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第3章3-7「ピコのターン」

3-7


・ピコのターン


「ふわぁ~ぁぁ・・・・・・」

一旦は体を起こしたものの、大きなあくびをしたら頭がボーっとしてしまい、私はもう一度ベットへ身をゆだねた。


パフッ!


仰向けになったそこはちょうど窓から射し込む光が顔を照らしていて、目をつむっていてもまぶしい。

モゾモゾとイモムシの様に足を伸び縮みさせて移動し陽射しから逃げる。このベットはピコ族の私には余りある大きさだ。


「はぁ~・・・・・・」

もう一度気持ちよく眠りかけたところで、隣の部屋からだろうか?かすかに話し声が聞こえてきて、眠りの邪魔をする。

『珍しいねぇ・・・・・・お祈りに・・・・・・んて』


(う~んっ・・・・・・うるさい)

私は枕で頭を抱えるようにして耳を塞いだ。

・・・・・・

静寂がおとずれる。

再びウトウトしはじめ、枕を抑える手が緩むとまた声が聞こえてきた。

『・・・・・・ないからね・・・・・・と食べるんだよ』


(うぅぅ、意地でも起きないからぁ)

久しぶりに味わうベットの心地よさを思う存分満喫したい。私はこの一カ月ほど聖都ケイから西へ行った地に広がる人の立ち入らない山でモンスターを狩っていたのだ。

未開の地を分け入り、西へ西へ。

モンスターを倒すことについては問題なかった、戦士として慣れている。問題なのは寝る時だ。

ソロで冒険者をしている私には寝ている間、見張りをしてくれるパーティーメンバーなどいない。


だからモンスターから身を守る為、寝る時は木の上に登り、ハンモックを掛け寝ている。木の上で生活しているエルフと同じようなものだ。

4メートルも登ればモンスターの間合いには入らないし、何かの拍子に気付かれたとしても奴らは木を登れない。


ハンモックで寝るのも悪くはない。ないのだけれど・・・・・・

木の上だから見晴らしもいいし、ハンモックの布にすっぽり体を包んで寝ると妙な安心感がある。

ただ、難点は寝返りがうてない事だ。じっとくるまって眠っているうちに手足はこわばるので思いっきり伸びをしたくなる。無理に伸ばすことも出来なくはないけど、そんな事をしたらバランスを崩して木の上から落ちてしまいそう。だからパンに挟まれたソーセージのごとく朝まで体を一直線に保ってハンモックにくるまれていなければいけない。


もう1つ難点がある。それは雨に濡れる事。雨の日はモンスターが動けなくなるため襲われる心配は無くなる。けど、夜に降られると寝ることができず最悪だ。

雨が上がるのを寝ないで待っていたら朝になり、日の出とともにハンモックで寝たこともあった。そうなるとその日は一日潰れる。


苦肉の策で油紙を何枚も張り合わせて自作の防水シートを作り、ハンモックの上に張って寝たこともあったが、上からの雨はしのげても横から風が吹き付ければ徐々に濡れてしまい、起きた時にはおもらしをしたようにパンツがびしょびしょになっていた時もあった。


「はぁ~ぁぁ・・・・・・」

私は手足をめいいっぱい広げて、伸びが出来るベットのありがたみを噛みしめた。ヒューマンサイズのベットはピコ族の私が手足を伸ばしてもはみ出さない程大きい。


探索をする時、ヒューマン達は木の上で寝るという方法を取らない。彼らはパーティーを組んで、安全を確保しつつ野営をして地道に進んでいく。

木の上で寝ているのは身軽で筋力が強く、木登りを苦としないピコ族くらいだ。エルフも森で住むために木の上に家を作るが、ハンモックだけで外で寝ることはしない。


木の上は安全と言っても、絶対ではない。ある朝、目覚めると巨体を誇るギガスが側まで近づいていて肝を冷やしたこともある。

それでも、ピコ族がパーティーを組まずソロ冒険者が多いのは、一人の方が身軽で融通が利くからだ。はっきり言ってしまえば他人は足手まとい。組んだとしても同族のみのパーティーだ。

その為に孤高、プライドが高い、媚びない、変わり者などと他の種族からは人付き合いの悪いイメージを持たれている。


私もこれまで一人でやってきた。しかし、今回の冒険で少し心境の変化が起きた。パーティーを組んでみようかと思いはじめたのだ。

例えばモンスター相手に1対1なら勝つ自信はある。問題はモンスターが群れて襲ってきた場合だ。こういう時、一人では対処しきれない事もある。私はこれまでそういう場面に何度も出くわし、その度に死線をくぐり抜けてきた。誰かが背中を守ってくれればそれはとても心強いに違いない。ソロの限界は随分前から感じている。


パーティーを組んでみようかと思ったのは、今回の冒険でやたらとパーティーを組んだ冒険者達を見かけたせいもある。彼らが協力してモンスターを倒している姿を木の上から眺めていたら、パーティーも悪くないかと思えてきた。


(それにしても、なんであんなに冒険者達がいたのかしら?)

西の山は冒険者と滅多に出会う場所ではない。それなのに何組かのパーティーを見かけた。

いつも未開の地に一人でいると世情にうとくなってしまう。たまには街に帰って情報を仕入れなくてはいけないと思い、今回の冒険は切り上げてきたのだ。


昨日は昼過ぎに聖都ケイへ到着した。そのままケイで宿を取っても良かったのだけれどコッレまで足を伸ばし、いま泊まっているこの宿屋「ラビット・イン」には日も沈みかけた頃たどり着いた。


「ラビット・イン」ウサギの巣のように奥へ細長い建物がこの宿屋の名前の由来らしい。

だが、ウサギについては食堂で出されるウサギの煮込みが絶品で有名なため、食事だけの客にはそちらが名前の由来と勘違いしている者も多い。

私もそのウサギの煮込みを食べたくて、わざわざコッレまで足を伸ばしたのだ。これまでも近くを通った際はいつも立ち寄るようにしている。


(お腹が減ったわ・・・・・・)

ウサギの煮込みを思い出したら、睡眠欲より食欲がまさってきた。

ゴロゴロしているうちに、朝食時はとっくに過ぎている。だけど日の射し込み具合からしてお昼にはまだだいぶ早そうだ。


昼までゴロゴロしてから宿を出るつもりだったのをやめ、私は朝食兼昼食を摂るため出発の準備をすることにした。

「ウ・サ・ギ・の・お・肉ぅ♪」

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