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第2章2-20

2-20


・ユウのターン


オレはチェアリーが魔法で火を起こした時の事を思い返した。

彼女はまず、何か小石のようなものをカバンから取り出した。それを手に握り人差し指を立てて、枯草に向けると「ファイヤー」と言った。指先が青白く光ったかと思ったら、もう枯草には火がついていた。


大体こんなところだが、魔法を使って火を起こすとは思ってもみなかったので何気なく見ていたし見落としがあったかもしれない。

だけど気になったのは握っていた小石だ。

(何かのマジックアイテムか?)

大概、魔法を使うには素質であったり、ゲームではMPと呼ばれる魔力だったりが必要だ。しかしアイテムに頼った方法ならオレにも魔法が使える可能性がある。


色々考えてみるが情報が足りない。オレは彼女がまた何か魔法を使ってくれないかと期待しながら様子を眺めた。

彼女の方はオレが驚いた様子だったのを気にしたのか、不思議そうにこちらを見ている。

(あまり見ていたら怪しまれるよな)


地面に積まれた流木の中から太めの物を手に取った。

(箸でも作るか)

父親と河原でカップラーメンを食べる時には、箸を自分たちで流木から削り出すのがお決まりだった。

わざわざ作らなくてもコンビニでカップラーメンを買えば割り箸を付けてくれるが、お湯が沸く間にちょっとした手間をかけるのが楽しかった。

箸を作る時には、ナイフを使わせてもらえるのも子供心にワクワクしていた。安物の折り畳みナイフだったが、それを握るとなんでも出来るような気がして、夢中で小枝を削り箸を作ったものだ。


オレは腰の剣を抜いた。

(折り畳みナイフとは、おお違いだけど)

まず、流木の上端に剣の刃を押し付け、石の上でコン、コンと流木を軽く叩きつける。

剣を少しづつ食い込ませているうちにピシッ!と、裂ける音を立て流木にヒビが入った。ヒビが入れば剣が食い込んで流木は落ちない。そしたら流木から手を離して今度は強く石に叩きつける。


ベキベキッ!

剣の厚みでヒビが押し広げられ、裂けるように割れた。

同じ要領で割っていき、箸にちょうどいい木片を作る。それを先端だけ少し削って整えてやれば出来上がりだ。

(ギルドのお姉さんも貸し出した剣がオレンジの枝払いに使われたり、箸を作るのに使われたりしているなんて思っても無いだろうな)


箸を作りながら横目で彼女の行動を観察していると、カバンから鍋やフライパンを取り出しはじめた。

(おぉ、冒険者っぽい)

”ぽい”ではなく彼女は冒険者だ。手慣れた手つきで準備を進める。

魔法の事に気を取られたが、料理を作ることが好きなオレは彼女が作ってくれるという昼飯にも興味がある。

(何を作ってくれるんだろう?)


道具を取り出し終えると、今度はバックからパンを取り出した。

「ねえ、これ火にかざして温めてくれる?」

彼女はオレにも手伝って欲しいようだ。

「ん、温めればいいの?いいよ任せて」

ちょうど箸を作ったところなので、オレは渡された細長いパンをアメリカンドックのごとく箸に挿して火にかざした。

焦げないようにクルクル回していると父親と焼いて食べたソーセージを思い出す。


彼女の方はフライパンでベーコンを焼き始めた。肉の焼ける香ばしい匂いが辺りに漂う。

(いいねぇ!)

思っていた以上に本格的な調理にテンションが上がる。

ベーコンが焼け始めた頃には、パンも表面にうっすら焦げ目が付きはじめた。

「もういいよ」

そう言われたので、オレが温めたパンを渡すと彼女はチーズと焼きたてのベーコンを挟んでくれた。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」


さっそく受け取ったサンドイッチにかぶりつく。

(いける!)

ケチャップやソースなどはかけてないが、ベーコンの塩気とチーズのコクだけで十分おいしかった。なにより、揚げたようにカリカリに焼けたベーコンの風味が食欲をそそる。

「うん、ベーコンがカリカリに焼けてて美味しいよ」

なぜか外で食べるご飯というのは何割増しかで美味しく感じる。しかし、外で食べている事やお世辞を抜きにしてもそのサンドイッチは申し分のない出来だ。チェアリーもサンドイッチを頬張り、ニコニコして満足そうだった。


サンドイッチを食べ終わると、彼女は来る途中で刈り取った草を取り出し、川に洗いに行った。

(あれ、食べるつもりだったのか・・・・・・)

確かアザミだったか?スーパーで売っている綺麗な食材しか馴染みのないオレにはどれも雑草のように見える。

(エルフ、サバイバル力高けぇ)

負けていられないと、オレは彼女用に箸をもう一膳削って作ってあげた。削り出すには長い剣は扱いにくいが、あるものだけで工夫するというのは、ちょっとしたサバイバル気分に浸れる。

「わぁ、ありがとう」

戻ってきた彼女はオレが作った箸を見て喜んでくれた。かまどを作ってあげた時もそうだが、彼女は何かしてあげると「ありがとう」と言って笑顔で喜んでくれる。そんな笑顔を見たくて、何かしてあげたくなったのかもしれない。

(男は単純だよなぁ)

美人の彼女を見ていると、自分の事とはいえそう思う。


その彼女は鍋を火にかけはじめた。アザミがどう調理されるのか気になり注目すると、

「ねぇ、これ洗ってきてくれる?」

コートのポケットからジャガイモを取り出し、オレに洗ってきてほしいのだと言う。


「いいよ」

とオレは快く引き受けたが・・・・・・

(なんで、アザミと一緒に洗わなかったんだ?二度手間な気がするんだけど)

チェアリーには少し抜けてるところもある。そう思ったことは言わないでおいた。

川でジャガイモを洗っていたら、なんだか可笑しくなってきた。

(どこからジャガイモ取り出してんだよ)

チェアリーはコートのポケットの中にジャガイモを入れていたのだ。まだそのポケットには、オレが取ってあげたオレンジも忍ばせている。

彼女はおしゃれでコートを着ているのではない。実用重視なのだ。ポケットは物をしまうために付いているのだということを実践している。

(エルフ、かっこいいなぁ)

彼女と初めてあった時、美人だと思ったがそれだけではなくどこかカッコよさも漂わせていたのは、そういうところから来るのかもしれない。


オレが笑いをこらえていると、後ろから彼女の声がした。

「うぉー・・・・・・」

(んっ?)

振り返ると、彼女の手元が青白く光っている!

(もしかして!?)

側に戻ってみると、空だった鍋に水が満ちているではないか!

「あー・・・・・・(見逃したぁー)」

魔法を使うところを見せないように、オレを遠ざける為ワザとジャガイモを洗いに行かせたのだろうか?

ちょっと疑いの眼差しでチェアリーを見る。

「ありがと。次は、ジャガイモを食べやすい大きさに縦に切ってくれる?」

しかし彼女は次の指示を出してきた。その様子は自然だ。ワザとには見えない。


鍋の中で揺れている水を見て1つ疑問が解けた。それは、この世界の水事情だ。

昨日教会に泊めてもらった時トイレに入ったのだが、そこが水洗トイレだった事に疑問を持ったのだ。あの街は丘の上に建てられている事は分かっていた。だから丘の上では水の確保が大変だろうに、トイレを水で流せることが意外だったのだ。

どうやらそれは魔法のおかげらしい。

1泊しただけでもこの世界の生活水準の高さが実感できた。見た目は中世の様式なのだが、便利な生活に慣れたオレでもそんなに不便さを感じないでいられる。水洗式のトイレだけでも驚きだ。

(わりと身近に浸透しているのかもしれないな、魔法は)

火をおこしたり水を出したり、その使い方は実用的だ。


そのうちまた魔法を見る機会もあるだろうと今見逃してしまったことは諦めて、オレはジャガイモを切るため彼女からナイフを受け取った。

「皮は剥かなくていいの?」

「うん、皮付きのままで大丈夫」

何を作るつもりかは分からないが、オレは言われた通りジャガイモを縦に切った。

切ったジャガイモをかまどの石の上に並べていく。

並べ終えるうちに鍋のお湯が沸いてきた。

「お湯沸いてるよ?」

「え、あっ、うん・・・・・・」

「ジャガイモはどうするの?茹でる?」

お湯が沸いたので茹でるのかと思って聞いたが、

「茹でちゃダメ!フライパンに並べて」

彼女はさっきベーコンを焼いたフライパンを差し出してきた。


フライパンにはベーコンが1枚とその油がそのまま残っていた。

それを見て、彼女の意図していることが分かった。ベーコンの油でジャガイモを焼くのだ。

(エルフ、やるなぁ!)

無駄なく料理の手順を考えていたことにオレは感心した。

ベーコンの油で焼けば風味がジャガイモに移るし、油で揚げた様にカリカリに焼けるはずだ。

ジャガイモをフライパンへ綺麗に並べ終え、焦げないように少し火元から外してかまどに置いた。油が結構残っていたので、じっくりと低温で揚げるように焼く。

時間はかかりそうだが焼けるまでじっくり待っている事が、とても贅沢な時間に感じる。


待っている間、彼女の方を盗み見た。、

沸いたお湯でアザミを茹でてからお湯を捨て、そのまま鍋で少し炒めるように混ぜたら、フライパンに残っていたベーコンを鍋へ移した。

(やっぱり無駄がない)

アザミに入れるためにベーコンを残してあったのだ。彼女の手順の良さに思わずうなる。それにアザミは来る途中で刈ったものだ。最初から献立には入れてなかっただろうに、応用をきかせて調理できるだけの腕前を彼女は持っている。


アザミが炒め上がったのか、彼女はまたバックをあさりだすと紙包みを取り出した。その包みの中からは小石が何個も出てきた。

(あれって!)

思わず注目したオレに気付いて、彼女は目の前に包みを差し出してきた。

「したいの?」

「いいの?」

オレはその小石を1つ摘まんで取った。


手に取った小石はさっき炎を起こした石とは違うようだった。それは2㎝程の大きさで角ばっていて、色は水晶の様に透明なところもあれば、すりガラスの様に白く濁った部分もある。


「どうすれば・・・・・・」

興奮して思わず受け取ってしまったが、使い方が分からず困ってしまった。それに彼女が何に使うつもりで取り出したのか分からない。

見かねたのか、チェアリーが声をかけてくれた。

「岩塩使ったことないの?ナイフで削ればいいよ」

(岩塩?)

一瞬固まった。

「ああ、岩塩か」

平静を装ったが、心の中では叫んでいた。

(くっそーぉ!勘違いした!!)

彼女はアザミの味付けの為に塩を取り出したのだ!


ガリ!ガリ!

少し削って舐めてみる。

(しょっぱ!)

その辛さに塩であることを舌が納得した。

ズッー、ズッー、ズッー

オレは岩塩をナイフで薄く削ってアザミにかけてあげた。

「ありがと」

かけた塩をアザミと混ぜて馴染ませている彼女に不審がっている様子はない。オレは塩でよかったと胸をなでおろした。魔法の小石を渡されていたら使い方が分からない事を突っ込まれてアウトだ。

(助かったぁ)


軽く塩で味付けしただけだが完成したのか、彼女はアザミを鍋ごとオレの前に置いた。

(食べられるのだろうか?)

さっきまで地面に生えていただけの草に少し抵抗を覚える。しかし、出された物を食べないわけにはいかない。

箸で摘まみ、口へと運ぶ。

ぱく!

それは噛むほどにうまみが染み出し、後を引くおいしさだった。

(ベーコンのうまみか?)

何か違う気がする。確かにベーコンは入っているが、肉のうまみとは違い素朴なのだ。田舎で味わう山菜料理とでも言えばいいのか?ホカホカの炊きたてご飯に乗せて一緒にかき込みたくなるようなおいしさだった。


「うん!おいしいよ。アザミってこんなに美味しいなんて知らなかった」

「アザミ食べたの初めて?」

「食べられることも知らなかったよ。料理に詳しいんだね」

新しい味の発見にうれしくなり、箸が進む。

(ああ!ご飯が欲しい!)

やはりオレは日本人だ。サンドイッチだけでは胃の奥でまだ物足りなさを感じる。ご飯の指定席が胃にでき上がっているのだ。その空席をアザミの旨味が刺激して、ごはんをよこせと胃が急き立てる。

(くぅ~、今度ご飯が無いか探してみよう)

また1つやりたいことが見つかった。


ご飯の代わりを埋めるようにアザミを食べ進めているうちに、チェアリーの方はコートのポケットからオレンジを取りだした。

(出た、)

彼女のコートは食材入れなのだ。そんな仕草になんだかワイルドさを感じる。

取り出したオレンジをコロコロと手の上で転がし始めた。デザートにするのかと見ていると、それをナイフで半分にカットした。

(オレの分か?)

その半分をオレの前に差し出したものだから、くれるのかと思い手を出しかけた、その時だ!

オレンジは目の前で握りつぶされた!

(なっ!)

チェアリーが握りつぶしたのだ!


果汁が滴り、下で焼いていたジャガイモのフライパンへ流れ落ちる。

ジューーーーーウッ!!

豪快な音をさせオレンジの液体がフライパンの上で泡となって踊り、むせかえるほどの酸味をおびた水蒸気が立ち登った!

(オレのジャガイモ―――ッ!)

焼けるのを楽しみに、じっくり待って育てていたのに・・・・・・無残にもジャガイモはオレンジの果汁にその身を沈ませた。

「ごめん、驚かしちゃった?」

「うん・・・・・・少し」

彼女の意図はすぐに察しがついた、オレンジソースを作るつもりで果汁を注いだのだろう。しかし、

(オレは塩で味付けしただけでよかったのに・・・・・・)

カリカリに焼けたジャガイモに岩塩をまぶして食べるものとばかり思っていたので、意外な食材の組み合わせに衝撃が大きい。だが元々彼女が用意してくれたものだ文句は言えない。


オレンジの果汁が注がれたフライパンを見つめ消沈しているオレに彼女が指示する。

「振って、振って、焦げるから!」

言われてオレは慌ててフライパンを振りだした。

指示を出した彼女も一緒にフライパンを揺するジェスチャーをする。

ゆっさ、ゆっさ、ゆっさ、

その動作に合わせて、胸が揺れた。

(おぉ!)

踊る胸に見とれて、ジャガイモの件は一瞬でどうでもよくなった。我ながら単純な思考回路だ。


オレがフライパンを振り続けている間に、彼女はバックからミントを取り出した。それをお湯の沸いたカップへ茎ごと入れ、残った半分のオレンジも絞って果汁を注ぐ。ギュウギュウとオレンジを押しつぶすものだから、おかげで彼女の手はその汁でベタベタだ。

すると、そのベタベタに果汁の滴る手を彼女は舐めはじめた。

れろん!

手のひらを舐め、そのまま舌は人さし指をなぞっていく。先端まで来ると指を口の奥まで咥えた。

ちゅぱ!

続き、中指も・・・・・・

ちゃぷ!


(えっろ!!)

チェアリーの見せたエロい仕草に、オレはフライパンを振る手を緩めてしまった。

「もっと、振って!もっと!もっと!」

ゆっさ!ゆっさ!ゆっさ!ゆっさ!

彼女の胸がまた揺れる。

「あ、ああ!」

小刻みに、疲れ果てるまでオレは一心不乱に振り続けた。

(ワザとやってるのか!?)

そう思ったところへ、今度は彼女が目をつぶりながら顔を近づけてきたではないか!?すぐそばに、一歩踏み出すだけで届くその距離に。

(もしかして、これは!!)

「ウ~ン」

オレンジの果汁にしっとりと濡れる唇からは悩ましげな声まで漏れている。

その魅惑の果実に吸い付いたらどんな味がするのだろう?甘いのか、酸っぱいのか、それとも・・・・・・ゴクリ!と、自分の喉が鳴ったのがわかる。


(どっ、どうしよう)

フライパンを置こうか、置かずにこのままか、そんな些細な事を気にしているうちに彼女は目を開け、うっとりしたように呟いた。

「トロトロだね」

その呟きが耳の中でトロトロと絡みつく。

うっ!

(オレ今、そんなだらしない顔してるのか?)

ラノベみたく唐突に始まったエロイベントに戸惑った。これもこの世界の神様がオレに与えた試練だろうか?

(勘違いするな!勘違いするな!勘違いするな!)

心の中で呪文のように自分に言い聞かせると、

「ちょっと待ってて。手、洗ってくる」

本当に効果があったのか、唐突に彼女は手を洗いに川へ走って行ってしまった・・・・・・


(エルフ、えっろ!!)

これが世に言う”エロフ”か!?さすが異世界!!こんなイベントが発生するなんて。取り残されたオレは暫く興奮が収まらなかった。

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