世界・頂・力祭、予選(9)
「明日はいよいよ本選だ。選手のみんなはしっかり休んでくれよな?」
ヨセフスは軽い口調でいいながら脱落者名簿を調べる。
運営と司会を兼用するマイクマンは拡声用魔道具のスイッチを切り、本選に向けての報告書を作成する。
「この選手も…脱落。この選手も…脱落。」
名簿に引かれる黒い線。山の稜線に日は落ち、コロッセウスに明かりが灯りはじめるころになると名簿の名前の半分近くが黒く塗られている様になった。
「…嘘…だろ…」
あらかた終わってヨセフスは手に持った紙を握ったままプルプルと震えていた。
「…ほ、本当に居なかったのか?」
独り言のように呟いた言葉は影から答えが返帰ってきた。
「確かに居なかった。居なかったから脱落者名簿に記されていなかった」
「だとしたら…」
ヨセフスは手帳に書き込んだ後、その手帳を閉じた。すると影が頷くような動作をする 。
ヨセフスは室内へと戻っていきながら影と共に呟く。
「「本選は荒れる」」
ヨセフスの去った司会兼運営席の机に置かれた手帳を風がそっと撫でる。手帳の表紙には金文字で「第635回 世界頂力祭 本選出場者 詳細」。手帳はパラパラと風でめくれ、最後の索引ページまで捲る。
索引には帝竜剣を除いたシード枠、予選突破者、合計 13人の名前があった。
再び風が逆方向から撫で、元のように手帳の表紙を閉じる。
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