伸びたが、ふとその隣にあったリボンがワンポイントになっている白いショーツが目に止まった。
私は、ほんの少し値段の高いリボンの方を手に取った。




