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第3章3-6

3-6


・ライリーのターン


バフッ!

修道院へ戻った私は部屋に入るとそのままベットへ倒れ込んだ。

「ハァー、疲れた」

まだ日は明るかったが、疲れを残してはいけないと、早めに石集めは切り上げて帰ってきたのだ。


無理はしていないつもりだ。それでも重い石を運び続けた事で体中の節々が痛む。

(まだ明日もあるというのに、)

遠征帰りからそのまま勇者様の監視にあたり、精神的に疲れているところへ今度は石運び。目を閉じればすぐにでも寝てしまいそうだ。


(夕飯まで・・・・・・少しだけ・・・・・・)

コン、コン、コン!

ウトウトしはじめていたのに、扉をノックする音が眠りを邪魔する。


扉を開けると、ココとアデリナが立っていた。

「ただいま戻りました」

「あなた達早かったのね」

「ライリー様も早いじゃないですか、もしかして寝てました?」

ココが痛いところを突いてくる。


「入りなさい」

眠りを邪魔されたうえココに指摘され少しイラっとしながらも、二人を部屋に招き入れる。

報告を聞こうと私がイスに腰かけると、アデリナは立って姿勢を正しているのにココはベットに腰かけくつろぎはじめた。


アデリナが構わず報告を始める。

「勇者様はこの近くの宿に先ほど泊まりました」

「教会を出て、左に行った先ですよ」

ココが補足する。


「宿に泊まるお金はどうしたの?」

彼は今朝、私に献金していった。その時の言葉からして手元に多く残していたようには思えない。

「はい。エルフの女性に払ってもらったようです。あ、昨日から勇者様を追いかけていたエルフの事です。外から様子をうかがっていたので詳しくは分かりませんでしたが、どうやら彼女もその宿に泊まっていたようですね」


「あのエルフ、昨日出会ったばかりなのにもう自分の部屋に勇者様を連れ込んだんですよ」

ココはそういう事に関心があるのかニヤニヤしながら言った。

(人の恋路をどうこう言うつもりはないわ)

私はもうあのエルフがどうしようと構わない。こちらの邪魔にさえならなければそれでいい。


「それで、彼は昼間どうしてたの?」

「はい。今朝教会を出た後、勇者様はギルドへ向かわれ冒険者登録をしたようです。私達がギルドへ到着した時には建物から出てくるところでした」

「そこでエルフが声をかけたんだよね」

「ええ!」

アデリナが嬉しそうにココに返事する。


その返事に応えるようにココは腰かけていたベットから降りて小芝居を始めた。

「待って!私の勇者様っ!昨日からずっとあなたの事が頭から離れないのっ!私もあなたと一緒に旅がしたい!私はもうあなたと離れない!」

身振り手振りでセリフを言ったココは、最後アデリナに抱きついた。

「もう!そんな事言ってないし」

抱きつかれたアデリナも楽しそうにしている。


「それで、」

私がトーンを抑えた声で報告の続きを促すと、アデリナはココを引き剥がし姿勢を正して報告を続けた。

「すいません・・・・・・ギルドを出た後、二人は南門へ向かいました」


ココがまた口を挟む。

「後ろから監視するのが恥ずかしくなるくらいラブラブでしたよ。勇者様がエルフの側にピッタリ寄り添って歩いて、楽しそうにおしゃべりしてるんです。しかもチェアリー、ユウってあだ名で呼び合ったりして」

「チェアリー、ユウ?」

「はい、勇者様の名前が分かりました。本名はユージン。エルフの方はアリーチェです」

「そう。なら私達もこれかは勇者様の事をユウと呼ぶことにします。部外者に私達が”勇者様”と言っている事を聞かれると面倒ですからね」

「分かりました」


ココが興奮気味に続ける。

「それにしてもあのエルフやり手ですよ。あんなにすぐ仲良く出来るなんてビックリです」

「あなたがそれを言う?」

「私は結構、人見知りするタイプですよ」

アデリナは隣で笑っている。


「そうだ!」

何を思いついたのか、ココが身を乗り出す。

「私達もあだ名で呼び合いません?」

彼らに触発されたらしい、妙な提案をしはじめた。

「そうだなぁ、ライリー、ライ、リー、リーライ、ライライ、ラリー・・・・・・ライリー様はあだ名を付けるのが難しいですねぇ。うーん、じゃあリーさんで!」

(ハァ・・・・・・)

私はココの言葉を無視した。


「あれ?なんか言ってくださいよぉ、リーさん疲れてます?」

アデリナは黙っている私の雰囲気を察したのか、ココにこれ以上喋らせまいと言葉を断ち切る様に報告を再開した。


「勇者さ・・・・・・ユウは街を出た後、街道を南に少し行った所にある河原でモンスターを探していました」

「あら、すぐ近くにいたのね。私達はすぐ下流で石を集めてたのよ」

「へー、そうなんだ」

ココはまたベットにストンと腰を下ろした。


(・・・・・・おかしい)

ココが私の言葉に対して反応が薄かったのが気になった。「近くにいたのなら呼んでくれればいいのに」とかなんとか言いそうなものだが。

(少し無視したくらいで、おとなしくなるような子ではないはず)

私はアデリナの方を見た。彼女は目だけ下を向け視線を合わせようとしない。

疑問が疑いへと変わる。


さっきまでの浮かれた空気が二人からは消えた。

「えーっと、河原でチェアリーが何匹かスライムを倒していたようです。今日の成果もあがった為か、2人は早めに切り上げ街へと戻ってきました・・・・・・」

「帰る時には、二人で手を繋いで更にアツアツになってましたよ。で、そのまま宿へゴールインっと・・・・・・」


「・・・・・・」

あえて私が黙っていると、2人は急におとなしくなってしまった。

「アデリナ」

「ハイッ」

名前を呼んだだけなのに声がわずかにうわずっている。彼女は緊張しているようだ。そしてココはそんなアデリナを一瞬、睨んだ。私はその様子を見逃さなかった。


「アデリナ。ユウの戦いぶりはどうだった?」

「えーっと、その、」

「苦戦っ、してましたよ」

「ココ、あなたは黙ってなさい。アデリナ、報告を」


アデリナがおずおずと喋り出す。

「えーっと、ユウは、スライムを見つけたのですが、その・・・・・・剣を抜かずに見ていたもので、あー、油断したのかスライムの体当たりを受けて、地面に倒れ込むとそのまま顔を覆われて・・・・・・」

話の途中でココが割って入ってきた。

「まさかスライムにやられるなんて、思ってもみないじゃないですか!」


「で、ココ。あなたはどうしたの?」

「急いで助けに向かいましたよ!でもアデリナが遠くから監視してたから間に合わなくて・・・・・・」

「ちょっと!ココちゃんが近くにいたら見つかるって言ってたんでしょ」

「あんな見晴らしのいい場所じゃ、隠れる所なんて無いからしょうがないよ!」


私は二人の言い争いを辞めさせるべく、ドスの効いた声で言った。

「ココ。」

「ハイっ!」

「私は今朝、あなたが彼を守る様にと念を押しましたね」

「はい・・・・・・でもっ!勇者様はエルフが助けてくれたし、危なかったけどそれで絆も深まったみたいだし、 怪我の功名というか・・・・・・ほら!エルフの格言にあるじゃないですか”雨降ってモンスター固まる”って」

私は言い訳を続けるココを直視した。

「やだなぁライリー様、目が笑ってない・・・・・・アハハ、」


(さて、どうしたものかしらね)

二人にどのような罰を与えようか考えていると、そこへ突然鐘の音が鳴り響いた。

ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・・・・

それは教会が鳴らす鐘の音ではない。直接頭に響いてくる。

ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・・・・


「え!?なに?福音?」

「なんでこんな所で!?」

二人にもその鐘の音は聞こえているようだ。

(始まったわね)


・・・・・・ゴーン、ゴーン、ゴーン。


鐘の音が鳴りやむのを待ってから、私は二人に言った。

「丁度いいわ。あなた達、明日の監視はいいから私についてきなさい」

状況が掴めず、二人ともキョトンとした。


ココが尋ねる。

「なにがあるんですか?」

「あなたも楽しみにしてたでしょ?期間限定イベントよ」

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