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第4章4-4「ピコのターン」

4-4


・ピコのターン



ガラガラガラ・・・・・・


エルフ達の住むシエルボの町から直通でコッレの街へと向かう乗合馬車。私はそれに乗り込み、静かに揺られていた。

大型の客車には朝一番の出発とあって、乗っているのは行商人の姿が目立つ。

エルフ達が作った加工品を買い付けてコッレの街で売りさばくのか、皆大きな荷物を抱えている。きっとハーブティーか何かを仕入れたのだろう。馬車の中には微かにハーブの甘い香りが漂っていた。


(それにしても・・・・・・狭い)

10人乗れば満席になる馬車の中には15,6人が乗ってひしめき合っている。

向かい合わせに配置されている長椅子に私は運良く座ることが出来たが、両脇にヒューマンの大柄な男性が座ったことと、膝に乗せ抱えるようにして持っていた自分のリュックに前方も塞がれ、小さな体は座席に埋もれてしまった。


狭いのはしょうがないと諦め、朝早かった事もあり少し仮眠をとるため目を閉じて、じっと馬車に揺られている。

「その荷物、棚に上げてもいいですか?そしたらもう一人座れるでしょう」

「ん?」

「いや、これは・・・・・・」


ぼんやりと男性達の話し声が聞こえたので顔を上げると、私のリュックに手をかける男と目が合った。

「なに?」

「おっ!・・・・・・女の子だったのか」

埋もれていた私に気付かず、まるで座席に荷物が乗せてあるように見えたのだろう。私が睨むと、その男は苦笑いしてごまかした。


座れなかった人は荷物を床に置きそれを支えにして、席と席の間の通路に立って揺られている。中には自作の背負子だろうか?自立するように作られたその背負子に腰かけるようにして揺られている人もいる。きっと乗合馬車に慣れているのだろう。


皆、立ったままの態勢でバランスをとりながら長時間も揺られ続けるのかと思うと、座れて良かったと思う。

だが・・・・・・

(やっぱり、歩いて行った方がよかった)

気楽に一人で歩いていたほうが私には合っている気がする。


無理して満員の馬車に乗ったのは、エルフの長がなぜ黒髪の男性に会いたがったのか気になったためだ。

長には「無理はするな」と言われた。そんなに急ぐこともない用事かもしれない。しかし、長からプラントハント以外で頼まれごとをされるなんて珍しいので朝一でシエルボを発ったのだ。

早ければ昼頃にはコッレの街に着くはずだ。


狭い思いをしながら馬車に揺られ、うつらうつらとしていると、ガクンっと揺れて馬車が停車した。

(・・・・・・もうついたの)

まだコッレの街に着くには早すぎる気がする。


なぜ馬車が止まったのか分からず、乗客がざわつく。

「なんだ?」

「モンスターか?」

誰かが言ったモンスターという言葉に眠気が吹き飛んだ。いつでも外に出られるように私は心構えした。


馬車であればモンスターを発見したらスピードを上げて逃げるのが普通だ。大概はそれで逃げ切れる。止まったという事は、何か想定外の事が起きたに違いない。

窓から外を確認してみると、私が乗っている馬車の前方には他に何台もの馬車が止まって渋滞を起こしていた。

街道を引き換えしてくる馬車までいるようだった。


その引き返してくる馬車を御者が呼び止めて話している。馬車の外なのでその声はよく聞き取れないが、何かが起きている事は確かなようだ。

御者が客車に乗り込んできた。

「皆さん!コッレに向かう街道がこの先で通行止めになっているようです。何があったのか分かりませんが、待っていても通れるかどうか分かりませんし、この馬車はコウの町まで引き返します」

御者の知らせに客車の中がざわめいた。

「あ~ぁ」

「マジかー」

「申し訳ありませんが、コウの町で状況が掴めるまでお待ちください」


今、この馬車に乗っているのは行商人が多い。皆、のんびり旅をしている訳ではない。商売がかかっているのだ。予定がくるったことで落胆を隠せない。

だが、文句を言う人はいなかった。通行止めの理由はモンスターである可能性は高い。ここで待っているより町まで引き返した方が安全だ。命あっての物種という言葉を商人はよく分かっている。


けど私は商人ではない。冒険者だ。モンスターなどに後れをとらない自信がある。それに誰かが戦っているのなら戦力になれるだろう。

そう思い、ここで降りようとしたのだが・・・・・・

(あれ?お尻が抜けない!?)


大柄な男性の間にピッタリ収まっていた私は、腰が上がらず身動きがとれなくなっていた。しかも、足は床にほんの少し指先が届いているだけで踏ん張りがきかず、抱えているリュックのせいもあって立てない!

モゾモゾと、もがいているうちに御者は席に戻り馬車が動き出した。


ガラガラガラ・・・・・・


(えっ!ちょっ、待って・・・・・・)

引き換えす為に馬車が路肩にはみ出して大回りを始めると、舗装されていない地面を車輪が転がりガタガタと音を立てて揺れる。


ガタガタ、ガタガタ、ガタガタ・・・・・・


(お゛っお゛っお゛っお゛っお゛っ、わぁぁぁあーーー)

モゾモゾ動いていたせいで今度はお尻の収まりが悪く、座席が容赦なく私のお尻を突きあげてくる。

(つッ!次わぁ、ああ!歩きにしよぉーーおおぉぅ!)

そう私は誓った。

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