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第2章2-3

2-3


オレは自分の服装を見直してみた。

「似合ってますよ」

肩から掛けている布をヒラヒラさせているオレに、ライリーさんはそう言ってくれたが・・・・・・


足には革のブーツ、そこから目線を上げるとサイズの合っていない大きめのズボン。上着は初期装備の布の服だが丈が長くスカートの様だし、後はなんだかよく分からないまま羽織らされた大きめの布。そして頭には中折帽。

全体的にぶかぶかで余っている布がヒラヒラとして落ち着かない。普段着慣れた身丈にピッタリと合ったスーツ姿とは大違いだ。


(ビジュアル系かよ!)

思わず自分の服装に、自分でツッコミを入れてしまった。

オレの中のV系ファッションは腰回りがやたらとヒラヒラしていてブーツ姿の印象。まさに今オレが着せられている格好だ。


(似合ってるのか?)

自分では着たことのない取り合わせに、やっぱりコスプレ感が出ているようで気恥ずかしい。

(スカート姿で出歩いているよりはマシだけど)

布の服1枚では古代ローマ人の様な服装だったが、今度は時代をひとっ跳びして一応現代人っぽくはある。


似合っているのかは置いといて、タダでくれるというのだから、文句を言っては罰が当たる。

それに、外を出歩いていれば皆同じような格好なのだ。それほど気にすることないのかもしれない。

(冒険者なんてまんまコスプレだもんな)


自分を納得させた所でオレは改めて倉庫の中を見渡した。

(あとは武器が欲しいんだが)

昨日は武器屋を探して街中を歩き通したが見つからなかったのだ。


歩き通したとは言っても、まだ街の隅々まで巡ったわけではない。この街はとても広かった。いや、オレは勘違いしていたのだ。街を半日歩き回ったくらいで全て見て回れるわけがない。

何となくゲームの世界を探索しているつもりでいたものだから、武器屋があって、防具屋があって、宿屋があって、教会があると、全て近場で歩いて回れるような気分でいたのだ。


門での職質の件もあった為、なるべく人と関わらないようにしたかったオレは、誰かに武器屋の場所を尋ねることもできず、そうこうするうちに日が暮れはじめた。異世界の初日は野宿でもするしかないのかと困っていた時に声をかけてくれたのがライリーさんだった。


見回した限りではこの倉庫に武器らしいものは置いてない。どこか別の所に保管されているのかもしれないと、ライリーさんに武器が無いか尋ねた。

「これから街の外へ出ようと考えているのですが・・・・・・」

オレが喋り終わる前に、彼女は「うん」とうなずくと、

「では、防具が必要ですね」

と言って、木箱の中をあさり始めた。

(えっと、武器を・・・・・・)


彼女はオレにかまわず木箱から防具を見繕って次々に渡してくる。

膝あてが1つ。革の手袋右手だけ。金属製の籠手を1つ。更に、革製の胸当てと、同じく革製の前掛け?というか、股間を守るプロテクター?の様なものを渡された。

だが、どれも片方だけだったリ1個しかなくてしてちぐはぐだ。


(寄進された使い古しだからしょうがないのかもしれないけど、もう少しカチッと一式揃えたものは無いのかな?)

オレの表情を読んだのか彼女は、

「付けてないよりマシですから」

そう言い切った。

(確かに)

オレは渋々、渡された防具を装備してみた。


(うん、防御力は上がった・・・・・・気がする)

胸と股間が守られているだけでも安心感はある。

格好は整ってきたが、やっぱり武器だ。それがないとまた門番に止められてしまうかもしれない。


(最初は剣かな?)

街中で見かけた冒険者達はいずれも腰に剣を携えていた。冒険者の基本だろう。

(けど、ダガーというのも捨てがたい。)

剣は振り回すには重そうだ。取り回しの利くダガーの方が扱いやすいのではないか?それに素早い動きで相手を翻弄して戦うスタイルになんとなく憧れがある。

(いや、接近戦というのは危なくないか?となると、リーチの長い槍の方が・・・・・・)

しかし、贅沢は言っていられない、今はあるもので納得するしかないのだから。


オレは改めてライリーさんに尋ねた。

「武器は無いですか?どんなものでも構わないので」

この際、剣でも槍でもなんでもいい。要は格好さえ整えて門を出られればそれでいいのだ。最初から無理をするつもりなどさらさら無いのだから。スライム相手に渡り合えればそれで十分だ。

(きっとスライムぐらい簡単に倒せるのだろうし、なんならヒノキの棒でも)


贅沢など言っているつもりは無かったのだが、彼女からはあっさりとした返答が帰ってきた。

「武器は無いですね」

(あー・・・・・・これ詰むパターンかぁ)

お金も無く、武器もない、外にモンスターを狩りに行くこともできない。

オレの華々しい冒険者デビューは露と消えたのだ。


こうなったらお金を稼ぐ別の方法を考えなければいけない。

(アルバイトかぁ、学生の頃以来だな)

アルバイトといったらコンビニ店員がまず頭に浮かんだ。『いらっしゃいませー、異世界コンビニへようこそ!』ラノベの展開にありそうなネタだ。

(そもそも、この街にコンビニなんて無さそうだし)


簡単に雇ってくれそうな仕事で次に思いついたのが配送業だった。

(それだと馬車に乗れないといけないだろうし、それに荷物を配達するのならこの街に詳しくないといけないだろうな)

地理に詳しくないと言ったら最初の面接で落とされそうだ。


(だったら、飲食店で働くとか?)

喫茶店でのアルバイト経験ならオレにもある。しかも飲食店なら、お昼にまかないを出してもらえる事があるからお金の無いオレには好都合だ。


(ハッ!!)


飲食店のアルバイトを探せばいいかと考え始めていたところで、オレは我に返った。

(待て!!せっかく異世界に来たのに何をしようとしているんだ!!)

いかにも日常的な思考を始めていたことに、自分でもビックリした。

(これじゃあ日本の生活と大して変わらない!オレはもっと心躍る冒険世界を求めているんだ!!)


オレの心の叫びが届いたのか、ライリーさんから意外な言葉が飛び出した。

「ギルドへ登録すれば武器は貸してくれますよ」

「へ?借りられるんですか!?」

「ええ、借りるのが一般的ですね。買うとなると結構な値段がしますから」

「へぇ~・・・・・・」

意外だった、武器を借りるという発想が自分の中にはまったく無かったのだから。


オレの冒険譚はまだ終わりではなさそうだ。

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