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リア充になりたい堕天使Kの話  作者: 射月アキラ
第3章
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04

 車両内の人混みは、いわば大量の「他人たち」だ。彼らは互いに干渉し合おうとはしない。自分の手元に意識を向けている人々の中で、たった一組の男女が向き合って小声で言葉を交わしている。

 女は梶宮に背中を向けていた。けれど、男の顔に見覚えがあった。

 過剰に密着していた二人の背中を、梶宮は知っていた。

 神への呪いを取り消し、謝罪し、信仰心を取り戻すどころか、足にキスをしてもいいと思えるだけの力を持った二人組だった。

「あのときは、悪かったって」

「……なにが?」

「だから、ほら……」

 彼らが、ぎこちない表情で、微妙な距離を保ちながら、他人のような会話を交わしている原因は、梶宮にあった。

 そして、切られた縁が今まさに繋ぎなおされようとしているのは、見るからに明らかだった。

 彼らの縁がどれほど強いものなのか、梶宮は知らない。

 偶然が重なった結果の復縁なのか、それとも約束された必然の復縁なのか、判断をつけられるのは全知全能の神くらいなものだ。

 けれども、「知らない」ことは「諦める」理由にはなりえない。

 自分が堕天使で相手が人間だとしても、この恋を諦めると言わなかったのは、他でもない梶宮ではないか。

 そしてなにより、名前も知らない彼女が復縁に乗り気でないのなら。

 諦める理由も、ためらう義理もない。

 もし強い縁を持った二人だったとしても、繋ぎなおすたびに切ってやろう。

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