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第2章2-11

2-11


・ユウのターン


自己紹介は済んだが、これからどうすれば?オレは歩きながら思案していた。

(パーティーって、組んだら何するんだ?)

協力してモンスターを倒すのだろうことは分かるが、まだオレはそのモンスターすら見たことが無い。実際に戦うといっても漠然としていてイメージできずにいた。

とりあえず外に出ない事には始まらないと思い街の出口に向かったはいいが・・・・・・


「あのさ、」

一旦止まり、後ろから付いてくるチェアリーの方に振り返る。

「どうしたの?」

屈託ない笑顔の彼女は、まさかオレがモンスターを見た事も無いとは思わないだろう。

(チェアリーに質問するわけにもいかないよなぁ)

冒険者にとって当たり前の事を尋ねたら確実に怪しまれる。

まだ怪しまれるだけならいいがオレの素性を尋ねられるとマズイ。今度こそ兵士の元に連れていかれ捕まってしまうかもしれない。厄介事は避けたかった。


しかし、今日の目的だけでも伝えておかないと。そう思い口を開いた。

「これからスライム退治に行こうと思うんだけど、」

最初の標的はスライムだと決めていたが、まだそれしか決めていないため何を喋ればいいのか分からず言葉に詰まってしまう。

(思うんだけど・・・・・・次は!!)

後から言葉が出てこない。


オレは人と話すのは得意じゃないのだ。

言葉に詰まったのはまだ戦ったこともないモンスターの事もあるが、屈託のない笑顔を向けてくる彼女を見ると平常心を保てない為でもある。

「スライム退治なら任せて。私、スライム見つけるの得意なの」

どぎまぎしているうちに、彼女の言葉で救われた。


(はぁー・・・・・・)

自分のトークスキルがポンコツなのは自覚している。普段の雑談程度なら何とかなるが上手く喋ろうとしたとたん、どうにも言葉が出てこない。

その為オレは上手く喋ることは諦めている。

だが、それでは社会に通用しない。そこで「喋れないのなら聞く側に回ろう」と、社会に出てからは聞く方のスキルを磨いてきた。


その自分磨きの一つに参考書を買った事がある。

『これさえマスターすれば異性にモテモテ。聞き上手になれる100の方法』という嘘くささが漂う題名の本だ。

ネットのレヴューでは

「この本のおかげで人生変わりました!」

「聞き上手だね。と褒められました!」

「彼女が出来ました!」

と、サクラだよなと疑ってしまうほど評価が高かった。乗せられた感はあったが、100も方法があるのならオレにも使えるのが一つぐらいあるだろうと思って買ったのだった。


決してモテモテになりたいとかそういう事じゃない。決して!あくまで社会の荒波を乗り越える為に必要だったのだ。

とはいえ、リアル店舗だと「コイツ必死だな」とか店員さんに思われたくなくてネットでポチったが。

この本のおかげかは分からないが聞く姿勢という点では、人並みにスキルが上がった。(気がする)

今、そのスキルを発動する時が来たのだ!


聞き上手というのは相手の話を否定せず、共感できることが第一らしい。

嬉しそうなら一緒に喜んで、悲しいなら一緒に悲しむ。そして、否定やアドバイスは言ってはいけないそうだ。(そう本に書いてあった)

話の中で褒めてあげられそうな点が出てきたら、少し大げさなくらいに褒めてあげるのも重要。相手から自慢話や得意話が出たらチャンスと思わなければいけない。


まさしく今が、その褒めるチャンスだった。

「スライム見つけるの得意なの?それはすごい!頼りにしてるよ」

オレは少し声のトーンを上げて彼女を褒めた。

「スライムくらい・・・・・・」

と彼女は謙遜したが、その表情はなんだか嬉しそうだ。

今、スライムを見つけるのが得意だと言った彼女に対して、オレの方もスライム見つけるの得意なの?と聞き返した。これはオウム返しだが、聞き上手な人というのは適度にオウム返しをする。された方は共感が増すそうだ。

ただ、オウム返しはそのまま返してはいけない。ただ返していると、相手はバカにされているように感じてしまう。そこで必要なのは一言添えること。オレは今「すごいね」と一言付け加えながら褒めた。


彼女が話を続ける。

「昨日もスライム倒してきたんだよ」

「へぇ、そうなんだ。」

オレはうなづきながら彼女の目をしっかり見て、話に相づちをうった。

そして彼女の横へ並び、

「その話、詳しく聞きたいな。歩きながら教えてよ」

更に、話の続きを促した。

聞き上手は相づち上手でもある。相づちはただ返事をすればいいという訳ではない。聞いているという姿勢が大事なんだそうだ。(そう本が教えてくれた)

ポイントは相手の目を見ること。だが見つめ過ぎは良くない、変に思われてしまうから時々で良い。そしてもう1つ大事なのがうなずいてあげること。


向き合って顔が見える方がいいのだが、今は街の外を目指しているのだから横に並ぶしかしょうがない。

「そう?別にいいけど、」

横に並んだ彼女は、オレの思惑通り昨日の事を語り出した。

後は彼女が話している間、時々相づちを打つだけで良い。

返事は「そうなんだ」だけを繰り返すと単調になるため5パターンぐらい用意する。

「ああ」、「なるほど」、「うん」、「いいね」、「へぇ」、などをローテーションさせていく。


「でね、それから・・・・・・」

しばらく話していると、彼女は言葉に詰まった。

こういう時、気まずいからといってすぐに話しかけてはいけないそうだ。相手が考えをまとめられるまで待ってあげると、また話し始める。(本に書いてあったのだからそうなのだろう)

(このわずかな沈黙が苦手なんだよなぁ)

オレは隣で歩く彼女の方を見た、彼女もこちらを見ている。その視線に微笑んでから待ってあげると、また喋りはじめた。

「私は3匹倒したのに、他の人はね全然倒せなかったのよ」

「3匹も倒したなんて、すごいよ」

聞き上手とは、話し上手になるより簡単だ。テクニックさえ知っていれば実践するだけで良い。トークスキルのようにこれまでの人生で培ってきた知識など必要ない。要は技術なのだ。

オレのように口下手で二言三言しか出てこないようなポンコツでも、相づち程度の言葉だけなら何とかなる。要所さえ抑えておけば、後は相手が話してくれるから自分で話す必要は無く楽だ。


彼女の話からモンスターについて少し分かってきた事がある。

・モンスターは人を襲う為だけに存在している事。

・休む必要はなく、昼夜問わず動き回っている事。

・モンスターの周囲には間合いがあり、その中に入ると襲ってくる事。

・倒すと粉になって消え、魔宝石と呼ばれる核が残る事。

(プログラミングされたゲームキャラみたいだな)

粉々になって消えるところなんて完全に生き物ではない。誰かによって作られたもののように感じる。

また、パーティーというのも何となくイメージ出来てきた。

色々役割はあるようだが、簡単に言うとモンスターを倒しやすい安全なところへおびき出して、各個撃破すればいいようだ。


昨日の出来事をあらかた話し終えた彼女は満足気な表情だった。

ここで最後にお礼をいう事を忘れてはいけない。一言いうだけで、役に立てた、またこの人と話したい、と思わせるために必要なのだ。(完全に本の受け売りだけど)

「ありがとう。君とまた会えて話をする事が出来て良かったよ」

オレは彼女にお礼を言った。

「うん、」

変なつもりは無かったのだが、彼女は照れて下を向いてしまった。

(ちょっと最後のは臭かったかぁ)

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