魔法のような料理
「意外と早かったな?(肉が)生なんじゃないだろうな?」
「失礼な!魔術炎は内部に熱を浸透させる術に長けてるんです!(料理の)内部まで火が入ってるに決まってるじゃないですか」
ガスが焚き火に向かって不安そうに言うと魔術師は胸を張っていった。
「よいしょっと!」
金属の物体が地面におかれた音を聴いて3人は振り返る。
魔術師の前におかれたそれは金属の筒状の物体で大きさは魔術師の腰くらいの高さまであった。
「鍋…だよな?」
「姉さん…私は『焼いて』と言ったんだけど鍋を使うんだと煮込みになるんだけど」
「いい食材だったから張り切っちゃった☆」
魔術師は妹分である剣士にウィンクする。
「私、このスープとパン、後このお肉で十分だから明朝に処分るよ」
剣士は前を向いて自分の皿の料理を食べ始める。
「鍋なんてどこにあったんだ?」
「手持ちの金属を《創造》で形を整えたんですよ」
魔術師が鍋の作り方を説明すると蓋が勝手に少しずれ、中からしわがれた呻き声と真っ白な痩せ細った腕が顔を覗かせる。
『あ゛あ゛あ゛…』
「ハイハイさっさと溶けやがれ!です」
魔術師は腕を鍋の中に押し込んでかき混ぜる。
「…今、手が…」
「さっき、呻き声が…」
「気のせいですよ。冷めないうちにどうぞ」
ガスとフォスは鍋の中を覗く。鍋の中は濃い紫と黒がマーブル状に渦巻き、気泡がマグマのようにポコンポコンと浮いては弾けている。
「これ…なんて殺傷兵器?」
「酷い言いようですね?これ、妹が気絶するほど美味しいんですよ?食わず嫌いは良くないので1口食べてください「ちょ、ま…心の準備が?!」「わ、わたしもなの?!」」
有無を言わさず魔術師はスプーンで中身を掬い、2人にくわえさせた。
直後顔を青紫色に変色させ、倒れた。
「うん♪今日も気絶するほど美味しかったんだね?わたしも味見…パタン」
魔術師も鍋の中身を掬い、くわえるとそのまま倒れた。
「やれやれ…」
剣士は呆れながらガスとフォスを馬車にのせて布団をかけてやる。
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剣士が火の番をしていると森の奥から巨大な鰐が現れた。
「大鰐か…」
大鰐はレベルとステータスはそんなに高くないが体力だけはやたらと高く、体力だけなら裕にレベル100に匹敵する。
大鰐は巨大な顋を開き、駆け寄る。しかし剣士は剣を抜くことなく手元のお玉を煌めかせ真後ろの鍋に入った魔術師特製の料理を掬って大鰐の口内へ掛ける。
着弾後数歩大鰐が歩いた後、白目を剥いて倒れた。
「殺傷兵器とは良い例えだ…」
フォスの言葉を思い出してクスリと剣士は笑った。
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