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第1章1-17

1-17


朝の礼拝も済み私はココと共に冒険者達を教会の応接室へと案内した。

彼らは部屋に入ると私の前で膝をつき祈りの姿勢をとった。リーダーらしき先ほどの大柄な男が代表して私の前に手を差し出す。

「堅い挨拶は抜きにしましょう」

手を差し出されればシスターとして取らないわけにはいかない。私は一応、儀礼的に祈りを受けた。


祈りを終えた彼らは立ち上がり、改めてリーダーが口を開いた。

「冒険者達の間でも聞こえの高いライリー殿にお会いできるとは光栄です。」

彼らの間ではいったいどんな噂話をされているのか分かったものではない。遠征などでモンスターを相手にし、およそ聖職者らしからぬ場所で過ごしているせいだろうか?武勇伝ばかりが独り歩きしている気がする。


リーダーの後ろに控えていた男が口を出す。

「まさか1本矢のライリーがこんな美しい女性だとは思いませんでした」

男はお世辞なのか、それとも堅い空気を嫌ったのか、私の事を美しいなどとおだてて、おべっかを使った。


(ほら、みなさい)

”まさか”と言ってるという事は冒険者達の間では1本矢のライリーといえば、筋肉ムキムキの屈強な戦士のイメージに違いないのだ。


すると私の隣でお世辞を聞いたココがすぐさま言い返した。

「渡しませんよ!」

彼女は横から私に抱きついて真剣な顔をした。だがその真剣な顔がかえって滑稽に見え笑いを誘う。お世辞を言った男も思わず苦笑いしている。

「フフッ」

狙っているのか本気なのか分からないが、ココの様な明け透けな性格の子が一人いると場が和んでやりやすい。


空気が和んだところでお互い自己紹介をした。

大柄の男はこのパーティーのリーダー「エリアス」。ゴツイ体つきにもかかわらず、言葉遣いやしぐさなどは穏やかで誠実な印象を受ける。

私におべっかを使ったのが「フィン」。口は軽そうだが、4人の中のムードメーカーといった印象だ。

フィンの側でお目付け役のように付き添っている女性が「メリーナ」。先ほどは私に対しておべっかを使ったフィンを鋭い眼光で睨み返していた。

一番後ろに控えていた小柄な男性が「パウル」。彼は常に眉間にしわを寄せ、こちらを観察するような視線を送り続けている。

彼らはコッレの街を活動の中心にして、モンスター退治を主な仕事にしている冒険者との事だった。


自己紹介が終わったところで私は本題を切り出す前に、冒険者達の興味を引くため質問した。

「あなた達、お金儲けしたい?」

冒険者というのは良くも悪くもお金に正直だ。彼らに良い働きをさせるには、この仕事がうまい話であることを印象付けなくてはいけない。


私の質問に彼らは顔を見合わせ、エリアスが遠慮がちに言った。

「それは、もちろん」

フィンが付け足す。

「ここ最近なぜかモンスターの数が激減してるんだ。知ってるだろ?街の奴らには平和になってありがたい事かもしれないが、俺たち冒険者にとっては死活問題さ」

フィンは他の3人を見回し同意を求めた。皆軽くうなづく。


モンスターの数が激減したのはつい最近だ。それは勇者様降臨の兆候が現れた時期と一致する。

(彼らは知らないか)

この現象は勇者様が降臨したことが原因なのだ。まあ、勇者降臨は教会によって秘密にされているため彼らが知らなくてもしょうがないが。


フィンが話を続ける。

「ここんとこ狩った獲物といえばスライムぐらいだ。以前ならザコ中のザコだから相手にもしなかったが、今はそのスライムだって狩ることが出来たら涙が出るほどありがたいくらいさ」

彼は手振りを付けて話した。


「知り合いの冒険者もつい先日、人の立ち入らない遠方に狩りに出かけたところだ」

後ろに控えていたパウルが身動きせずこちらに視線だけ向け話に入って来た。

「しかし、遠方に行くのにも食料の準備や野営の設備を揃えたり金がかかる。それに見合うだけのモンスターを狩ることが出来ればいいが、収穫無しでは行って帰ってくるだけで破産だ」


彼らの話は分かった。お金に困っているのならこちらの要求にもすんなり従ってくれるだろう。そう踏んで私は本題を切り出した。

「そう、冒険者にとっては大変ね。でも今回の依頼は働きによっては大きな収入が得られると思うわ。ただ、これからあなた達に話す仕事の内容はくれぐれも内密に・・・・・・」


「待ってくれ」

パウルが私の話を遮った。皆が彼に注目する。

「内密にと言うが、何か隠さないといけないような危ない仕事なのか?」

「隠すというより言わない方がいいという意味よ」

「なぜ俺達冒険者を雇う?人手なら教会私設の兵がいるだろう」

(用心深い人ね)


パウルはリーダーに向き直った。

「エリアス、俺はこの仕事受けるべきじゃないと思う」

「しかし、話だけでも聞いてから、」

「話を聞いた後では引き返せなくなるぞ」

パウルは慎重な男らしい。どちらかといえばエリアスよりリーダー向きな印象を受ける。


不審がるパウルに私は落ち着いた口調でさとした。

「私が内密でお願いしたいのは、街の人々にいらぬ混乱を与えないためです。確かに危険は伴うかもしれませんが、この仕事は教会からの正式な要請です。やましい事などありませんよ」


顔を見合わせる彼らに、更に付け加える。

「しかし、あなた達が引き受けたくないというのなら構いません」

おいしい話だと印象付けてからあっさり手を引くと見せかける駆け引き。これにパウルが更に眉間にしわを寄せ私に問う。

「今の言葉、神に誓えるか」

「誓いましょう」


パウルはエリアスに軽くうなずいた。それを受けエリアスが私に尋ねる。

「いったい私たちに何をさせようというのです?」

私は少し間をおいてから勿体つけるように言った。

「ドラゴン退治よ」

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