世界・頂・力祭、予選(7)
「さぁ今日も選手達がしのぎを削っているわけだが、取り分け注目の選手は昨日開始わずかにして自分以外の選手を戦闘不能にした無名の魔術師、『名無しの姉』…その妹が第三ブロックに居るわけだが一体どんな戦いを見せてくれるのかぁ?!」
ヨセフスは名簿に載った気になった名前を告げつつ、試合運びを見て実況をする。
一方、名前の無い魔術師の妹の剣士は剣の鞘と鍔を紐でしっかり縛って、剣を抜くことなく戦っていた。
『動きは常に最小限…』
右から迫る突きを後に下がることで回避し、突っ込んできた男のみぞおちに柄を叩き込んで吹き飛ばす。
『常に視野を広く持ち…』
首を飛ばそうと前から剣を振ってきた男の剣をオーバーヘッドで蹴り上げて弾く。
『最小の力で最大の戦果を得る…』
左からハンマーを振り下ろしてきた身の丈3mの男へは先程弾いた剣が手に刺さり、軌道が逸れる。
『真後ろへの警戒は怠ってはならず…』
オーバーヘッドで真後ろを確認すると細剣で切りつけてくる女性剣士と目があった。無名の剣士はムーンサルトを女性剣士に叩き込むとそのままさらに跳躍する。
『囲まれたら回避と共に無理なく離脱…』
叫びをあげながら盾を構えて突撃してくる男には右から戦いながら下がって来た女性を引っ張り、入れ替わるように立ち位置を変えて、先程女性が戦っていた相手を鞘付きの剣で右払いで殴って堀に落とす。
『時に非情になりつつ…』
女選手は体勢を崩された所に真横から迫る盾を構えて突撃してくる男に対処できずに堀に落ちる。
『漁夫の利を狙う。』
剣士は舞台のギリギリで踏みとどまった盾持ちの選手を蹴り落とす。
剣士は尻尾と耳をぺたんと下げ、決して小さくないため息を吐いて思う。
『このブロック…ハズレばかり…』
その後、順調に脱落者を出して本選出場権を獲得したのは言うまでもない。
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