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第4章4-7「ユウのターン」

4-7


・ユウのターン


(今日はどうしよう・・・・・・)

朝ごはんを食べるため中庭のベンチに腰を下ろしたオレは、座った拍子にため息をつきかけて飲み込んだ。

今日こそはスライムを倒しまくらないと、色々ヤバイと思っていたのに朝寝坊はするわ、そのうえ街の外に出られないわで出鼻をくじかれてしまった。

門が閉鎖されているのだからしょうがないといえばそうかもしれないが、自分のことよりパーティーを組んでくれているチェアリーに迷惑をかけていることが心苦しい。

だからオレが気落ちしている場合じゃない。ため息などついたら彼女にいらない気遣いをさせてしまう。


「はい、サンドイッチ」

チェアリーが笑顔でサンドイッチを差し出してくれた。

「ありがとう」

寝坊したオレを責めることなく、笑顔を向けてくれる。

(天使かよ!)


昨日の事で既に気を使わせてしまっているのだろう。

スライムに危うく殺されそうになった事はもういい。良い教訓になったと考える事にする。それよりも今は彼女に何か報いねば、という気持ちの方が強い。


オレは沈んだ気持ちを奮い立たせ、その勢いでサンドイッチを頬張った。

(ん?この具なんだろう)

彼女の優しさを噛みしめるようにサンドイッチを食べ進めるうちに、具に入っている肉の食感に何か違和感を覚えた。


サンドイッチは小ぶりのパンが半分に輪切りにされ、具にはキャベツと細く裂かれた肉が挟まれている。キャベツは千切りにされ、その味付けは甘酸っぱい。色々とハーブが入れられているようで風味も良く朝食にはちょうどよかった。問題は肉の方だ。

その肉は見た目、鳥のささ身を裂いたように見える。味や食感も鶏肉のようだったが、噛んでいるとしっとり?というか、ねっとり?とした食感で今まで食べた事の無い肉の噛みごたえなのだ。


オレがサンドイッチをじっと見ているのを不思議に思ったのか、チェアリーが話しかけてきた。

「どうしたの?口に合わなかった?」

「いや、美味しいよ。ただ、この肉なんの肉かなと思って」

するとオレの疑問に間を置くことなく、すぐ答えが返ってきた。

「ウサギじゃない?」

「うさぎ・・・・・・」

「ウサギの煮込みはここの食堂の名物だよ。ほら」


彼女はオレにスープを差し出す。

「これもウサギの骨でダシを取ったものだと思うよ」

そのスープは透き通っていたが、表面には動物性のものと分かる黄色で大粒の油玉が浮いている。具にはニンジンやタマネギがゴロゴロ入っていて、ウサギのものらしい肉も見えた。


(・・・・・・食べるんだ、うさぎ)

ウサギだと分かってしまうと少し抵抗があったが差し出された物を食べない訳にはいかない。

これも異世界の洗礼かと、受け取ったそのスープをゆっくりすすった。


ズズズッー

(おぉ!)

オレの表情を読んで、彼女が言った。

「おいしいでしょ」

「ああ、美味しい」

あのつぶらな瞳のウサギを思い浮かべると心が痛むが、そのスープは綺麗に澄んだ色をしている割にはとても風味が良く、ダシが効いていて美味しかった。


彼女もオレの言葉を聞き、満足気にスープをすする。

オレも残りのサンドイッチを頬張りながら、スープで流し込んだ。


(誰かと一緒に朝食を摂るなんて久しぶりだな)

社会人になって、一人暮らしを始めてからはずっと一人だった。一人というのは気楽であるがゆえに、生活は乱れがちになる。朝は少しでも寝ていたくて朝食は抜くことが多く、摂ったとしてもインスタントコーヒーを飲むくらいだ。


(こんな良い子と一緒に朝食を食べれるなんて・・・・・・)

隣に座っているチェアリーを眺めた。美人で気遣いが出来て、優しい。オレなんかとは釣り合いが取れない、完璧な子だ。そんな彼女と隣に座って食事できること自体、パーティーを組んでいなければありえない光景だ。


彼女はオレの視線に気付くと、微笑んでくれた。

(ぐはっ!勘違いするな!あくまでパーティーメンバーだから!)

彼女の親切心を裏切る訳にはいけないと、自分の理性に言い聞かせる。


目を合わせた彼女が聞く。

「今日、どうする?」

それが問題だ。街の外に出られないのだから、やれることが無い。おかみさんはすぐに門の閉鎖は解除されるんじゃないかと言っていたが、それまで宿でゴロゴロしているというのもタダで泊めさせてもらっている身としては、居心地が悪い。


オレとしては街を散策をしてみたかったが、こちらの都合に彼女を付き合わせるのも気がひける。

(パーティーって戦闘以外はどうしているんだろう?)

家族や恋人じゃあるまいし四六時中行動を共にしている訳じゃないはずだ。モンスターを倒しに行く時以外はお互い自由にしててもいいんじゃないか?


そう考えた時だった、食堂の方から大きな体を揺すっておかみさんがやって来た。

「アンタたち、ヒマだろう?ちょいとお使い頼まれてくれないかい?」

まるで従業員に使い走りでもさせるような口調。

少しわだかまりを覚えたがタダで泊めさせてもらっているうえ、朝食まで用意してもらったのだからしょうがない。


「うん・・・・・・お使いって?」

チェアリーも少し不満そうに返事をした。

「今日はお客が引きそうにないから、手が空かなくてねぇ。代わりに仕入れに行ってきて欲しいのさ」


「どうする?」

チェアリーはオレに判断をゆだねたが、おかみさんの頼みごとを断わってまでしなくてはいけない用事など無い。言われたように今日はどうせヒマなのだ。

「いいんじゃない?」

オレの言葉にチェアリーは頷いた。


「急ぐことはないから、その辺ぶらつきながら夕方までに戻ってくればいいよ」

そう言ったおかみさんはチェアリーを手招きして、食堂の方へ行く。

「食器返してくるから、ユウは出かける準備してて」

チェアリーもおかみさんの後に付いて行ってしまった。


(とりあえず、今日やることが出来たな)

オレは身支度の為、部屋へ引き返した。

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