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主人公は平凡を望んだ

初めまして。楓です!今回はオリジナル小説を書かせて頂きました。


異世界召喚モノってこの世の中に溢れてますよね。ですが、果たして現実に起こればそんな綺麗な物語ができるものでしょうか?


私は、そんな現実の人間性や上手くいかな不条理をこの作品だ表現していきたいと思ってます。


どうぞ、これからよろしくお願いします。



…世界を守ることはいたって簡単に見える。

魔王を倒す。それだけ。


でも、それは漫画やアニメだけの話。実際には、魔王なんていないし、魔王がいたとして倒したところで世界中の民の心が満たされるわけではない。

例えば、魔王を倒したところで税が消えるわけではない。事故が無くなるわけでもないし、誰も死ななくなるわけではない。

至る所に不幸や不満は満ちているわけで、魔王が出たら出たで全ての不幸がそれのせいにされ、誰かが討伐しても、その不幸の理由が元に返されるだけ。


結論を言えば、何をしようが世界に平等の幸せなどはない。


『前置きが長い?それは悪いな。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






少年、レイキ は、青い髪を少し風になびかせて帰路を辿っていた。

冬の風がマフラーの間をすり抜けて寒さが伝わる。

高校生活も、あと少しとなって。もうそろそろ冬休みに入る。


自宅にたどり着き、夕食後は部屋に戻って睡眠をとる。

いつも通りの生活リズムで1日を終えるはずだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おい、兄ちゃん。そんなとこで寝てると風邪引くぜ?」


見知らぬ男の声がして、目を覚ますと、狭い庭のような場所で寝ていた。



「え?なにこれ、おやすみ」

夢を覚ますために再度睡眠をとろうとするレイキ。

「あぁ、ちょいまてまて、勝手に人様の庭で寝るなよ」

慌ててレイキを起こす男。

仕方がなく、何が起きてるか理解するために目を開ける。

「おっさん、その絵に描いたような尖った耳はなんだ?よく出来てんな」

「本物だよ馬鹿野郎!おらぁ、ランドルってんだ。よろしくな」

ランドルと名乗る男は、まるで異世界人のような耳をしていた。

「多分、もう関わらないと思うけどよろしく」

「…兄ちゃん殺されてぇのか、、?」



そんな会話から1時間以上は雑談に費やしただろう。

そして分かったことは、この世界が元のいた世界とは別物で異世界へ召喚された不幸な人が自分ということ。


「まぁ、いいか。」

「…兄ちゃんの言うこと、よくわかんねぇけどよぉ。そんな軽くて良いのか?故郷への帰り方がわかんねぇんだろ?」


そう、異世界に召喚された人は、何かをすれば帰れる。または、結局帰れない。のどちらかであることが定番だろう。


本来、焦るべき状況であるが、レイキには元の世界になんの未来も心残りもないため、どこに行こうが気持ちに変化はないのである。


「俺、ゲームとか全然やらないからわからないけど、こーゆーのってまずは、資金と宿をどうにかするんだよな。」

世界が違えば、硬貨や物価なども異なる為、スタート地点から動くのはなかなか時間がかかる。


「ってなわけで、ランドル。いやランドルさん。俺をしばらく泊めてくれ。あともっと知識が欲しい」

「…まあ、兄ちゃん悪いやつではなさそうだ。泊めてやるよ」




そして、ランドルが本業とする畑仕事を手伝ったあと、夕食を取り、この世界のことを少し学んだ。


今、この世界には悪い風が流れていて。

街は治安が悪く、物価も全体的に高騰している。

その元凶と言われているのが、魔王と呼ばれる者らしい。


「なんで魔王ってのがいると国が悪くなるんだ?」


「魔王と呼ばれる存在は、大地を荒らし、民を虫のように殺すと言われていて、大地が被害にあえば農作物は育たなくなるし、その他の資源にだって影響は出る。民は怯えて攻撃的になる」


「どんな奴なんだ?そこまで出来るってことは異能力って言われるやつだよな」


「…魔王は誰も見たことがないと言われている。」


「…目視不可ってことか?」

「分からん。だが、兄ちゃんの言ってた異能力ってのを俺たちはスペルやらスキルと呼んでるぜ。その魔王ってのは噂によれば現在の国の最高勢力を上回るって話だ。」


透明化した上に現在トップの能力者。まとめれば最強というわけだ。

出来れば出会わないことは勿論、その爪痕や話にすら触れないようにして生きていきたい。


「ランドルさんにもスキルやスペルが?」

「んや、スキルは生まれ持った才能が9割を占めていて、俺には無かった。逆に、スペルは努力次第という話だったが、それにすら素質というのはある。俺はどっちにも愛されなかった」



ランドル曰く、スキルやスペルを能力として保持している者は多くないという。

大きな才能を持つ者たちは最初から血統が優れているものが大半で、幼少期から国の監視下に置かれて育つ。サラブレッドというやつだ。


「国が魔王を討伐してくれればいいのにな」

「討伐なんて出来やしねぇさ。もう何十年も国の聖騎士団が世界を救うほどの功績を残したことはない」


国の第一線で活躍する最強騎士団とは名ばかりの、今は魔王と呼ばれる者の詳細すらも掴んでない。国の恥とも言われているらしい。


「俺にも能力があるのかな。どっちでもいいけど」


もし、この世界で使える能力があるならそれはそれで有効に使うとして、無ければ無いでこのまま、平和に過ごしていくつもりだ。


「ちょうど明日、作物の収穫を済ましたら納品する為に都市へ行くぜ?ついてくるか?その時に能力値なんてのは大体調べられんぜ」

都市部へ行けば、もう少しこの世界のことがわかる気がする。能力を調べるのは、ついででいい。

「連れてってくれ」




そして、レイキとランドルは朝に農作物の収穫を終えて馬車で納品するため、そこまで遠くはない都市へ向かった。


ティマール都市へ到着したレイキは、納品のためランドルと別れてから自由時間が出来た。


まずは散策が基本。その後に種族の特徴をつかむこと。異世界には様々な種族がいる。それも都市となると数も多い。


大通りには洋風な店が多く、字が読めない為に入るのに躊躇う。


レイキは元々、理解力と学習能力は人の中でも良い方だった為に、昨晩ランドルさんが持ってきた言葉を覚えるための練習本をひたすらになぞっていたため、ある程度なら読めるが、まだそれも完璧ではない。少し読めた程度で挑戦や確定付けることが出来ないのだ。


しかし、念のために能力を調べたりしてくれる店の文字はしっかりメモをしてきた為、そこへは辿り着くことが出来た。

…が、しかし…


「並び過ぎじゃないかこれ?」


レイキの想像を遥かに超える程の列がある。その先には能力鑑定の異世界文字。

並んでも良いが、それではランドルとの待ち合わせ時間には間に合わないと判断した為。引き返すことにした。


「能力鑑定できるスキルの持ち主はレアってことか、ま、別に俺にそんな特別なんて期待してないしいいか…あっ!!すいません!」


列を見ながら歩いていたため、不注意にも、男性に にぶつかってしまった。

フードが外れると、少し長髪の赤髪少年が黒い瞳でこちらを見ていた。

「こちらこそ、失礼しました」


そう言うと、フードを深く被り人混みへ消えていく。

レイキは、振り返り再び歩こうとするが、足元に何かが転がっていた。


「…筒?」

筒のような、それはよくわからないが万華鏡のような形をしていて、覗き穴もあった。


レイキは好奇心から、そこから奥を覗いて見た。

その奥には、「青」と異世界語で書いてあるだけ。


「まあ、いっか。もう渡しに行っても見つからないし預かっとこう。」


そして、ランドルと合流した後。何事もなく帰宅した。


「いやぁ、物価がたけぇからウチの作物は高く売れんなぁ!!がっはは」


いつもより甲高く笑うランドルに今日の出来事を話す。

「結局、この筒なんなんだろな」

筒を取り出し、クルクルと回すと、ランドルが顔色を変えた。

「…おい、それ能力の鑑定が出来るレアなもんだぞ!?それを拾ったのかよ!!!?」


「え!?そうなの?!」

「バカ!それは覗いた者の能力がわかる超高級レアアイテムだぞ!!覗いたか??」


「え、あ、ああ。」

興奮気味のランドルに対して一歩引くレイキ。


「俺なんかが、覗いてもよぉ。…やっぱりなんも見えねぇチキショウ…。んで、なんか見えたか?畑作業に役立つのにしてくれよな」

ガハハと笑うランドル。

レイキも苦笑いで。


「青って文字が見えた」



と告げた。

スキルなのかもわからない能力名なのだから、青から繋げて青い絵の具で絵が描けるとかそんなところだろうか?


なんて考えていた。ふと、ランドルの顔を見ると。


「 …おまえ、今…なんていった?…」


空気が変わるのを肌で感じた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここから先、レイキの人生は大きく変わっていく。



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