世界・頂・力祭、予選(5)
「くっこれじゃあ近付けねぇ」
男達は武器を構えながら目の前の暴風を見ていった。
「来ねぇのかならこっちからいくぞぉぉぉぉおお」
暴風の奥から野太い声が響くと暴風は少しずつ強くなる。
「どうにかしてあの攻撃を掻い潜んねぇと…」
男の一人は盾を構え、前に出る。…直後男の姿が消えた。遅れて爆音が会場に響き渡る。対峙している男達は音の方を見た。
音の発生源には先ほど前に進んだ男が壁に埋まったいた。
構えた盾は無惨に凹み、壁に埋まった様はいかに暴風を産み出す武器の威力のすさまじさを物語っていた。
「ならわしが行こう…ここで地団駄踏んでたら優勝なんざ夢のまた夢…」
成人男性の腰くらいの身長しかない背の低い老人が前に出る。
「お、おいじじい止めとけあれまともに受けたら死ぬぞ」
「死ぬか死なんかはわしの勝手じゃ!」
老人は身の丈ほどの楯を構えて前に出る。
老人の楯と暴風を産み出す武器がぶつかり周囲に衝撃波が伝わる。
「みんな俺の攻撃を掻い潜って攻撃してくるんだが…こいつを止めたのはじじい…てめえが初めてだ。名前は?」
「ジゴーシュじゃ…かく言うお主はガンじゃな?双鎚使いの…」
「あぁ…ジゴーシュ、あんた俺を知っているのか?」
「名前くらいは…な」
ガンは武器を構え、ジゴーシュは盾を構える。
「本気でやると死人が出るがあんた相手なら少しくらいなら本気が出せそうだな?」
「少しと言わず全力で来んかい若造が」
ジゴーシュは煽るとガンはニヤリと笑う。
「全力出したら大会中止になっちまうからなぁ!」
ガンは双鎚を回し、勢いのついたところで盾を構えているジゴーシュに叩き付ける。
ジゴーシュは真正面から受けるのではなく衝撃を横に流すように盾を傾ける。そうして出来たガンの背中に愛用のメイスを叩き込む。
「やるじゃねえか、ジゴーシュ。初めて戦ったにしてはやけに戦い慣れた動きをするじゃねぇか」
ガンはお返しとばかりに長い柄をを用いてジゴーシュを振って払う。ジゴーシュは楯を構えて距離を詰める。
「ちぃ…戦いづらいな…」
間合いの内側に入られ苦戦をしいられるガン。
「ったくちったぁ離れろってんだよ!」
ガンは苛立ちながらも横に双鎚を振る。ガンは低い背をさらに屈め、双鎚をやり過ごし、前へと進む。直後側頭部に猛烈な衝撃を受けジゴーシュはよろけた。
『横振りは避けたはずじゃ…なのになぜ…』
ジゴーシュは打撃を加えてきた方を見ると腰の後ろを通して先ほど避けた鎚の反対側の鎚に血が付着していた。
「双鎚術 満月双衝撃って言うんだ」
『なるほど…初撃は囮…わしが屈んだ際に盾で視界が一瞬隠れたところを狙って反対側の鎚で…わしが屈まず飛べば飛んだところに2撃目が飛んできて踏ん張りの効かない空中を滑る…2撃目警戒して下がれば奴の思う壺…正解は初撃を受け止めることじゃったか…』
揺れる脳でそこまで考え至るとジゴーシュはパタリと倒れた。
「ガンの一撃が決まったぁぁああ!」
ヨセフスが拡声魔道具を握りしめながら叫ぶ。
最初の有象無象の数を減らす振り回し方などから人目に着きやすかったのだから当然である。
ガンは未だに残る有象無象に向けて犬歯を剥き出しにしていった。
「次はどいつが俺の相手をしてくれるんだ?」
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