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第2章2-2

2-2


(これはもしかして異世界あるある ”ハーレムイベント” か!!)

オレが読んできたラノベでは、転生した主人公は十中八九 美少女とうらやましい展開になるのがお約束だった。例えば、着がえの場面に偶然出くわしたり、唐突にお風呂イベントが始まったり、出会ったその日にひと目惚れなど。


更には一人では飽き足らず、最初に運命的な出会いを果たしたはずのメインヒロインは置いてけぼりにして、主人公を好いてくれる女性が雪だるま式に増えていくハーレムイベントに発展するのが王道だ。


異世界には主人公以外に男がいないのか!と、ツッコミ入れながらも、オレ自身モテモテになる話に憧れてはいたが・・・・・・

(オレにも・・・・・・マジか)

急いで残ったサンドイッチを平らげて、そそくさと食堂を出た。


(いや、いや、いや、いや、いや!)

そんなおいしい話あるわけない期待外れに終わるのではないかと疑いの気持ちを持ちながらも、教会裏へ向うその足は欲望が先行してドンドン早足になっていく。


スタタタタタタターーッ!


教会の裏へ着くと、ライリーさんがオレを見つけにっこりと微笑んだ。

「さあ、こちらへ」

彼女は教会裏に建っていた小屋へ入るようオレを促した。

(マジで!?)

期待が一気に膨らんだ。何をするのか聞きたかったが、そんな無粋な事聞けるわけない。


「さあ」

扉を開け待っていてくれる彼女に誘われるまま、オレは小屋の中へとゆっくり足を進めた。

中は小さな窓から射し込む光のみで薄暗く、両脇の壁に棚が置かれ木箱がいくつも並んでいる。物置として使われているらしい。


小屋の中へ進むオレの後ろからライリーさんも付いてくるのを背中で感じる。

キュー・・・・・・バタン!

扉が音を立てて閉まった。その音が外の空間と小屋の中とを遮断した。妙に静かだ。オレの早く脈打つ鼓動が聞こえてきそうなくらいに。

今、この狭い空間には2人だけだ。


「んー・・・・・・」

彼女のなんだか悩ましげな声がオレの背中越しに聞こえる。

まとわりつくようなその声に背筋がゾクゾクする。

「昨日、欲しいって言ってたわよね?」

ドキッ!!

(なっ!何の事だろう!?)

心当たりがない。オレは昨日、彼女の前でなにか口走ってしまったのか?


ゆっくり振り返り、ライリーさんを見る。

彼女は紺色のローブに白いベールというシスターの正装に身を包んでいた。それは上から下まで肌の露出を極力控えた服装だったが、彼女のグラマラスな体はローブの下からでもその存在を主張していた。いや、かえって隠されているからこそ余計にそそる・・・・・・


更に、薄暗い中に射し込む光が彼女の女性らしい体の曲線に陰影をつけて際立たせている。

「んー・・・・・・」

オレの視線を気にしたのだろうか?彼女は吐息を漏らしながら斜め下にうつむいてしまった。

うつむいたことでベールからちらりと覗いたうなじが妙に白くて欲情する。

(ゴクリ、)


彼女はオレの反応を楽しむかのように微笑むと、ローブの裾を摘まみたくし上げた。隠されていた肌が露わになる。

(おぅ!!)

ほんの少し足元がめくれ上がって見えた!ただそれだけの事に興奮してしまう。


そして、裾を持ったまま彼女はゆっくりとしゃがみ込んだ。

その顔はオレの腰の真ん前だ。

(これは!!)

オレの期待は一気に膨れ上がった!


しかし、次の瞬間オレの膨らみ上がった期待は一気にしぼむ事となった。

「ありましたよ。ブーツ」

そう言って彼女はオレの足元に置かれていた木箱を引き出したのだ。

「は?」

見ると木箱の中にはブーツが何足か収められていた。


ライリーさんがにっこり笑って言う。

「昨日、サンダルで歩きすぎて擦れて痛いから靴が欲しいと言っていたのを思い出したんです。良かったらどうぞ」


(うわーーーーーーっ!! ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!)

オレは心の中で絶叫した。

(どうか神様、許してください!名前も知らないけど、この世界の神様ゴメンナサイ!こんな女神のような人にオレは欲情してました!申し訳ない!聖職者を邪な目で見るなんて!オレはクズです!クズ野郎です!)


「どうされました?」

彼女に顔向けできず顔を手で覆い上を向いていたオレに、ライリーさんは不思議そうに声をかける。

「あなたの優しさに心が震えているんです・・・・・・」

「フフッ、私に感謝する必要はありませんよ。この倉庫にある物は信徒たちによって寄進されたものなのです。他にも必要なものがあればどうぞ自由にお持ちください」


「へ?いいんですか?」

倉庫の中をよくよく見渡すと、「フク」「カバン」「ヌノ」「ボウシ」などラベルが張られた木箱が綺麗に整頓されて並べられていた。

「どうぞ遠慮なく。ほとんどは使い古しですが、誰かの役に立てばと寄進されたものなのです。使われることで巡り巡ってその信徒の徳となるでしょう」


これはありがたい。食事にも事欠く状況だったから、日用品など後回しだと思っていたが、貰えるのならありがたく貰ってしまおう。

オレはその言葉に甘えて使えるものが無いか探し始めた。

(ああ、神様ありがとうございます)

さっきは神様にあやまっていたのに、今は神様に感謝している。まったく自分でも現金なヤツだと思うが、お金が無いのだからしょうがない。


(おっ!これなんか良さそうだ)

まず探したのがズボンだ。穿いてみると少し大きめだったが(きっとこちらの世界の人のサイズなのだろう)ベルトで留めればなんとかなりそうだった。

そして次はカバン。なるべく大きな物を選びそこへ使えそうな日用品を探しながら詰めていった。


品定めしながらふと思う。

(もしかして目覚めた後に神様が出てきてくれないのは、どこかでオレの行いを見ているのか?)

ここの神様がどんなものなのかは知らないが、見られているならうかつな行動はとれない!さっきは天罰が下る寸前だったのかも!?

神様も転生者の適性を品定めしているのだろうか?


1つずつ木箱の中身を確認しているオレにライリーさんが大きな布を広げ見せてくれた。

「これはどうですか?」

(どうと言われても・・・・・・その布で一から服を作れと?)

「一枚あれば暖かいし、重宝しますよ」

返答に困っていると、彼女は側に来てその布の端を右手で掴んで更に左腕をオレの首へ回してきた。


「えっ!ちょっ、(胸が当たってる!)」

彼女はどうやらその布をオレの肩に掛けてくれようとしているのだが、首を抱き込むように腕を回してきた為ライリーさんの豊満な胸がオレの胸に押し付けられた。

「自分で出来ますからっ」

「動かないで」

体を寄せる彼女の首筋から、髪から、体から放たれる得も言われぬ女性の芳香が鼻をくすぐる。

動かないでと言われても既にオレの体はガッチガチに硬直し動けるはずも無かった。


彼女は後ろにまわした手で布を掴もうとしているようだ。暗がりの為よく見えないのか掴むことが出来ずもたついている。

「あ、」

押し当てられた胸の感触と、耳元で微かに漏れた言葉に背筋がゾクゾクする。

(勘違いするな!勘違いするな!勘違いするな!勘違いするな!)

神はなんという試練をお与えになるのか!


(けど、これは・・・・・・わざとじゃないのか?)

こんなシュチュエーションが偶然、起こるだろうか?邪な考えがまたしても浮かぶ。

(まさにラノベ展開!)

だが、こんな展開が起こるという事はやはりどこかで神様が見ていてオレの事を試しているのかもしれない。

(勘違いするな!勘違いするな!勘違いするな! ああ神よ!あぁ!アァ!!)

オレは心の中で悶絶しながら、誘惑と必死に戦った。初の戦闘(?)でこんな精神攻撃が待っているなんて!

(もしかしてこのゲーム世界、ノーマルスタートじゃなくハードモードスタートなんじゃないのか?)

下らない事を考えて精神攻撃をやり過ごすオレ。


「これで外で寝ていても寒くはないでしょう」

カチコチに固まっていたオレの体にゆったりと布を巻き終えると、彼女は満足げな表情でそう言った。

(外で・・・・・・え?もしかして今晩は泊めてもらえない!?)

今晩も泊めてくれるものだとオレは勝手に思っていたのだが・・・・・・どうやらこれはゲーム序盤で言えば王様が勇者に装備を与える的な?旅立ちの準備だったらしい。


更に彼女は催促するように手を差し出してきた。

「さあ」

(げっ!お金を取るのか!?そりゃそうだよな。一晩泊めてもらって飯まで食べさせてもらって、そのうえ服まで・・・・・・タダって訳にはいかないよな)


しかし、オレの所持金と言ったら、昨日恵んでもらったなけなしの小銭しかない。

(こういうお金っていくら出せばいいんだ?気持ちだっていうけど)

オレは服のポケットに手を突っ込んだ。コインを指で確認する。

(いくら出す?昼飯代くらいは残して・・・・・・うぅ)

自分の為に少し残そうかという、その俗世的な考えが浮かんだことが恥ずかしくなりオレは全てのコインを取り出し彼女の手のひらに乗せた。

「すいません。今はこれだけしか持っていませんが、いずれ必ず足りない分は返しに来ます」


(見たか!神様!オレは誘惑に勝ったぞ!!)

空になった手のひらを握り、こぶしを突き上げて叫びたい気分だ。たが、そこはグッとこらえた。

彼女は手のひらに乗せられたコインを見て、余に少ない額だった為かキョトンとしたが

「そうですか」

そう言うと微笑み、受け取った。


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