火蜥蜴って一体・・・
「火蜥蜴」と書いてサラマンダーと読む。
その心は…
特に何もない。
早朝…
焚き火は大分弱まり仄かに火の舌を出していた。
うとうとしていた剣士は夜明けが近いことを悟る。
「いけない…姉さんの殺傷兵器を廃棄しないと…」
剣士は鍋の取っ手をもちあげ、首をかしげた。
「…軽い?」
鍋を見ると鍋の中の地獄絵図は無く、有るのは昨夜ついてきたサラマンダーが体を丸めて眠っているだけだった。
「殺傷兵器を完食…だと?」
一般的にはサラマンダーは火を喰らう生き物である。それなのに殺傷兵器足る魔術師の料理を平らげたのだ。
「…がふぃ…」
サラマンダーは小さいゲップらしいものをすると口から小さな火が漏れる。しかし火は鍋の側面を一瞬で赤熱させ、熔解させた。
「火力がサラマンダーのそれじゃない…」
あまりの火力に剣士は驚きを隠せなかった。
「お〜スマン…夜通しで火の番させちまったか…」
「ガス…昨日この蜥蜴、なんだと見た?」
「…どうしたんだ?いきなり…」
「この蜥蜴、姉さんの料理を完食し、ゲップで漏らした火で鍋を溶かしたの」
剣士が状況を説明するとガスは決まり悪そうに言った。
「あぁ…俺の見立てだと赤竜の幼性だな」
「レッド…ドラゴン…」
剣士は思わず驚愕するのであった。それもそのはずレッドドラゴンは金竜、銀竜の次に強いとされるドラゴン。その幼性となると親が探しているはずである。
「だがこんなところにドラゴンがいると言うのは不思議だ。目撃情報がないはずがない。近くても国二つ跨いだ先の山だな…」
ガスは木箱の上に地図を広げ、目撃情報のあった場所に×印をつけていく。
「もし隣接しているレギレンス皇国がこれで滅びたら大変なことになる…」
「どうなるの?」
剣士が尋ねるとガスはレギンス皇国の右隣の領土を指して言った。
「ノワデリュシナ大国との軍事的バランスが崩れ…」
次にレギンス皇国周辺を指で丸くなぞり、言った。
「戦力を持たないルメニア協商連合、リュグナ教国があっという間に火の海になる」
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