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第3章3-3

3-3


・ライリーのターン


「本当に何から何までお世話になりました。」

「お気をつけて。貴方の旅の安全を神は見守ってくれることでしょう」

「それじゃあ」


勇者様は旅立った。


私は教会の入り口から彼が歩いていく後ろ姿を見送った。

(本当に順応力の高いこと)

彼は街の外へ出たいのだと言っていた。その行動力ゆえに、またしてもこちらの思惑通りには事が運ばなくなってしまった。せっかく教会へ連れ戻したというのに。


(でも、なぜ急に外へ出ようと考えたのかしら?)

倉庫で彼から「外に出たい」と聞き、私は驚きつつ彼ならありうるかと思い、有り合わせだったが防具だけでも格好をつけて送り出した。

望むだけこの教会で保護するつもりでいたのだったが・・・・・・


彼の意思を無視して留まらせようとすれば、印象が悪くなり教会が欲しがっている知識を聞きだせなくなってしまうかもしれない。そう判断したのだ。

(せめてこちらの仕事が終わるまでじっとしていてほしかったわ)


そもそも隠れて支援すること自体が難しい。

前回の失敗を踏まえての事だとは理解していても、これがはたして上手くいくのか私にはまったく予想できないでいた。


気が滅入りそうになりながら、教会の敷地を出ていく勇者様の背中を眺め・・・・・・ふと、私の横をふらふら通り過ぎていく女性がいた。

その姿には見覚えがあった。昨日、彼の後を付けていたエルフだ。

(またっ!)

余計な事をされないように呼び止めようと思ったが、私は出かけた言葉を飲み込んだ。横を過ぎさまに見えた彼女の頬には涙が流れていた。


彼女の姿に昔の記憶が重なる。


「よろしいのですか?」

背後からアンスが声をかけてきた。

(よろしくはないわよ・・・・・・はぁ、)

思い通りにはいかない事態がもう1つ増え、より気が重くなった気がする。


アンスには私の心情を悟られないよう、努めて平然と答えた。

「いいのよ」

昨日、見ていた限りではあのエルフが悪意を持って彼に近づいているようには思えない。見ていれば分かる、彼に思いを寄せているのだろう。

その事にむしろ、同情しなくもない。

(苦労するわね、あのエルフ)


私は振り返った。そこにはアデリナとココも控えていた。

「アデリナ、彼の後を追いなさい。それから・・・・・・」

アンスの方に視線を向けると、その視線の間に割り込むようにココが身を乗り出してきた。

「・・・・・・」

私が無言でココを見ていると、ココも無言で見つめ返し、今度は勢いよく手まで上げる。


「いいわ、ココ。アデリナと行きなさい」

「やった!」

「彼は街の外に出るつもりだから、あなた達も装備はちゃんと整えてから行くのよ」

二人はシスターの正装姿だ。


「ライリー様はどうなさるんですか?」

「私は準備があるから、これからエリアス達と合流します」

それを聞き、私の目が届かない事を喜んでいるのかココはニコニコとしだした。

(きっと遊び半分でいるわねこの子)


ココが羽目を外さないようにと念を押す。

「ココ、もしもの時はあなたが彼を守るのよ?いいわね」

「ライリー様は心配性だなぁ、街の外と言っても今はモンスターもほとんど見かけないし大丈夫ですよ」

確かにココが言ったようにモンスターは少ない。だから私も大丈夫だろうと踏んで彼を送り出したのだ。


しかし、ココでは心配になり私はアデリナにも念を押しておいた。

「アデリナ、頼んだわよ」

「はい、お任せを」

にっこりアデリナは微笑んだが、私がアデリナに任せると言ったことに対して不満だったのか、逆にココがしかめっ面をする。


そんなココを無視して、私は皆にも念を押しておいた。

「彼のサポートは大事だけど、優先順位を忘れてはダメよ。私達の役割は分かってるわね?」

3人を見渡すと、無言でうなずく。

私の役目はドラゴン退治だ。あくまで勇者様のサポートは二の次にするとジューリアにも断ってある。


そうは言っても、やはり彼の事が気になりもう一度アデリナとココに確認をした。

「いきなり遠出はしないと思うけど、もし他の街に行くような事があればそのまま彼に付いて行きなさい。その時は教会を頼って私にすぐ報告を入れるように」

「ハイ」

アデリナが素直に返事する。


「今晩、彼がどこに泊まるつもりなのか見届けてから戻ってくるのよ。もし野宿をするつもりなら声をかければまたついてきてくれるかも知らないわ。それから・・・・・・」


私がこまごまとした指示を出し始めたのをみて、ココが苦笑いする。

「ライリー様、お母さんみたいになってますよ」

ココに変な指摘をされ、私はそれ以上は言葉をつぐんだ。

(この子はまったく!)


確かに心配し過ぎたかもしれないとは思ったが、用心するに越したことはないはずだ。

(やっぱり少し緊張感が足りないようね)

まるでココはこれから遊びに出かけるといった雰囲気だった。


その緊張感の足りないココが突然、間の抜けた声を上げる。

「あ!」

ココが指さしながら言う。

「お迎えが来ましたよ」

指さした方を見ると教会の門の前に、エリアスが乗る2頭引きの荷馬車が止まった。私が昨日、彼らに用意しておくようにと頼んでおいたものだ。


エリアスが馬車から降りてくる。

「ライリー殿、言われた通り準備してきました。早速行きましょうか」

「ええ、着替えてくるので少し待っていてもらえるかしら?」

「おや、ライリー殿も手伝ってくれるのですか?」

「人手は多い方がいいですからね。だけど・・・・・・」

フィンとメリーナ、それにパウルの姿が見当たらない。

私の視線に気づきエリアスが応える。

「あいつらは準備があるのでギルドの方にいます。すぐ来ますよ」

「そう。じゃあ私達も今のうちに準備しましょうか」

私はアンスの背中をポンと叩いた。

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